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カブラギ君、異世界で裸族になる。  作者: 貴船 俊之輔
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【第3話】 人狼

タイトル変更しました。【狼男】→【人狼】

ウルフマンより、ウェアウルフの方が格好いいからです。

あと、人狼だと男も女も含まれるそうで……。

知らんかった!


「うむ…。囲まれてしまったか…。」


ロリ王女様は、辺りを見渡している。

あたりは霧がかかり、遠くまでは見通せない。

だが、何者かが蠢くうごめ気配がある。


「…私の失態です。敵の気配に気付くのが遅れてしまいました…。」


ナナさんは、死にそうな顔色をしている。

ケモ耳は垂れ、愛らしい尻尾もたらん、と垂れ下がっている。

……たまらん。モフモフしたい。


「いや、お主は今まで良くやってくれた。…感謝しておるぞ。」


すでに覚悟を決めているのだろうか。

ロリ王女様は、やさしい声音でナナさんを慰めた。


「……もったいなき…お言葉でござい…ます…。」


ナナさんの言葉に力がない。

……状況は絶望的なのだろう。

重い空気があたりを支配する。


……約1名を除いて。


こんな状況でも、幸せそうに大口を開けて眠っているアホが1人。

よだれを垂らしているのが、地味に腹立たしい。


俺はすでに、ティナを起こすのをあきらめていた。

コイツは目を覚ましても役に立たない。

むしろ、状況を悪化させるような気がしてならない。

このまま、大人しくいてもらった方が、いい気がしていた。


……ナナさんの話では、敵は魔物、10人以上。

ヘタをすると、20人近くいるかもしれない。

周囲をすでに包囲されており、逃げるのは困難だろう。


「ショータ殿…私が敵を引き付ける。その隙に…ルル様を頼む!」


うーん。ナナさんは死ぬ気でいるようだ。

……闇雲に突っ込むなど、無駄死にでしかない。

俺はそう判断する。この案は却下である。


「待ってください。奴らの目的と戦力がまだわかりません。」


まず、奴らの目的が、俺たちとの戦闘なのかどうか。

場合によっては、戦闘を避けられる事もある。

次に敵側の武装の有無・程度はどうか。

奴らの武装と人員次第では……勝機はある!


俺が古武術道場で習った、兵法の出番である。




「ほう…。ショータには、何か考えがあるようじゃな。」


ロリ王女様の目がキラリ、と光る。


「まず、奴らの目的が不明のままの先制攻撃は下策です。」


「待て。奇襲による先制攻撃は、有効な手段だぞ!」


さすが軍人。ナナさんの意見は正しい。


「いえ。先に、奴らが本当に敵なのかどうかを判断すべきです。」


「すでに包囲されているのだぞ! これは明らかに軍事的行動だ!」


確かに。でも、おかしいんですよ。


殲滅せんめつ戦だとしたら、行動が遅すぎます。」


「!?」


「今の時点で、攻撃されていないのですから。」


「………!」


「包囲が完成した時点で、奇襲による先制かつ、一斉攻撃するのが……」


「なるほど! 一理あるな…。」


……ナナさんは理解が早くて助かる。


すでに包囲が完成している状態で、攻撃が無いのは他に理由があるからだ。

数の上でも、奴らが圧倒的に有利なのだから。


「とすると、奴らの目的は殲滅ではなく、我らの拘束か?」


「あるいは、もっと穏やかな理由の可能性もあります。」


「それは…楽観的すぎるだろう!」


……それは、確かにそうだ。


「はい。しかし、奴らが俺達を無駄に傷つけるつもりが無いのなら…」

「話し合いによる解決も、不可能とはいえません。」


「話し合いが決裂した場合は…?」


「……その時は、奥の手を使います。」


俺はティナに視線を向けた。

あいかわらず、幸せそうに眠っている。

コイツの出番が来ない事を祈ろう。




霧が晴れはじめ、周囲の全貌がはっきりしてきた。

包囲しているのは、16名。

しかし、その奥にも何人かいるようだ。

二重に包囲されているらしい。

これでは、囲みを強行突破するなど不可能だろう。


人狼ウェアウルフだ……!」


ナナさんの叫びにも似た声が響く。


人間の体型に、狼の頭が載っている。

体格はしっかりしており、身長も190cmぐらいだろうか。

身長と同じぐらいの槍を手に持っている。

鎖帷子チェーンメイルを着用しており、兜と胸甲も装備している。

それが16名全員…。

……ムリゲーである。


相手は完全武装の人狼達ウェアウルフ

わかっているだけで16名。

二重に包囲されており、外側には何人いるのかも、わからない。

それに対して、こちらは3名+オマケ。

武装しているのは、ナナさん1人だけという悲惨な状態。


圧倒的に不利な状況である。

しかし、彼らは俺たちを遠巻きに見つめるだけで、近づいてこない。


「ナナさん。あいつらって、強いんですか?」


「……強いぞ。」


油断なく、あたりを見回しながら、ナナさんが答える。


「奴らの機動性は騎馬兵並みということだ。」

「王国軍もかなり苦しめられたと聞いている。」

「……400年も前の話だが…な。」


騎馬兵と同じように動ける歩兵…。

……魔族ハンパないっス。


「そろそろ、使者が来る頃であろう…。」


ロリ王女様が、空を見上げながらつぶやいた。

朝焼けの雲が、東の空に漂っている。

日の出を迎えたのだ。


突然、人狼ウェアウルフの集団は、包囲を縮め始めた。

ゆっくりと、慎重に。

槍は立てたままで、こちらには向けてこない。

敵意が無いことを示しているのか。

ただし、眼光だけは鋭い。


俺たちがいる空き地は、半径10m程のサイズである。

その空き地の外周部に壁を作るように、彼らは立ち止った。

近くで見る彼らは、いずれも精悍な兵士を思わせた。


その包囲を割って、奥から1人の人狼ウェアウルフがやってきた。

……でかい! まわりの人狼達ウェアウルフより、ひとまわり大きい。

身長も2mは超えているだろう。

こいつがリーダーだろうか?




「そちらの代表者と話がしたい!!」


予想外の大音声で、俺はすくみあがってしまった。


「妾が代表者じゃ! それから……もっと静かに話せ。」


ロリ王女様も大音量の声に驚いたようだが、さすが切り返しが早い。


「おお、これは失礼。ワシは人狼ウェアウルフの族長、サラディンである。」


「妾はシャルル王国第一王女、ルルティナ・ド・シャルルである!」


魔物相手に堂々としたものである。

……しかし、ロリ王女様の本名は、なかなかカッコイイ。


「ほう、そなたが。……して、王女殿が何故この地に参られた?」


「ゆえあって、東方への旅の途中じゃ。この地の者に用はない!」


「ふむ…。しかし、そちらに用は無くても、こちらには…あるのだ。」


一気に緊迫感があたりを包んだ。

ナナさんが槍を構えると、周囲の人狼達ウェアウルフも槍を俺たちに向けた。

じりじり、とさらに包囲を縮めてくる。

絶体絶命である。


俺はちら、とティナに目を向けた。

……あれほどの大音声を気にもせず、未だに爆睡ばくすいしている。

ヨダレを垂らして、微妙に笑顔なのが地味にムカツク。

コイツは案外、大物なのかもしれない。

しかし、大人しくしている方が都合がいい。

いざとなれば、コイツを人質にこの場を切り抜けるのだ。


「抵抗しても無駄だ! ここにいる者達は我が部族の精鋭だぞ!」


物凄い大声である。物理的な圧力を感じる。

族長サラディンは、槍を構えるナナさんを睨みつけた。

すごい迫力に、俺の方がビビってしまった。


「さあ! 引き渡してもらおう! そのラミアの娘を!」


「へっ?」「へっ?」「へっ?」


……期せずして、ハモってしまった。



俺達3人が振り返ると、ティナがようやく起きたところであった。


「ふわあああ。……うん? ナニ? なんかあったのぉ?」


……どうやらコイツは、別の意味で大物だったらしい。

彼らの目的は、俺達ではなく…ティナだったのか…。


「あれ? あれ? …なんでアタシをそんな目で見るのかな?」

「……てゆーかぁ、なんで人狼ウェアウルフに囲まれてるのぉ?」


俺はティナの質問を無視して、族長サラディンに言った。


「どうぞどうぞ。お早めにお持ち帰りください。」




魔族にも、指名手配という制度はあるそうだ。

ティナの容疑は、未成年による家出だという。

家出人捜索の手配書が、魔族達に出回っていたらしい。


……というか、コイツただの家出娘だったのかよ!


現在、ティナは人狼ウェアウルフの村に護送中である。

両手首を縛られ、腰縄をつけられて人狼達ウェアウルフに囲まれている。

逃走は不可能だろう。


ティナは、というと、ずっとメソメソと泣き続けている。

……なぜだろう、心が痛む。


思えば、ティナと衝撃の出会いを果たしてから、半日しか経っていない。

なのに、この濃密な記憶はいったいなんだ…?

俺は少し、彼女に情が移ってしまっているようだ。


しかし、まあ…なんだ。

ティナの事を心配するより、俺自身の事を考えるべきか。


……俺は今、両手首を縛られている。

腰縄もつけられている。

人狼達ウェアウルフにも囲まれている。


……なぜか、俺も護送中なのである。

容疑は、保護者の許可なく未成年と卷族の契約を結んだというもの。

………。

……納得いかねえ!!


ロリ王女様が強硬に抗議をしてくださったのだが、無駄だったようだ。

現在、俺たちの隊列の後方に、ナナさんと一緒について来てくれている。


人狼達ウェアウルフは朝方とは違い、ずいぶん砕けた感じになっている。

砕けた、というよりは、だらけたという感じか。

もともと、みんな同じような顔をしているので、年齢とかは判別できない。

ただ、なんとなくチャライ雰囲気の奴がいたので、俺は話しかけた。


「ずいぶん大がかりな捕り物だったんですね。」


「んあ? ああ、みんな暇だったんじゃね?」


「へっ? ヒマ…だった?」


「退屈しのぎに、みんなノリノリで参加したみたい。俺もだけど。」


……なんだろう、この違和感。


「で、でも、族長さんは精鋭だと、おっしゃってましたけど?」


「あ? ハッタリに決まってんじゃん!」


……ぐぬぬ。


「し、しかしですね、みなさん完全武装だったようですが…。」


「そりゃ相手がラミアだからねぇ、下手したら死ぬし。」


そういうものなのか。やはり、ラミアは恐ろしい存在なのか。


「しばらく平和だったからねえ。みんな刺激に飢えてるわけよ。」


……どうやら、単に遊びの延長だったらしい。


人狼達ウェアウルフは、どうやら俺と似た性格なのだろう…。


……あっ、まだ訊きたい事があるんだった。


「あと、1つだけ! どうして朝まで待っていたんですか?」


「ハハッ! 寝てる時、無理やり起こされたら誰だって怒るだろ?」


「はあ…。確かに機嫌は悪くなるでしょうね…。」


「相手はラミアだぜ。キレたらヤバイっしょ!」


「………。」


「寝起きを襲った方が、寝ぼけていて都合がいいんだよ!」



うーん……納得できるような、できないような…。

……まあ、ティナにだけは通じる戦法だと思う。




人狼ウェアウルフの村は、ログハウスが立ち並ぶ、おしゃれな感じだった。


チビっ子ウルフが物珍しそうに、俺たちを観察している。


ちょっと……いや、かなりカワイイと思ってしまった。

モフモフしてやりたい。


俺とティナは、村はずれの倉庫らしき建物に放りこまれた。

専用の牢屋とかは無いのだろう。

壁の隙間から洩れる光のみで、中は薄暗い。


「ううっ。……ぐすん。」


ティナは相変わらず泣き続けている。


「……そんなに家に帰りたくないのか…?」


コクリ、と黙ってうなずく。


俺は床にゴロリと横になると、横目でティナの姿をしばらく眺めていた。


「……そんなにイヤなら、逃げちゃうか?」


ティナはパッと顔を上げると、俺を見つめてきた。

瞳がキラキラしている。

……いや待て。ちょっと軽い気持ちで言っただけだ。


横になっている俺の上に、ティナが飛び込んできた。


「いっしょに逃げてくれるの!?」


近い、近い。顔が近い。


「アタシ、ご主人様とならドコへでも行っちゃうよ!」


ぐりぐり、と体を押し付けてくる。

……微妙に変な気分になってきた。ヤバイ。


俺は彼女を押しのけると、半身を起し胡坐あぐらを組んだ。


「待て待て。実際問題、あの人狼達ウェアウルフから逃げ切れると思うか?」

「馬並みのスピードで追いかけて来るんだぞ。」

「しかも奴らノリノリでやって来るんだぞ。」

「たぶん、ヒャッハーとか言いながら追いかけて来るぞ。」


そう言うと、ティナは再び黙りこんでしまった。

下を向いて、しょんぼりとしている。

……ああ、メンドクサイ奴だ。




「何でそんなに家に帰りたくないんだ?」


「………。」


「もしかして…いじめられたり…してるのか?」


下を向いたまま、首を横に振る。


「じゃあ、なんだよ。話してくれないと相談にも乗れないぞ。」


「…あのね…素敵な…旦那さまを…見つけるの…。」


あー。目的はオトコかよ!


「でもねっ!……でもね…本当は…違うの…。」


あん? なんだよ!


「………さん…」


「ん?」


「お父さんに…会いたいの…。」


「???」


「生き別れの…お父さんに…会いたいの…。」


「なん…だと…!」



俺は意外な理由に驚きつつ…

……再び突入したシリアスパートに、戸惑いを感じていた。




ラミアの一族は女系社会である。

言葉通り、女性だけの社会である。

男性は存在しない。

男児が生まれないのだ。


ラミアは他種族の男性と結ばれることにより、子供を作る。

生まれてくるのは、女児のラミアだけである。


ラミアには結婚という制度がない。

自分の父親の顔も知らず、ラミアの子は育てられる。


排他的な、しきたりである。

しかし、代々、そうやってラミアは子孫を残してきた。

当然、ティナの母親もそうだった。



「お母さんが…言ってたの…すごく……いい男だったって…」

「いつも…いつも……言ってたの…」

「ティナも…早く…いい男……見つけなって…」


下を向いたまま、ティナは語りはじめる。


「お父さんの…話をしてる…お母さん…とっても…楽しそうだった…」

「でもね!……でも…本当は…寂しかったんだと…思うの…」

「本当は…お父さんに…会いたかったんだと…思うの…」


俺は、ティナに語るべき言葉が見つからず、黙っていた。


「アタシの…お母さん……病気なの…」

「寝たきりに…なっちゃって…もう……だめかも…」


……やめろ。


「だから!……お母さんに…お父さんを…会わせてあげたいの…」

「死ぬ前に……ひと目だけでも……会わせてあげたいの…」


やめろ。やめてくれ…。

俺はこういう話には弱いのだ。


「アタシの……旦那様も……見せてあげたいの……」


……なんだよ! コイツいい娘じゃねーか!


ティナの告白に、俺は同情してしまったのだろう。

俺はそっと、ティナの肩に手をまわし、抱きしめた。

やさしく、頭をなでてあげた。


「俺が……力になってやるよ…!」


……ゆっくりと、ティナが顔を上げる。

潤んだ瞳が、俺をまっすぐに見つめていた。


薄暗い小屋の中、見つめ合う2人。


ティナは俺の背中に手をまわし、瞳を閉じた。


俺は…ティナの唇に……。




「話は聞かせてもらったああ!!」


突然の大音声とともに、いきなり扉が開け放たれた。


俺とティナは、文字通り飛び上がって驚いた。

そりゃ、驚きますよ。イイトコロだったのに。


ずかずかと小屋の中に入ってきたのは、族長のサラディンだった。

抱き合って固まる俺とティナの前に、ドカっと腰を下ろした。


続けて大量の人狼達ウェアウルフが小屋に入ってきた。

狭い小屋の中は、すでに超満員である。

……いったい、なんなんだよ!


「いやあ! いい話ではないか! 感動したぞ!」


族長サラディンは、上機嫌のようである。

まわりの人狼達ウェアウルフも、ウンウンとうなずいている。


「母を想う、娘の真心! 気に入ったぞ、ラミアの娘よ!」


がっはっはっ、と豪快に笑う族長さん。

まわりの人狼達ウェアウルフも楽しそうである。


……どうやら、俺とティナの話はすべて筒抜けだったようである。

俺達を小屋に入れた後、まわりを囲んで聞き耳をたてていたらしい。

……全員で。


どんだけ暇なんだよ!


「ラミアの娘よ。貴様の願い、ワシらが手助けしてやろう!」


「おおおおお!!!」


人狼達ウェアウルフの歓声があがる。



……どうやら、人狼という種族は思ったより良い奴らしい。



「でも…ティナには、家出人の手配書が出ているんですよね?」


俺の問いに族長はギロリ、と睨んできた。

……コワイ。


「そんなもんは、しょせん『お願い』に過ぎん!」

「親子の情を踏みにじるなど、このワシが許しはせん!」


まわりの人狼達ウェアウルフも、ウンウンとうなずいている。


「あの…そのためにラミア族との関係が悪くなったりしませんか?」


「文句があるなら、掛かってくればよい。いつでも相手になってやるわ!」


「おおおおおお!!!」


……まわりの人狼達ウェアウルフもノリノリである。


彼らは、やはり好戦的な種族なのだろう。




「よし! まずはラミアの里に伝令だ。」

「娘は無事だ、安心して娘の旅を見送ってやれ、と伝えろ!」


「うっす! オレ行ってきます!」


若そうな人狼がウェアウルフ外に駆けだして行った。


「次は親父殿の捜索だな。何か手掛かりはないのか?」


ギロリ、とティナを睨む。

ティナは、ひっと叫ぶと俺に強く抱きついてきた。

俺とティナは、まだ抱き合った状態のままである。

おかしな気分にならないのは、恐怖が先行しているためだ。


この族長、親切そうだけど……コワイんだよ。


「あ、あの、お父さんは、東の国からやってきたそうです…」


「東の国…東方か…」


「た、旅の途中で、ウチの里に立ち寄ったみたいで…」


「……そこで貴様の母君と知り合ったわけだな!」


「は、はい…。」


ティナは怯えていた。ラミア族とはいえ、まだまだ子供なのだ。


ちなみに、俺もビビっている。超ビビっている。

……漏らしそうである。


「……して、親父殿の名は?」


「お母さんは…マックって、呼んでました…」


マックさんね。……本名なのか愛称なのか、わからんな。


「……他に情報は?」


「お父さんは、金髪に綺麗な目をした色男だったって…」

「当時、20歳ぐらいの……裸族の男だったと…」


「……裸族!?」


狭い小屋の中にひしめき合っている人狼達ウェアウルフが、いっせいに俺を見た。


……いやいや。俺は裸族じゃありませんから。

不幸な事故により、全裸を余儀なくされた不幸な文明人ですから。


「ふむ。裸族の男となると、かなり絞られるであろう。」

「年齢は、そうすると…今は30から40歳ぐらいか?」


コクリ、とティナがうなずく。


「よし、わかった。…お前ら! 聞き込みしてこい!」


「うーすっ!!!」


人狼達ウェアウルフは、あっという間に飛び出して行った。

恐ろしく機敏な動きであった。


「それで、貴様はこれから…どうするつもりだ?」


ティナは、しばらく考えていた。


「……お父さんがいた、東の国へ…行こうと思います…!」


ティナの瞳には、熱い決心の炎が宿っていた。




ルルティナ王女様と、蛇娘ティナの目的地が一致した。

これは、偶然ではないのだろう。

仕組まれている。俺は直感的にそう思った。


……モモという名の不思議少女は、どこまで関与してるのだろう?

俺が恋した少女は、俺に何をさせたいのだろう?



俺が異世界に飛ばされてから、まだ1日も経っていない。

なのに、いろいろ有り過ぎだ。


俺の装備は、未だにバスタオル1枚のみ。

……あっ。

そういえば、おかしな名札みたいなモノもあったっけ。


俺は首に掛けられた、モモちゃんとの思い出の品を眺めた。

………。

……おい。


……ナンカ書イテアルジャネーカ!






【続きます】



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