6.死ぬか声を失うか
作品に係わったものとして、
ゲームは頂きとりあえず5人は攻略した。
1番の好みは唯一王子ではない赤ずきんの狩人。
フィリップ(人魚姫)は3番目に攻略をしたのを覚えている。
相手のライバル令嬢が童話が元とあって
あまり悪役感がなく、人魚姫は原作がバッドエンドということもあって特に優遇されていた面倒だった。
人魚に対して断りきれない王子と、それを分かっててしおらしく引き止めたり、周りの令嬢を味方につけるパール。
「えっと、エンドが3つ用意されてるんだよね。」
このゲームでは各キャラにハッピーエンド、ノーマルエンド、バッドエンドの3つが用意されている。
人魚姫に関しては、
ノーマルエンド・・・王子とくっつくが、ショックで自殺をした人魚姫を気にして王子も自殺する。
ハッピーエンド・・・人魚姫が魔女と契約し、声の代わりにヒロインを消す魔法を手に入れたことを知り、王子とヒロインが人魚姫を処刑して、結婚する。
バッドエンド・・・魔女と契約した人魚姫が、声を代償にヒロインをどこか遠くの地へ追いやる。
(だったかな……?)
羽根ペンで紙に連ねていく。
いやいやいやいや待て待て待て待て。
「私死ぬか声を失うかじゃん!?!?」
正直な話ここまで美声に転生した以上、
悲しいかな前世よりもいい歌手になれるだろうし、
恋のために声を失うなんてもってのほかだ。
5歳の若さで小さいながらもホールで歌わせてもらえるレベルの美声としてパールは存在する。
人魚姫補正であろう。
海優はもちろんこの世界でも歌を歌いたいと願っていた。
(王子なんてどうでもいいから、全てを回避しなきゃ……)
考え込んでいると軽いノックとともにハイドが現れた。
「あら、お嬢様おはようございます〜。
お早いですね、フィリップ様が来られるのがそんなに楽しみでしたか?」
微笑ましそうにニコニコするハイドと、
顔面蒼白のパール。
ハイドは持ち前の天然で顔色には気づかないようだ。
「そんなことないわ、ずっと寝ていたからあまり寝れなかっただけよ。」
「そんなこと言って〜。可愛くするので準備してしまいますよ〜。」
(話が通じない……!)
20歳のハイドにはパールの態度が照れに見えているのだろう。
(中身は26際になったのよ〜ハイド〜)
パールの嘆きはハイドに届くことは無かった。