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007_大図書館

 


「ゼノキア様、剣のほうはもう少し体が大きくなってから本格的に稽古をしますので、しばらくは魔法の訓練を優先して行いましょう」


 俺はまだ四歳なので剣はもう少し大きくなってからのようだ。

 ただし、俺は毎朝木剣で剣術の訓練をしている。それはこれまで通り続けるつもりだ。


「うむ、分かった」


 今のサキノは俺の守役だから、簡単に言うと俺の家臣だ。

 皇子と守役は一心同体とよく言われるが、今後俺が成人してもサキノは俺の家臣として仕えることになる。

 だから年上相手でも口調は皇子としてのそれになる。


「ゼノキア様は全属性に適性があるとのこと。一度、全属性の魔法を私に見せていただけますか」


 全属性と言っても、火、水、風、土、光、闇の六属性のことだ。

 時々、この六属性以外の属性の適性を持つものが現れるが、そのような特殊な属性を持って生まれても、それに気づくのは至難の業だ。そもそも、魔法を発動させないと、自分に魔法の適性があるかも分からないのだから、特殊な属性を持っていても気づかないことが多いのだ。


「分かった」


 魔法を使うには詠唱が必要だ。

 魔法というのは、詠唱によってその形や行動が顕現すると言われているからだ。


 俺は詠唱して全属性の魔法をサキノに見せた。


「どれも下級魔法の威力を逸脱しています。下級魔法なのに中級魔法の域に達しているでしょう」


 そんなことはないはずだ。俺には前世の知識があるが、下級魔法の威力はこのくらいだったはずだぞ。

 きっと俺を乗せようとして、大げさに褒めているのだろう。

 褒められて気分を悪くする人はあまりいないからな。特に俺のような年齢だとその気になるだろう。


 サキノは子供の扱いが上手いな。

 だが、俺には前世の記憶がある。あからさまなヨイショはあまり好ましくないぞ。

 あまり酷いようなら、ひと言釘を刺しておこう。


「ゼノキア様、こちらは風の中級魔法の魔導書になります。初級は全て完璧ですので、中級魔法を訓練しましょう」


 訓練施設に特別に設置されたテーブルと椅子、そしてパラソル。

 その椅子に座って一服する俺の前で、サキノは黒い表紙の魔導書を手に取った。

 昨日のうちに全属性の中級魔法と上級魔法の魔導書が、皇帝より贈られてきたのだ。


 皇帝は俺の魔法の才に期待しているのだろうか? それとも皇子なのでこのていどは普通のことなのだろうか?

 生まれて四年がたっているが、皇帝と会ったのは数えるほどしかなく、期待されていると思ったことはこれまで一度もない。

 第十一皇子なので基本的には期待されていないのは分かるが、もう少し会いにきてくれてもいいだろうに。

 まあ、実際に会いにきてもらっても、困っちゃうけどさ。


 前世の頃の記憶では中級魔導書はもっと分厚かったと思う。この魔導書はどうしてこんなに薄いんだ?


「分かった」


 前世では火属性と水属性の適性しかなかったので、風属性の中級魔法の魔導書は初めて見る。

 表紙をめくると風魔法の説明が一通り記載してあるが、初級魔法の魔導書と大して変わりがない。

 次のページには初級魔法のまとめのようなものが載っていて……。

 さらにページを進めると中級魔法の説明があって、詠唱の言葉が記載されていた。


 俺は魔導書に書かれている詠唱内容を覚え、さっそく試してみることにした。


「偉大なる風神よ、我が魔力を捧げ奉る。我が求めは偉大なる竜巻。我が前に顕現せよ、ストームカッター」


 すると、風が集まり地面の土を抉りながら渦を巻いた。


「「きゃっ」」


 悲鳴がしたので振り向くと、ストームカッターの風圧で侍女たちの重厚なスカートがまくれ上がっていた。

 ふむ、エッダは白でリアは黒か。

 俺はしっかりと二人の下着の色を記憶した。

 風魔法はラッキースケベのチャンスと……。脳内にメモっておこう。


「ゼノキア様、風の中級魔法も完璧です! 素晴らしいです」

「サキノ、このていどのことで、そんなに褒めるな」

「何を仰いますか、四歳で中級魔法を行使できるだけでもすばらしいことなのに、それがこれだけの威力を出せるのです! ゼノキア様はもっと誇るべきです!」

「む? そうか……?」


 中級魔法ならこれくらいは普通なんだけど、なんだかサキノの興奮具合を見ていると本当にすごいことかと思ってしまう。

 サキノはやはり褒め上手だな。

 俺は順調に全中級魔法が行使できるのを確認し、上級魔法の訓練に入った。


「ゼノキア様であればもっと上の魔法も行使できましょう。陛下に大図書館の使用を申請しましょう」

「大図書館か……うむ、よきにはからえ」

「はっ!」


 大図書館というのは、帝城の中にある本や貴重な資料を保管しているエリアのことだ。

 貴重な資料があるため皇子でも勝手には入ることができず、入館には皇帝の許可がいるのだ。

 ちなみに帝城というのは、本城をはじめとして後宮などを含めた城全体のことを指す。


 数日後、陛下から大図書館の使用許可が下りたので、初めて大図書館に立ち入る。

 これほど早く許可が下りるとは思ってもいなかった。


「今回は一般書エリアのみの使用許可ですので、重要書エリアと禁書エリアには立ち入らないでください」

「分かった」


 白髪で長い髭をたくわえた今にもぽっくりいきそうな司書から注意事項を聞いて、俺とサキノ、そして二人の侍女は大図書館へ入っていく。


「すごいものだな……」

「数万、もしかしたら十万冊以上の本が保管されていると、言われるだけはありますね」


 サキノも入るのは初めての大図書館には、古今東西の本が集められている。

 中にはこれが本なのかと疑問符がつくものもあるが、本だけではなく何かの資料であれば羊皮紙一枚でも持ち込まれて保管されている。


「手分けして、特級魔法と王級魔法、それに帝級魔法の魔導書を持ってくるのだ」

「「「はい」」」


 侍女のエッダとリア、そしてサキノに命じて魔導書を持ってこさせる。

 魔導書は下級、中級、上級なら市場にも出回っているので、購入することは可能だ。

 だが、特級以上の魔導書は希少なので極端に少なくなる。

 皇帝の威光を背景にして手に入れるのは簡単だが、この大図書館にも所蔵されているし、なによりさらに上の王級や帝級魔導書もあるのだ。


 俺は皇帝の許可が下りるこの数日の間に、全属性の上級魔法と風魔法の特級魔法が行使できるのは確認している。

 だから風属性以外の特級魔導書と全王級魔導書、そして全帝級魔導書をかき集めさせた。


 ただ、サキノの目論見としてはその先の伝説級や精霊級の魔導書にあるようで、この大図書館への入館許可をとったのもそのためだと俺は思っている。

 伝説級の魔導書は買おうと思って買えるものではないのだ。


 その日から俺は、朝は木剣を振って体力をつくり、それが終わるとカルミナ子爵夫人から礼儀作法の講義を受け、昼からは大図書館に入って魔導書を読みふけって、たまに覚えた魔法を訓練所でぶっ放す。


 魔力の訓練も続けていて、寝る前には必ず訓練を行っている。

 魔力の鎧もいい感じで、今では魔力の四散を二割ほどに抑え込むことができている。

 特級の属性魔法を発動させるよりも、魔力の鎧を身に纏うほうが難しいため、二年近く訓練を続けているがまだ完全ではない。

 今後も魔力の鎧を完全にものにするために努力は欠かさないぜ。


 

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