5.違和感の正体
眠りの中で歌が聞こえる。
たくさんの人の前で歌う私のステージだ。
「みんなありがとう!!こんな大きなステージに立つことが出来て私は本当に幸せです。」
そう言いながら私はギターをスタンドに置いた。
「次が最後の曲になります。知ってる人も多いと思いますが、私のデビュー曲になります。聞いてください。」
大きな歓声とともにピアノが流れる。
マイクを持った私は大きく息を吸い込んだ。
「っっあっっっ!!!!!!」
ハイドが起こしに来るよりも前、
日がようやく登り始めた頃に私は昨日と同じく飛び起きた。
「パールとフィリップってあれじゃん……」
20歳の時にデビューした私の初メジャー仕事は、
とある乙女ゲームのエンディングテーマだった。
平凡な女の子がお姫様に憧れるような曲、
と言われて試行錯誤してたのを覚えている。
ゲームのタイトルは【メルヒェンウェディング】。
主人公は普通の女の子であるが、
その他の登場人物はみんな童話がモチーフキャラだ。
攻略対象は5人+隠しキャラ2人。それに合わせてライバルも5人。
人魚姫。
白雪姫。
シンデレラ。
ラプンツェル。
赤ずきん。
である。
お気づきであろうか。
パールは別名人魚の涙。
デン・リル・ハゥフルは人魚姫の原作の名前。
フィリップは人魚姫の王子の名前として一部で使われている名前である。
そう、パールは乙女ゲームのライバルキャラなのだ。