第57話 真の勇者
前線であったカリブルヌス村は、ほぼ無傷だった。武装した村人とキャンプメンバーの凄まじい猛反撃がモンスターの侵入を一切許さなかったようだ。
さすがS~SSS級武具だ……。
戦闘の素人も多くいたが、単純な動作でもモンスターを圧倒していたようだ。これがレアアイテムの力か……恐るべし、EXダンジョンのドロップ品。
「全域の安全を確認しました!」
あっちこっち駆けまわっていたらしいフェルスが状況を教えてくれた。そうか、奥地であるEXダンジョン、キャンプ地、パルウァエ村、そしてこの村も滅ぼされる事無く健在のようだ。
「よ、良かったぁー…」
「はぁー…」
地面にへたるフルクとマルガ。俺も釣られて地面に腰を下ろす。村人や冒険者たちも安心と疲労で座る。今までずっと緊張とかで張りつめていたからなぁ。そうもなる。
「……本当に終わったんだな」
「お疲れ」
背後から声を掛けられた。
振り向くと、赤髪をした優男が。
「ユウェンス! キャンプ地から来てくれたのか」
「ああ、こっちはそこそこ魔王軍のモンスターが流れて来たが……ザ・ビースト戦で生き残った高レベル冒険者だ。そのうえ、あのレア装備だからな。そりゃあもう、ボスモンスターが現れようとも次の瞬間には塵に変わっていた。一瞬の出来事だったよ」
光景が目に浮かぶようだな。
どんな戦いがあったのやらと気になっていると、白衣の男も現れた。あれは……。
「メディケさんも」
「大勝利おめでとう、アウルムくん。負傷者はほぼゼロでね。いたとしても掠り傷程度の患者でね。重傷者や死亡者はいない。奇跡だな、こりゃ……さすが勇者だよ」
「いや、俺ひとりだけの力ではありませんよ。みんなの力がなければ、この勝利は成し得なかったのです」
俺がそう言うと、メディケさんはカラカラ笑う。それから、静かに村を見つめた。
「伯爵の話は聞かせて貰った。この世界には魔王ではない……君のような勇者が必要だ。レベル『1』でも『999』でもない……『ゼロ』の勇者がね」
「? それって……」
なにか言い方が引っ掛かって、聞こうとしたけど彼は背を向けて去った。……なんだろう、何か重要な事を言われたような。
まあいいか。
また機会があれば聞いてみよう。
「……アウルムさん、あの」
「うわッ!?」
白衣の背中を追っていれば、フルクが目の前にいた。おっと……気づかなかったな。
「ご、ごめんなさい。でもあの、村の人たちがお礼を言いたいそうです」
「あ、ああ……」
立ち上がって、少し歩くと村人が集まってきた。青年やおっさんが主だが、中には戦闘経験のあるという女性もいた。
「アウルムさん、ありがとうございました」「おかげで村は救われた!」「あなたが勇者だ!!」「第二勇者を勇者と信じていた自分は恥ずかしい」「どうかお許しを」「感謝しかない、命の恩人だ!」
「いや、いいんです。俺は成すべき事を成したまでです。魔王から世界を救う、これは勇者として当然の義務なんですから」
「おおッ、さすが真の勇者様だ」「あぁ、アウルム様こそ本物の勇者だ」「彼を永遠に讃えよう」「勇者様がいれば村は安泰だ」「そういや、国になるっちゅー話だよな」「いいね、それ。勇者様に国を作って貰えれば、またモンスターに襲われた時に安心だ」「名案だ。俺は国に賛同する」「俺も」「俺もだ」
いきなり国の話で盛り上がった。
そういえば、そうだったな。
いい機会かもしれない。
ここで宣言しておくか。
「皆さん聞いて下さい。俺は帝国でも共和国でもない、新しい国を……理想郷を作ります。その名も『テトラルキア』です」
「テトラルキア?」「なんだかカッコええな」「へぇ、いいじゃん」「ちょっと帝国っぽいのがいいな」「うんうん」「どんな国するんだい?」
聞かれて俺は答える。
「四分統治です。つまり『EXダンジョン』、『キャンプ地』、『パルウァエ村』、『カリブルヌス村』を四都市として機能させ、今以上に発展させます。それぞれの皇帝が管理し、統治するんです。つまり、四人の皇帝が誕生するわけですね」
ざわざわと騒然となる。
いきなりこんな提案を――
「いいじゃねえか!!」「うん、公平でいいんじゃないか」「もちろん、一人目は勇者様だろう」「次にグラティア辺境伯様だ。もともと領地主だし」「そりゃそうだ」「あと二人は?」「さぁ……」「相応しい人がおるんだかねえ」「聖女様は?」「うーん」
案外受け入れてくれた。
どうやら、この村人たちノリがいいな。
候補は一応決めているけど、後にしよう。
「詳しい事はまた後日発表します。今日はありがとうございました。俺たちは『EXダンジョン』の方へ戻りますね」
村人達は最後まで見送ってくれた。
明日からは建国に向けてダンジョンへ!
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