キミと僕の詠
あの空を覚えてますか
僕はもう霞の中で
あの丘で交わした約束
僕は遠くに来たままで
歩み寄る声
陽だまりのキミ
小さな手は勝ち気に伸びる
掴む掌
冷たい春の風
別れの日はもうすぐ
会えなくなるわけではないけど
距離が二人を分かつ日々
はじめての夏
キミの電話
転がるような鈴の声
「元気?」
その一言さえおよぐ
もうキミの場所はここではないよ
別々の月日
あの日どうして
誓えたのか
夕日のきれいなあの丘で
来ると信じて疑わなかった
人はいなくなると
龜を持つのだと
誰かがいっていた
その中には悲しませた人の
涙が溜まるらしい
もうキミの場所はここにはないよ
なのに、どうして
探してしまうの
丘にある木の下の
日時計は今もあるけど
あのときの夕日の中の
キミは眩しすぎて見えない
花を手向ける
今度こそは
遅くなったと
キミは笑うだろうか
苦しまないように我慢した涙を
少しだけキミに届けてもいいかな
ちょっと重いけど受けとれよ
いつかそっちにいくときは
半分持つから
今だけは…
5度目の春の日
朝陽の中
あのときの約束を今果たそう
慣れないタバコ指で挟む
掲げて酒を一口
大人になりたかった
なれなかった
キミに送る言葉は
苦いから飲むものじゃない、と
笑って餞とするよ
おめでとう