宇宙全体異世界転移
突然、天の川銀河を含む半径約100億光年の球状領域が異世界へ転移した。
天の川銀河はその球状領域の中心部から70億光年外れた位置にあった為、人類が転移の事実を認知する為には少なくとも理論上あと30憶年は必要であった。
*
「ちーちゃん、ランドセルの中だって」
その時、香はタロットカートをめくりながら千夏に告げていた。
小学4年生の朝の教室。宿題の作文を忘れた、昨日あんなに苦労して書いたのに……と、千夏が半べそをかいていたでので、香は最近ハマっている占いでの失せ物探しを提案したのだった。
「えーっ。ランドセルはもうさんざん探したもん。無いよ、ぜーったい」
無いよ、ぜーったい、と言いつつ、千夏はランドセルの中身を机の上にぶちまけた。あたかも香のせいで自分が不幸になったと言わんばかりであった。
カード占いはちょっと不謹慎だったかな、と香は反省した
「そっか、ごめん」
「ほらっ! ……あれ?」
千夏は言葉を詰まらせた。ランドセルの底から、くしゃくしゃに丸まった原稿用紙が出てきた。
「ヨカッタね、ちーちゃん。かおちゃん凄い!」
一緒に香のカード占いを見ていた玲奈が叫んだ。
「へへっ」
あいまいな笑顔を浮かべつつ、香は<現在>の位置から出てきた<死神>のカードの意味が解釈できず、戸惑っていた。
えっと、<死神>って確か“転移”だっけ。何でこの状況で“転移”が出てくるかな?