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 男の初来店から数えて二日目の午後、デュークは朝から張りつめていた緊張の糸が緩みかけていた。


 実を言えば、昨日から一睡もできなかったのである。


 デュークは賭けに出た。


 男の娘の手術が成功したなら、男は自殺をやめるだろう。と、そして、彼の性格から察するに、必ず、ダイヤモンドのナイフを買い求めに来るだろうと……


「いらっしゃいませ」


 夕暮れ時、男は再びデュークの前に現れた。


「やあ、約束通り、特別なナイフを買いに来たよ」


「はい。お待ちしておりました」


 デュークは、今度こそ本物の笑顔でそう言うと、在庫棚の上部に飾られていた、ダイヤモンドのナイフを男の前に置いた。


 男は、黒光りする見事な仕立てのスーツに身を包み、顔色も随分と血色がよくなっていた。一昨日と同じ人物とは到底思えなかった。


「ご令嬢様の手術は上手くいったご様子で、何よりです」


「ああ、ありがとう。医者も奇跡的な回復だと驚いていたよ」


 心労からだろうか、表情こそ疲れていたが、声色は明るい。


「ところで、ナイフが2本あるのはなぜだね?」


「2本、御入用ではありませんか?ご令嬢さまとお客様とで。ご令嬢様分の一本は、少々気が早いですが、当店からのお祝いの品として贈らせていただこうと思います」


 男は、はっとなってデュークの顔を見つめているしかできなかった。


「ありがとう、本当にありがとう。そうだな、このナイフで娘と一緒に朝食を食べよう。今そう決めた。あなたには何から何まで感謝してもしきれない」


「私は当たり前のことをしたまでです。ですが……願わくば、お客様が今後とも当店をご贔屓にして頂ければと」


「ああ、是非そうさせてもらうとも」 


 そう言って男はデュークに握手を求め、デュークはその握手に応じたのだった。




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