03話 よく知っている見知らぬ場所で
「ではまた。明日の午前は木材の回収です。準備をしておきますから北門にて合流しましょう」
大量の石材のアイテムボックスへの収納が終わり、明日の予定を打ち合わせた後にヴェルナーと別れる。
足早に次の目的地へと向かう彼の背をぼんやりと見送った後、テオは宿へと戻るべく歩き出す。
テオは不思議な感覚に包まれていた。
ご飯を食べた訳でもないのに、妙に満腹感がある。アイテムボックスに大量の物を収納すると、腹がくちくなる。そんな事実があったのかとぼんやりと思う。
アイテムボックスの容量に制限があった頃、容量を増やそうとした時にはそんな感覚を覚えた事がなかった。
あの時、容量を満杯にする為に収納していたのは空気で質量の無い物体だった。今回満腹感を覚えているのは、質量のある石材を大量に収納した為だろうか。
そう言えば、ドラゴンに一撃を加えた巨石を収納した時も軽い満足感を得た覚えがあった気がする。あの時は周囲にバレないようにと焦っていたから、自らの感覚を深く認識するヒマもなかった。
深い満足感に身を委ねるながら、テオは宿へと戻ってきた。
泊まっている宿は大通りに面した宿屋だ。ランクで言うと中の上あたりだろう。Eランクの冒険者が定宿とするにはあまりにも高額すぎる宿だが、テオには何の問題もない。むしろ大金を手にした以上、安宿などに泊まっていては治安の面で問題を起こす。
「あ、おかえりなさいテオさん」
「ああ、ただいま。これからちょっと寝てるから、夕食時になったら声を掛けてくれ。
起きてこなかったら放って置いていいから」
「はい。わかりましたー。おやすみなさいテオさん」
宿の看板娘の声を背に受けて、後ろ手を振って取った部屋に向けて階段を上る。
部屋に入るとカーテンを閉めて、夕刻に差し掛かりつつあるの陽の明りを遮り、暗くなった室内でベッドに潜り込む。
アイテムボックスに大量に物を入れた時がらの満足感は、歩き帰る途中で途切れることはなく今も続いている。
この満足感に浸ったまま眠りにつけば、良い夢が見れそうだ。
アイテムボックスの中に大量の物を入れればこの満足感を得られるのならば、アイテムボックスの中は今どうなっているのだろうなと、ふと脳裏によぎった。けれど、確認する気も無く、速やかにテオの意識は闇に飲まれて行った。
◇ ◇ ◇
テオは気がつくと、無限大に広い、背景が闇色の空間を漂っていた。
宇宙空間の様だと、テオは出処不明な知識で思った。
足が地面に付くこと無しに――いや、そもそも地面の存在が無い。
上も下も分からない中、それこそ落下の最中であるかのような状況でもテオはぼんやりとした意識の中で落ち着いていた。
漂っているだけであり、決して危険な場所ではないと分かったからだ。
この場所を知っている。
ここがどのような場所なのかテオはよく見知っている。
ここはテオにとって最も見知った場所であり、同時にテオ以外の者は誰一人として知らない場所。
ろくに光源が無いにもかかわらず、多くの物体がその空間に浮いているのが見て取れる。そしてその、どれもこれもが見慣れた物ばかり。
自分が収納し、現実世界と隣り合うように認識し続けていれば、見慣れるのも当然の事だろう。
ここはアイテムボックスの中だ。
そのことに無意識だけではなく、意識して気がついた。
テオはこの空間に居る事をたまに見る夢だろうと思った。
見慣れた光景ではある。だが現実では、現実世界の視界と重なって見える光景こそがテオの見慣れた光景だ。
普段は、闇色の背景は現実世界の光景に塗りつぶされている。
だからこそ、現実世界の風景が全く存在しない保管世界だけの光景は夢だと判断できる。
けど何故だろう。いつもの夢とは違うような気がする。
そう、意識がハッキリしすぎてはいないか?
「おい……っ!」
テオは首を傾げ、普段見る夢との違いを考える。一番の違いはこうして考える事ができる点だ。
「おいっ! こっちを見ろ!」
「え?」
背後からの声に驚いた。
この空間に自分以外の人がいる?
いや、夢のなかならば他の人がいても不思議ではないと考えながら振り返る。
と、こちらを鋭く睨んでくる紅の瞳と目が合った。
「な!?」
「やっと気が付きやがったか……」
そうだ、コイツがいた。
テオは自分以外にこのアイテムボックスの中にいる人物の事を思い出す。できれば忘れていたかったと願っていたためか、本当に忘れていたようだ。
こちらを見据える紅の瞳の持ち主はアニタだ。
出会った――と言うより、初めて遭遇した時よりも髪が短くなっているのはテオの放った火竜の吐息によって焼け落ちた為だろう。
服も焼け落ち全裸であった。しかし全身を焼き焦がした無惨な姿を晒しておくのも何だと思って、大きな布をかけていた。
今のアニタはその布を身体に巻き付けて服代わりにしている。
唯一見える彼女の顔に、火傷の痕跡は見られない。最後に確認した時にはわずかながら火傷の痕があったはずなのに。
夢だからこそ火傷の影響が残っていないのかとも思う。けれど、初めての遭遇時の長髪姿のアニタの方が印象深い。
今、こちらを射抜かんばかりに見据える強い視線を、あの時も向けていた。
アイテムボックスの中で封印中であるアニタをジロジロと観察なんてしていない。焼き爛れ、瞳を閉じている姿はけが人が眠っているようにしか見えないし、そんな相手を観賞する趣味もない。
だからアイテムボックスの中にいるアニタに対する印象として、薄い。としか言いようがなかった。
これがただの夢ならば印象深い方の姿で現れるはずだ。ここで今、相対しているアニタは自分の夢の中の住人では無いのだとテオは理解した。
「……何故お前はここにいる?」
「なんでここに居るだって? それはアンタが私に言うべき事じゃないだろう? 私がここに居るのはアンタが負けた私をここに閉じ込めたからだろう?
私がここに居るのが不満なら、さっさとここから出せ!」
噛みつかんばかりの勢いで言ってくる。が、彼女がその場からこちらに近づいてくる様子はない。
「……ひょっとして動けないのか?」
そもそもこの空間は無重力だ。彼女もそうだが、テオ自身も自らの足元が何かの物に接触しているわけではなく、浮いた状態だ。ほんの僅かな距離だが、近づく事など不可能だ。
それでも彼女ならば威嚇の仕草でも行いそうなものだ。だが睨んで来るだけで手足を動かす様子がない。
その事の他にもテオには色々と疑問があった。
何故話せるのか、それ以前に何故意識があるのか。何故焼けただれ炭化していた身体が治っているのか。そして何故自分がここ居るのか、彼女が自分をここに呼びよせたのか。
しかし口に出てきた疑問の言葉はそれだけだった。テオの間抜けとも言える問いにアニタは舌打ちをした。
「チッ……。別に動けないわけじゃない。見ての通り手足もきちんと再生した」
焼け落ちて失っていたはずの手を、大きな布の裾から覗かせる。
傷跡一つ残っていない美しい小さな手だ。とても炭化し、焼け落ちていたとは思えない。
彼女の傷が再生している。
彼女が持つ再生能力がその傷を癒したのだろう。それはアイテムボックス内の時間停止の能力が彼女に及んでいない事を示す事になる。
クリスタの屋敷から出る時に感じたアニタの損傷具合の変化はテオの気の所為では無かったのだ。
気の所為で片付けてから、今の今までテオはアニタの様子など確認することもなかった。
いやそれよりも重要な事は。
「なんでこの場所で、ほんの僅かでも動けるんだ?
アイテムボックスの中は時間が止まっているんだぞ?」
時間停止の証拠に、遠くに見える火竜の吐息の巨大な炎は揺らめく事無くそのままの形で凍りついている。
テオの疑問の言葉にアニタは納得した様子で頷いた。
「ああ、そうか。やっぱりここはアイテムボックスの中だったか。あまりにも広すぎる空間だから、そんなはずは無いと何度も思ったが……。
幾度も出入りする多くの物が見えたし、お前はアイテムボックスしか使えないと言っていたしな。
ここまで巨大なアイテムボックスを持っているヤツは私でも初めて知る。
誇っていいぞ? テオ?」
からかうような自慢げな言葉遣いにテオは悪い気分はしないものの、警戒心を高める。
高位のヴァンパイアであるアニタがテオのアイテムボックスの中に居るのは、封印の代わりに使えると、ギルドから認められているからだ。
アイテムボックスの中に入れてしまえば火吹竜であろうと、外に出されるまで何もできない。
その実績が評価されたからこその措置だ。
何もできなくなる要の能力は時止めの能力だ。だが彼女にそれが通用しないとなると、真っ先に彼女の報復の対象になるのがテオだ。
アニタの視界に入らないように、彼女の背後に存在する物品が操作できるかの確認を密かに行なう。そこにあったのはアニタの愛剣であった紅魔剣だ。
夢の中だというのに何の問題もなく、いつもの保管世界の整理と同じように、操作ができる手応えが帰ってくる。
紅魔剣はくるりと周り、切っ先がアニタに向かう。
そもそもここが本当に夢の中ならば、アニタの存在があっても危険とは言わない。夢の中の住人が襲いかかってきても、ただの悪夢にしかならない。
だが、これが夢ではなかったら? その可能性が高い事をテオは感覚的に感じていた。襲われたら真剣に対応しなければならない。
しかし、そもそもの話しアイテムボックスの中のモノは、テオが自由にその位置を操作できる。
対峙するアニタ自身も例外ではなく、彼女を遠ざけるだけで安全は確保でできるだろう。
いやそれ以前に、何故自分は今、己のアイテムボックスの中でアニタと対峙している?
警戒と疑問に戸惑うテオに、アニタは宥めるように声を掛けてくる。
「あー……。まあ、落ち着付けよ。そんな小動物みたいに警戒しなくても大丈夫さ。
今の私はテオをどうにかできるような力は無いんだ。
お前に掴みかかろうにも身体に力が入らないし、踏みしめる為の地面もない。
魔法を使おうにもこの空間の魔力は全く反応してくれないし、私の体内にある魔力の方もピクリとも動いてくれない。
身体の再生にはスキルが反応していたのに、再生が終わったらどのスキルも全く反応してくれない。
私ができる事はこの世界のゆらぎを感じながら、まどろむ事だけだぜ? どうやってお前に危害を与える事ができるって言うんだ?
私はお前に完膚無きまで負けたんだ。
私は人族の天敵たるヴァンパイアだ。敗北した以上、虜囚の身として封印されるのは当然の事さ。私たちは死ぬこともできないからな」
「……なら、なんで俺をこの場に呼び出した?」
「は?」
「……ん?」
厳しい表情で問いかけたテオに対して、アニタはぽかんとした表情になった。そこでテオは何かがおかしい事に気がついた。
「お前が俺をこの場に呼び出したんじゃないのか?」
「私の事をお前と呼ぶんじゃない。アニタ。もしくはアニーと愛称で呼べと言ったはずだぞ?」
「……アニタが呼び出したんじゃないのか?」
「そんなワケないだろ。身体が動かない。魔法も使えない。スキルもロクに反応しない。
こんな状況でどうしたらテオを呼び出せるって言うんだよ?」
「けどアニタはヴァンパイアだろう? ヴァンパイアならなんとかできる手段があるんじゃないのか?」
「ヴァンパイアを何だと思っているんだ。
……まあ、私も昔、人間だった頃はそう思っていたから人のことは言えないが……。
あのな、ヴァンパイアと言ってもなんでもできるバケモノじゃないんぞ?
人からヴァンパイアに成っても変わるのはスキルだけなんだ。瞳の色が変わったり、痛みに鈍くなったり、味の嗜好が変わったりするがそれは、ヴァンパイア特有のスキルを得たことによる副産物にすぎないんだ。
だから私はスキルが使えないこの状況じゃ、普通の人間と大して変わらん。
管理世界の管理者を呼び出すなんて荒業、できるわけないだろう」
「管理世界? 管理者?」
テオは心当たりの無い単語に首を傾げる。
「おいおい、テオ。お前まさかこんな巨大な管理世界を創り出しておきながら、何も知らないのか?」
驚愕と呆れの混じったアニタに、テオは頷くしか無い。
「ああ、初めて聞く言葉だ」
「ん? ああそうか……。人族世界にはあまり広まっていない知識だったな。
仕方ないな、私が教えてやる。
感謝しろよ? 管理世界の事は人族世界の宗教じゃ異端の教えとされて秘匿事項になっている。だから、知っているヤツが少ない貴重な知識だ」
「異端ってどういう……」
テオが戸惑い、彼女が話すのを止めるか否かを迷っている隙きに、アニタは楽しそうに話し出す。
「管理世界っていうのは、簡単に言えば、自分で好き勝手に弄り回せる世界のことさ。
そして管理者っていうのはその世界を文字通りに支配する者さ」
「……それは王さまとか皇帝とか領主貴族のことじゃないのか?」
異端だ、秘匿事項だの脅かしてくる割りに、大した事がない事のようにしか聞こえない。
アニタは鼻で笑った。
「はっ。そんな小物なヤツらの事を管理者なんて言わないさ。
王や貴族は確かに権力者ではあるだろうさ。世界の仕組みを変える力を持っている。
だがその変化は権力の行使による変化だ。
権力者は法を敷いて社会の仕組みを変えたり、多くの人を動かして、森の中に道を通したり、川に橋を架けたりして、結果として世界の形を変えていく。
けど実際に世界の形を変えているのは、命令によって動いた大勢の人の力だ。
間接的にしか世界を変えられないヤツらの事を、管理者なんて言わない。
管理者というのはな。そいつが管理している世界に限るが、他者を介すること無く、考えるだけで世界を変えることが可能な、絶対者の事だ。
私たちが生きていた世界を管理世界とする管理者は、世間一般では神と呼ばれているしな」
「神……?」
神などという、自分とは到底関わり合いになるとは思えない存在が出てきてテオは戸惑うしかない。
「ああ、管理者の中にもピンキリが在るから安心しろよ。最上位の管理者が神だとしたら、テオは最下位の管理者だろうからな」
「……やっぱりアニタが言う管理者っていうのは俺の事なのか? そんで管理世界っていうのはこのアイテムボックスの中の保管世界の事なのか?」
「ああ、そうだ。この管理世界――保管世界か。アイテムボックスから派生した管理世界に相応しい名前だな。
この世界――保管世界はテオが創り出して、テオ自身が管理し続けているんだろう?」
「ああ」
「ならテオは管理世界の管理者だ。
現実世界の管理者である神と同じ、上位存在だってことだ」
「………」
神と同じ存在だと言われても困惑しか無い。テオは信心深い方ではないが、神様と己を同列に並べられるような、飛び抜けた自惚れものでもない。
「管理者は絶対的な力を振るえるが、その力は己の管理世界の中だけに限られる。
テオが管理者として最下位だとしても、今の私の様にテオの管理世界――保管世界に居る以上、私はテオには逆らえない。
私の意思はともかくとして、どんな力を振るった所で無力化されるだけだ。
本当に逆らおうと思うなら、神殺しができるほどの特別な力を持っている必要がある。
私はそんな力は持っていない。
さっきも言ったが、管理世界って言うのはいわゆる上位存在が創り出し、その主が思うだけで自由に弄り回せる世界のことさ」
「上位存在……」
「そう。私達が生きていた現実世界の神を筆頭に、上位存在とされる存在は大抵管理世界を持ってるものさ。
齢を経たドラゴンや吸血鬼。力あるアンデッド。叡智を求めて位階を成り上がった魔法使い。仙人、妖怪、悪魔に高位モンスター。
強大な存在は管理世界を持っていてもおかしくはないと言われているな」
「……管理世界っていうのは随分とありふれているように聞こえるが?」
アニタは呆れた表情になった。
「そんなわけ無いだろ? 持っているのはそんな存在の中でもごく一握りだ。
管理世界を持てるのは上位存在だけだ。強大な存在がそのまま上位存在ってワケじゃない。
――あ、いや、ちがうな。『管理世界を創り、管理者となった者が上位存在と呼ばれるようになる』っていうのが正しい。
言葉通り、その創られた世界においての上位者だからな」
「……俺がその上位存在だって言うのか……?」
テオには到底信じ難い。
「ああ、だってこの場所はテオが創った世界なんだろう?」
「それはそうだが……。
そんな事を言ったら、アイテムボックスのスキルを持っている者は全員が管理者って事なる。
それこそマジックバックですら、同じように管理世界と言える事にならないか?」
「ならないさ。そもそも通常のアイテムボックスの容量は最大でも小部屋程度だろう?
そんな小さな空間じゃ世界とは言えない。
私が知ってる限りではアイテムボックスの中を管理世界にしたのはお前が初めてだ。
管理世界を創るのには色々と方法が在るらしいが、そちらは到底理解できないような高度な理論やら、隔絶した力を必要としているらしい。
それこそマジックバックを世界だ、なんて到底言えないさ。
あれは結界で閉じた空間を拡張しているにすぎないからな。高度な術式ではあるけど、世界を構築するには単純過ぎる。
世界を創るなら、数百倍は高度な術式が必要になる。
似たような方式で、現実世界にある土地に結界を張り巡らせて、その内部空間を弄って管理世界と称する者も居るけどな……。
本当の意味ではそれだけじゃ管理世界なんて言わない。
管理世界は完全に現実世界から隔絶された世界の事だ。
いくら神と呼ばれる管理者であろとも、現実世界から隔絶されている別の世界には干渉できない。
現実世界の上で結界で隔離されただけの場所に管理世界を称する空間を作ったとしても、神の干渉から逃れる事はできないんだ」
「……まるで神さまが実際に居るような言い方だな……。会ったことでもあるのか?」
大量の情報に疲れ気味のテオは、投げやり気味に問いを投げかける。
苦笑交じりの否定が返ってくるのを予想していたが、アニタは真剣な表情で首を振った。
「会ったことはない。けど、その力の干渉を受けた事は何度もあるよ。
私たちの世界――現実世界で神と呼ばれている管理者は、ヴァンパイアの事が殊更にお嫌いみたいでね。
ヴァンパイアが人族を支配しようと行動すると、致命的なタイミングで干渉してきて、こちらの邪魔をしてくるんだ。
もっとも、神が直接的に地上に介入できなくなってから久しいから、ヴァンパイアの命を直接奪うことはできないようだけど……」
「つまりヴァンパイアと人間が戦って居る時に介入してきて、ヴァンパイアが不利になるようにと、物事の流れを生み出しているのか?」
「そういうこと。
たとえば、踏み込む場所にちょうど石ころが転がり込んだりして、人族は死ぬはずだったはずの斬撃を偶然避けて生き延びたりね」
「それは……。俺とアニタの戦いでも神さまとやらの干渉があったって言うのか?」
もし、神と呼ばれる世界の管理者とやらの干渉の結果として、自分のアイテムボックスの中にアニタを封印することになったとしたら、どうにも不愉快な気分になる。
「安心しなよ。神の干渉が行われると独特のイヤな気配が周囲一帯を包み込むんだ。
人族はその干渉の気配を神のご加護だとか呼んでいるがな。
私とテオが戦っている時には干渉の気配は無かったよ。もしあったら、感じた瞬間に戦いを止めている。
テオが私を倒したのはお前の実力の結果だよ」
アニタは嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言った。




