たぶん人生が変わる「美味しい・外さない、おトクな冷凍カニの選び方」をカニ屋アルバイターが語ってみる
涼しい季節になってまいりました。
北の地域では既に雪が降り始めている場所もあるようですね。
はじめましての方ははじめまして。そうでない方はどうもです。聖瀲です。
あっと言う間に十一月のの半ば。2017年も残すところあと僅かとなってきました。
……そう、もうすぐ年末年始ですね!(唐突)
ちなみに無宗教の私にはクリスマスなどという祭典は存在しません。クリスマスは平日です。
そんなことはどうでもいいですね。
さて年末年始といえば、家族や親戚が集まり、のんびりと年の瀬を過ごす家庭が多いでしょう。
そんな年末を彩るものと言えば、やっぱり料理です! 料理!
Twit○rでフォロワーを対象に『年末のご馳走で思いつく料理を挙げろ』とアンケートを取ってみたところ、
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・すき焼き
・寿司(手巻き)
・天ぷら
・カニ
・ローストビーフ
・ステーキ
・かつおのたたき
・チーズフォンデュ
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といった回答を頂きました。各家庭ごとに違いはあるものの、豪華なメニューを心待ちにしている方が多いのだろうと思います。
で、今回はそんな年末のご馳走の定番の一つ『カニ』についてのお話をしたいと思います。
というのも実は私、毎年年末に実家近くの魚市場に店を構えるカニ屋さん(詳細な場所・施設名は控えます)で、ここ4年ほどアルバイトをしています。
そこでプロに知識を叩き込まれているため、並み以上程度には知識を持ち合わせているつもりであります。
そんな私が「美味しい・外さない、おトクな冷凍カニの選び方」を、基礎知識編、購入編に分けてご紹介していきたいと思います。
ハッキリ言います。今まで特に拘りなくカニを選んでいた貴方。この記事を読んだなら、ちょっと拘ってみてください。多分人生が変わると思います。
では前置きはこのくらいにして、早速本題に入るとしましょう!
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基礎知識編
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1.はじめに
まず最初に言っておくことがあります。
私のカニ知識は「冷凍カニ」であることが前提です。正直ナマのカニについてはよく知りません。
と言うのも、私の実家は太平洋側の比較的温暖な地域であるため、生きたカニは取れません!(深海カニを除きます)
北海道や東北、日本海側では生きたカニや生のカニが販売されているかと思いますが、それに関しては管轄外なのです。申し訳ございません。
本記事はあくまでも「冷凍カニ」であることを前提としたお話になります。冷凍カニとは、一度茹でたものを冷凍したものを指します。ナマのまま冷凍したしゃぶしゃぶ用等に使われるのは、ここでは「チルド」と表現することにします。
2.カニの種類
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ではいよいよお話を始めます。
まず「そこから?」とツッコミが入るかもしれませんが、一般的に食べられるカニにも何種類かあるのはご存知でしょうか。
私が思いつく限りで挙げますが、恐らく食用としてよく皆さんに食べられているカニは以下のようなカニだと思います。
・ズワイガニ
・タラバガニ
・ケガニ
・花咲ガニ
・ワタリガニ
・タカアシガニ
・アブラガニ
・アサヒガニ
どうでしょうか? 「それは聞いたことある」というのから「そんなん知らんわ」というものまであると思います。私が名前を知っている食用の海生種だけなので、もっといるかと思います。
そんな多種多用なカニの種類ごとの特徴を紹介しましょう。
2―1.ズワイガニとは
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ズワイガニは、恐らく最も食卓に並ぶ機会の多い、一般的なカニであるでしょう。私が専門なのもこの種類です。
細長く肉が詰まった脚部は食べ易く美味であり、カニ味噌も美味しく頂ける大型のカニです。「カニ爪」として袋詰めにして売られているのも、一般的にはこのカニの爪です。余すところなく美味しく頂けますね。お値段もズワイガニ・タラバガニ・毛ガニの基本三種の中では比較的リーズナブル。
鍋に突っ込まれることもあります。かにしゃぶはズワイガニですね。
ズワイガニの特徴として、水揚げされる地域によって呼び方が変わることがあります。
恐らく名前は聞いたことがあるだろう「松葉ガニ」「越前ガニ」などは、このズワイガニの一種・本ズワイガニであります。
この本ズワイガニ(オピリオ種と呼ぶ)が最も一般的で、近縁種にはオオズワイガニ(バルダイ種)、紅ズワイガニというものがあります。またオオエンコウガニ(マルズワイガニ)というそっくりさんもいます。
これらの種類による違いについては購入編で詳しく説明します。
2―2.タラバガニとは
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ズワイガニと比べて太くて硬い脚部。食べ応えのあるプリプリとして淡泊な味わい。カニの王様タラバガニです。カニ味噌は傷みやすく固まりにくいため、食用に出回ることはありません。ただ生きたものを入手すれば食べられるとか。
カニではなくヤドカリの近縁種であり(よくザリガニだとかクモとか言う人もいるが、それは嘘では無いが非常に的外れ)、ズワイガニ等カニ類は脚が片側5本ずつの10本なのに対し、タラバガニ類は片側4本ずつの8本なのが特徴です。
一般的なカニの中では比較的高価です。またアブラガニという、非常に見た目が似ている為にニセモノとして出回ることがある近縁種がいます。また花咲ガニもタラバガニの仲間の一種です。
2―3.毛ガニとは
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北海道といえばコレ。全身を覆う毛とトゲトゲが特徴、前二種と比べて小さいながらも、余すところなくボリュームたっぷりな毛ガニです。
爪部分は硬くて食べにくいですが、脚部や脚の付け根には溢れんばかりの身が詰まっており、自分でハサミを使って解体しながら食べていくのが楽しいです。カニミソは恐らく最も美味でしょう。
サイズは1人1杯、もしくは2人で1杯が丁度いいくらいのお手軽サイズです。
ちなみに食用として捕獲されているのは全てオスです。近縁種にはクリガニとトゲグリガニというのがいるそうですが、若干味が劣るそうです。私は見たことが無いです。
2―4.その他のカニ
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タカアシガニは世界最大の節足動物として知られる超大型のカニで、一部国外海域でも発見されているものの、日本の固有種としての認識がされていることが多いかと思います。
静岡県や和歌山県の一部で水揚げされていますが、以前はあまり味が良くないとして食用にされておらず、食用として認識されるようになったのは近年になってのことだそうです。
飼育のしやすさ、目立つ見た目、希少性の低さから、どちらかと言うと水族館に好まれる生き物のようです。
ワタリガニ・アサヒガニは小型の海生ガニで、鍋やみそ汁等に使われる、安価でポピュラーなカニです。ワタリガニは正式名称がガザミ、またはイシガニですね。瀬戸内海や有明海など内湾海域で獲れるようです。アサヒガニは他のカニと違って九州地方でよく獲れるカニのようですね。
今回は上記のうち3種類、ズワイガニ・タラバガニ・毛ガニについてご紹介していきます。
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購入編
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さぁ、それではカニの種類を勉強したので、早速カニを買いましょう!
……どこで? ってなりますね。
近年では時期になればスーパーでもごく普通に入手出来る他、ネット通販などでもお手軽に購入することが出来ます。
勿論それで購入してもいいのですが、それだと購入編で話すことが無くなってしまうので……(汗)
今回はそれ以外の手段をご紹介したいと思います。
1.カニを買いに魚市場へ行こう!
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私がイチオシするのは、「実際にカニを買いに出向いてほしい」ということです。
これのメリットは、まず交通費等を考慮しても、スーパーで買うより確実に安価で手に入ること。そして目利きのコツを知っていれば、自分の目で選んで買えるから間違いがないこと。コレです。
特にカニは当たりハズレが大きい印象がよくあると思います。高級品ですからね。それだけに外した時のガッカリ感が大きいのは仕方が無いことです。
じゃあカニの販売店なんてどこにあるの? となりますが、魚市場にあります。例え専門店でなくても、この時期になればカニを取り扱う店は多いでしょう。実際私がバイトしている魚市場では、年末シーズンは半分以上の店舗がカニを販売している印象です。まずはお近くの魚市場をチェックしてみるといいでしょう。
それでも売ってない、または近くに魚市場が無いという方は、そういったお店に電話してみるといいでしょう。きっとお店の商品を丁寧に教えてくれて、郵送で商品を販売してくれると思います。規約に触れそうなので会社名は明かせませんが、ウチのお店も電話注文に対応しています。
2.専門店を探そう!
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魚市場にはたくさんのお店があります。目移りしてしまいそうですが、実は大抵のお店にはそれぞれ「得意分野」があります。色々な商品を販売しているお店でも、鮪専門だったり、貝専門だったり、魚卵専門だったり。海藻専門や佃煮専門、干物専門なんかもあります。
勿論その分野の商品だけ扱ってるお店もありますが、それだけでは商売が成り立たないので、他の商品も置くお店は多いです。特に年末の時期なんて、カニや数の子は飛ぶように売れますからね。
さぁ、そんな中で探してほしいお店は、一年中カニを販売しているお店「カニ専門の卸売り店」です。
カニ専門店は一年中カニを売っています(業務用の強力な冷凍庫なら1年近く持つので、1年通して販売できます)。
カニ専門店で販売するカニはほぼ間違いがありません。何故かって? 良い物を売ってリピーターを得なければ稼げないからです。カニの販売をメインにする業者が「あの店で買ったカニはスカスカだ!」なんて評価を付けられたら致命的です。カニはとにかく評価で選ばれますから。
それに専門店の店員さんはしっかり知識があります。私もそんな熟練社員やパートさんの知識の受け売りですが、何聞かれても直ぐに答えてくれます。困ったらきっと相談に乗ってくれるでしょう。
3.「重さ」は何のアテにもならないぞ!
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お店を選んだら、カニの目利きです。同じ値段ならなるべく良い物が食べたいですもんね。
さて、これは店員視点でよく気にしていることなのですが、よくお客さんが商品を手に取り、重さを比べているりをよく見ます。
じつはソレ、なーんにも意味がありません。
実は冷凍カニは、全体を薄い氷の膜……グレース加工というもので覆われています。この氷の膜を嵩増しすることによって、冷凍カニはいくらでも重くすることが可能なのです。だから重さの比較は出来ません。
じゃあこのグレース加工は重さを誤魔化すためにやっているかというと、決してそんなことはありません。ちゃんと意味があります。
グレース加工はカニの冷凍焼けを防止するという大事な役目があり、あの氷の膜は疑似的な真空パックのような役割を持っているのです。それがないとカニは乾燥してしまい、身がパサパサとして台無しになってしまうのですね。
……っとまぁとにかく、カニを買うときに重さで判断してはいけません。
4.じゃあ大きさ? 実はここにも落とし穴!
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ならば大きいヤツを選べばいい? その通りです。野生動物は基本的に大きい方が美味いです。
何故なら、生存競争を生き抜く野生動物は、より強く、より沢山エサを食べれるヤツが大きくなるからです。当然、沢山エサを食べて育ったヤツの方が美味しいに決まっています。これはカニに限らず、魚など殆どの生き物で同様だと思います。
カニの販売業者では、そんな大きさを表現するために「L、1L、4L」等、○Lといったサイズ分けが一般的に使用されています。実はこのサイズ分けに落とし穴が。
あのサイズ分け。実は統一規格が存在していないのです。つまりサイズ分けは店ごとの自己判断!
だから全く同じ大きさのカニでも、A店では3Lで、B店では4Lだったりすることもあり得ますし、それは違反でもなんでもないので責めることは出来ません。勿論ネット通販でも同様です。
○Lサイズは○○キロとか、○○センチまでとか書いてないサイトはちょっと怖いかも……?
カニの大きさはサイズの記号ではなく、自身の目で判断しましょう。これ大事。
5.見るべきは「ツメの側面」
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ここまで来て「じゃあどこ見ればええねん!」とそろそろ怒られそうなので、オススメの目利きポイントを紹介します。
それはズバリ「ツメの側面」です!
冷凍カニのツメには、食べやすくするために予めカットを入れている場合がありますが、そうではない、自然的な亀裂が入っている場合があります。
バイト先の社長によると、身がパンパンに詰まっているカニは、一旦茹でて冷凍する過程で、ツメの殻が自然と爆ぜてしまうそうです。そのためツメに自然な亀裂が入るのですね。ちなみにこれはカニツメのみの袋販売でも同様です。
その他にも、甲羅が柔らかいカニは脱皮直後で味の劣るカニなので避けるべきだとか、恐らくカニの目利きについてはネットを調べればいろいろと見つかるでしょう。
6.ズワイガニ ― バルダイ種を狙え!
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では、カニの種類ごとに少しだけ拘ったお話をしましょう。
先ほどの基礎知識編で、ズワイガニには大きく三つの種類がいることを紹介しました。紅ズワイガニは加熱すると身が縮みやすく刺身で食べられることが推奨される種なので今回は割愛し(というか販売経験が無いのでよく知らない)、本ズワイガニ(オピリオ種)と大ズワイガニ(バルダイ種)についての比較をご紹介したいと思います。
皆さんがただ「ズワイガニ」と言えば、それは確実にオピリオ種です。日本人には非常に馴染み深く、甘さが際立ちプリプリとした食感はたまりません。茹でると綺麗なオレンジ色に染まります。
それに対し、大ズワイガニ、バルダイ種はあまり馴染みが無いかもしれません。バルダイ種は主にロシア東海・ベーリング海で水揚げされるため、オホーツク海や日本海等近場で水揚げ出来るオピリオ種と比べると、輸送コストなどの面で劣るのかもしれません。
バルダイ種の特徴は、オレンジ色と表現するオピリオ種とは明らかに差が出る、真紅に染まった大柄な見た目。茹でるとその赤が一層鮮やかになります。味はオピリオ種と比べて甘味は若干控えめですが、大きく肉厚な身のしっかりとした歯ごたえ、そして毛ガニ並みに濃厚な旨味が強烈なインパクトを誇ります。
恐らく一度食べたことがある人ならば言うでしょう。アレはズワイガニの味よりも毛ガニに近いと。
その味の虜になりリピートするお客さんはウチの店でも多く、「バルダイを口にしたら、二度とオピリオは食べられない」とも。我が実家でももうオピリオは食べていません。
もしも売っていたならば、是非バルダイ種のズワイガニを選んでみてください。
7.タラバガニ ― ツメと脚の関係
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続いてタラバガニです。実は私、タラバガニに関しても専門外なので、知っていることだけ簡単にお話します。
タラバガニをよく見比べると、同じサイズでもツメの大きさに強烈な個体差があることに気付くかと思います。実はこれがタラバガニの特徴です。
タラバガニはツメの大きさと脚の太さで体のバランスを保っています。だから同じサイズなら、ツメが大きい個体は脚が細く、足が太い個体はツメが小さいです。
これに関してはどちらの方がいいと断言はできません。ツメと脚、好みで選んでいただくべきだと思います。
8.毛ガニ ― 毛ガニはごく単純に
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最後に毛ガニ。毛ガニは簡単です。甲羅がずんぐりむっくり、丸々として大きなヤツを選んでください。あとはタグが付いているのも重要です。
タグは商品の品質を証明する上で重要です。品質が悪いと何処のカニかバレちゃいますからね。毛ガニは姿の状態で売られるのが殆どのため、タグがちゃんとついている場合が多いです。
あとは……そうですね、毛ガニの命は何といってもミソですので、品質以上に解凍方法が味を左右させることがあります。
折角の毛ガニのカニ味噌が、間違った解凍方法で全て流れ出てしまったら悲しいですよね。簡単に言うと「甲羅を下にして」「新聞紙で優しく包み」「冷蔵庫に入れ」「定期的に溶け出す水を捨てながら」二晩くらいかけて溶かすのが理想です。
毛ガニに限らず、冷凍カニは冷蔵庫で新聞紙に包んでじっくり解凍するのが理想です。常温解凍は妥協案。温風解凍は最終手段。流水解凍? レンチン? 煮沸? ギルティですね。干した洗濯物を泥水に漬けるようなものです。
9.オマケ ― ずわい爪肉のヒミツ
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ぶっ続けで書いてたら疲れちゃったので、これで最後にします。
恐らくスーパー等でもよく売っているでしょう、ズワイガニのツメ部分だけを詰めた「爪パック」ありますよね。
実はあれ、爪肉の大きさがまた○L単位で定められていますが、ツメの大きさに関わらず総重量は1キロで販売されています。じゃあ何が違うのかと言うと、1袋に入っている数が違います。
私の記憶が正しければ、恐らく1Lサイズなら1キロで36~40個、4Lサイズなら21~25個だったと思います。そういった表記が袋に記載されています。
量が曖昧なのは、その数の範囲でピッタリ1キロになるよう調整されているからです。抜かりない。
私は子ずれのお客さんには数が多い1Lサイズを勧めたりと、お客さんのニーズに合わせて選んでもらうようにしています。
ちなみに、値段は同じ量でも小さい方が安いです。更に余談ですが、他店と値段が比べ安い商品なので文句を言われやすくて、アルバイターとしては嫌いな商品です。
露骨に安い商品は、去年の売れ残りを引っ張り出してきた古物の可能性があります。賞味期限的には問題ありませんので普通に売る店は売ります。ご注意を。
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さいごに
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いかがでしたでしょうか。
近年では中国でもカニブームが到来しており、日本ではその影響で値上がり&輸入量の減少が発生しているため、カニの高級化には拍車がかかっています。
そんななかでも大金を叩いてカニを買うなら、せっかくならば失敗しないようにカニを買っていただきたいと私は願っています。
美味しいカニは本当に人生が変わるほどおいしいです。是非とも本物のカニと巡り会ってください。
疲れたのでこの辺りで〆ようと思います。
では、長々とした記事を読んで頂きありがとうございました。