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002_一歳とフォンケルメ帝国史

 


 俺が生まれ変わって一年がたとうとしている。

 この頃になると俺もつかまり立ちくらいはできるし、部屋の中を足をがくぶるさせながら移動できるようになった。


「ゼノキア様ったら、またお散歩ですか?」

「あうー」


 部屋の中だけでは面白くないので乳母のカルミナ子爵夫人に散歩に連れていけとせがむと、俺を抱きかかえてカルミナ子爵夫人は部屋を出ていく。

 その際には侍女と騎士もそれぞれ二人ついてくる。


 俺が住むのは帝城の一角にある後宮だ。

 後宮というのは皇帝やその妃たちが住むエリアで、男性は入ってくることができない。

 だから、この後宮には騎士であっても男性はいなくて、女性ばかりがいるのだ。


 ただし、例外もいて、それは宦官だ。

 宦官は男性器を切り落とした男性なので、宦官だけは後宮に出入りができる。あれがないのだから女性とあれができないわけだ。

 ちなみに俺の執事も宦官から選ばれている。


 俺も男子なのでこの後宮に住めるのは五歳までだ。

 五歳を過ぎると屋敷が与えられて、そこで暮らすことになる。

 皇帝に気に入られれば帝城の中、そうでなければ帝城の外の屋敷だな。


 どの道、皇帝は俺に会いにこないし、母親は月に二、三回しか会いにこないのだから帝城の中の屋敷は期待はできない。

 まあ、帝城の中だろうが、外だろうが、俺にはどうでもいいことだ。

 すでに成人した皇太子もいることから、第十一皇子である俺に帝位は遠い。だったら、皇帝にはできないようなことを好きにやらせてもらう。今回の人生を楽しく送ってやろうじゃないか。


 好き勝手に生きるにはどんなことでもいいが、特技が必要だ。

 だからあの日以来、俺はあの時の力がなんだったのか、考えることが多い。

 あれがなんだったのかは今でも不明だが、仮定として魔力の暴走ではないかと思っている。

 刺客を弾き飛ばし、部屋の中を破壊したことを考えれば、俺が魔力を放出した可能性が一番可高いのだ。

 ただ、詠唱もなく魔法を放つことはできないので、魔力の暴走ということで落ちついている。


 ▽▽▽


 俺は帝国暦五五二年三月二十日生まれで、今日は帝国暦五五三年三月二十日。

 つまり、俺の一歳の誕生日だ。


 俺の記憶には帝国暦というものはなかったが、どうやら俺はかなり長い時間を飛び越えて転生してしまったようだ。

 この帝国暦というのは、俺の生まれたこのフォンケルメ帝国が建国された年を帝国元年としている。

 俺の記憶にこのフォンケルメ帝国はないので、俺は帝国が建国される以前の時代からやってきたと思っていたが、どうも違ったようだ。


 このフォンケルメ帝国は初代皇帝であるトーマス・ガラン・フォンステルトが即位し、建国した年が暦の元年になる。

 俺の知っているトーマス・ガラン・フォンステルトは大王だったが、五代目の時に皇帝を名乗ることになって、初代にまで遡って皇帝になったらしい。


 現在の帝国は三代目の時に最大の領地を獲得したが、その頃とほとんど変わらない地域を支配している大国だ。

 そして、その三代目というのが生前の俺である。


 あの頃はイケイケで、戦場では先頭に立って戦っていた。

 おかげで魔法の集中砲火を受けて死んで、この体に転生することになったんだけどさ。

 だから俺の前世は今の俺のご先祖様ってわけで、なんだか混乱してしまう。


 さてと……。ここで、少しだけフォンケルメ帝国の歴史に触れておこうか。

 前世の俺の爺さん、つまり初代皇帝のトーマス・ガラン・フォンステルトは辺境の小国の王子として生まれた。

 王国とは名ばかりで隣の大国の属国のような、吹けば飛ぶような国だった。


 トーマスは十八歳の頃に兄を退け王位に就いた。

 そのことが主国の気に障ったようですぐに退位させられてしまうが、それに怒ったトーマスは主国に反旗を翻した。

 その後は三十年にも及ぶ主国との抗争があって、トーマスは主国を滅ぼした。その時に、このフォンケルメ帝国の前身であるフォンケルメ大王国を建国したのだ。

 その建国を宣言した日が帝国元年になっている。


 トーマスは建国後五年で息子のバルカンに大王位を譲った。

 だが、バルカンの大王在位は七年で終焉を迎えた。

 流行り病でぽっくり逝ってしまったのだ。そしてその跡を継いだのが、前世の俺だ。

 俺はトーマスの後見を受けて大王として戦場を駆けた。俺の生涯はほぼ戦場にあると言っても過言ではない。


 俺が大王位について十二年目にトーマスが逝った。

 七十二歳まで生きたんだから、まあ大往生だろう。

 その頃の俺は、すでに戦場で実績を積んでいて、国土を倍近くにまでしていた。

 だからトーマスが逝っても、俺に反抗する勢力は現れなかった。

 俺は大王在位三十二年で国土を三倍にして、最後は戦場で魔法の集中砲火を受けて爆死した。

 いやー、あの頃は本当に俺は不死身だと勘違いしていた。だから、今世では慎重に好き勝手生きようと思う。


 さて、俺は生まれてすぐに刺客に襲われたわけだが、その刺客を退けたあの力が魔力だと考えている。

 違うかもしれないが、魔力だと仮定して話を進める。

 仮定したら後は俺自身でそれを証明するだけだ。


 魔法は詠唱をすることで発動する。

 魔法には適性があって、その適性がないと魔法は発動しないと言われているが、それは間違った認識だ。

 適性のない属性でも魔法を発動することができるが、適性がないとかなり多くの魔力を消費するので、魔力が足りないため発動しないというからくりである。

 それは、生活魔法と言われる魔法が誰にでも操れることを考えれば、理解できることだ。

 なぜなら、生活魔法には着火(火属性)、湧き水(水属性)、微風(風属性)、穴掘り(土属性)などの各属性があるからだ。

 どうもこの時代では単に消費する魔力によって適性のあるなしを判断し、適性がないと発動できないと思っているみたいなんだ。


 俺にはどんな適性があるのだろうか?

 試してみたいが、魔法を行使するには詠唱が必要で、今の俺では舌足らずの詠唱になってしまうので魔法が発動しない。

 だから、魔力を体内で練り上げる練習をしようと思う。

 これなら詠唱する必要がないので、今の俺でもできるのだ。


 あれが魔力の暴走なら、俺には多くの魔力があるはずだ。そうじゃないと、あの威力に説明がつかない。

 ただし、魔力を練る練習ができても、どんな属性の適性があるのかまでは分からない。

 前世の俺は火属性と水属性の適性があったが、それがこの転生後の体にもあるとは限らない。

 それなりの量の魔力があるという仮定なので、なんらかの属性の適性はあるはずだと思っているが。


 魔力を練るには、まず魔力を感じなければならない。

 一般的に魔力は心臓の辺りにあるが、その魔力を感じる練習から始めるとしよう。


 目を閉じて心臓の辺りにある魔力に意識を集中する。魔法を使う上で一番最初の壁が魔力を感じることだ。

 だから、練習を始めてから魔力を感じられるようになるまで、最低でも一年以上かかると言われている。

 幸いなことに今の俺は一歳の幼児なので、時間だけはたくさんある。暇つぶしには丁度いいだろう。


 

次は23時だよ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第十一皇子という、末っ子も末っ子を暗殺に来るとは… 何か産まれに特別なものがあるのかな? 母親の血筋とか、産まれた時に何かあったとか [一言] 今後が楽しみなお話です
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