一話
「やばっ、もうこんな時間か」
俺はテレビから目を離すとよっこいしょ、と心の中で唱えながら立ち上がり、弁当箱と参考書をかばんに詰めて足早に玄関に向かう。
「いってきまーす」
その返事を聞くことなく玄関を出て、駐輪場に止めたスクーターのエンジンを付けた。
7時40分。
いつもより遅い時間に家を出たせいか、あたりには朝練に出るために自転車をこぐ中学生の姿がない。
そういえば毎日毎日中学生も偉いよな~とそんなことを考えながらスクーターを走らせていた。
「意外とこの時間いいかもな」
そうフルフェイスのヘルメットの中でつぶやく。
そうして校門を通り過ぎるとスクーターをいつもの場所に止める。
いつもならば8時には席について騒がしい周りの声に独り言で嫌味を呟きながら参考書や単語帳に目を通しているところだが今日は寝坊した。
今は秋の中ごろで、だんだんと寒くなってきているところだがきのうの夜はとても寒かった。朝、下で、起きろと声をかける親の声を無視して布団から出たくなくなるくらいに。
俺の通う高校は家から原付で30分ほどの場所にあり通う人も多いが、偏差値はさほど高くなく、3年になると就職・私立大学志望か国公立大学志望かで大体2対1に分かれる。
俺は就職・私立志望クラスにいながら国公立大学に入り、国公立志望クラスの連中を馬鹿にしてやると意気込んで去年の冬に進路希望調査票を提出したが、学習環境の違いを感じ、春にはすでに後悔していた。
そしてそれは秋にはさらに大きくなっていた。
就職が決まって暇なのはわかるが、学校は集団行動の上に成り立っているのだから、周りから浮いた行動は控えてくれ。
いや、むしろ俺のクラスでは俺の方が浮いているか。だからといって俺も一緒になって騒いで遊ぶわけにもいかない。というより学生の本分は勉強だ。
ま~要するに、静かにしてほしい。
ただ、そんなこと言えるはずもない。クラスでの俺のイメージは物静かで真面目。
あえて言い換えよう。無口で根暗、関わりづらい、というよりもはや空気。
気にする奴なんて誰もいない。大丈夫、俺もあんたらと関わりづらいと思ってるよ。
というか好きでこんなキャラしないし。元がちょっとだけ暗いだけだし。
ただ、勉強してたら勝手にそうなっただけだし。俺だって1年の時は騒いでたし。
なんとか無事に教室にたどり着くことができたが、もう周りがうるさいなんて気にしてなかった。
教室に入る前に廊下から国公立クラスをのぞき見たところ、全員がすでに着席して赤本やら何やらで何かしらの教科の勉強をしていたのが見えたからである。
ただでさえ集中できない環境にいるのに、勉強時間まで彼らを下回ったら俺はただのひねくれた愚か者でしかなくなると思った。
そう考えながら席に着くとすぐに参考書を読み解き始めた。
この時期になるともう授業内容は自習が多くなっており、クラスの大半は机に突っ伏している。学校にいるとき一番集中できる時間だ。先生も違う教科を勉強していても怒らない。というか俺が真面目に机に向かってカリカリと勉強しているのだ。邪魔しては悪いとでも思ってくれているのだろう。
昼休みになると俺は弁当箱を机の上に乗せたまま、手を洗いに行き帰りに飲み物を買う。
これは席を取られないようにするためと、目立たないためだ。
俺は授業が終わったらすぐに飯を食い、勉強を再開したいと思っているが、周りは授業後少ししゃべってから飯を食う。
そんな中授業後すぐに俺一人ご飯を食べると俺が自然と浮いてしまう。
これ以上マイナスイメージが増えることや一人で飯を食うことに嫌悪感はないが無意味に目立ちたくはない。
ただ、前までは前の授業で使った教科書やノートをそのままにしていたが、3年になって早々、勝手に片づけられて席を取られたことがあってので、あからさまな弁当箱に変えた。行動力ある奴って何やるかわかんないから怖いよな。
え?一人で飯食ってんのかって?
うん。俺には鉄壁の守り(イヤホン)があるからな。
そうして学校に来てからは時間を無駄に使うことなく放課後になった。
俺は放課後になるとすぐに帰る支度をして校舎を出る。
国公立クラスの連中の大半は放課後になると学習室という場所を使って勉強するが、俺は小心者なので国公立クラスの連中が支配するそこには入れない。
だから家ででも勉強できるしとか言い訳を考えながら帰路につく。
「今日はだれともしゃべらなかったな」
いつもは親しくしている友人と移動教室に移動しているときや体育のときに話しているのだが今日は話をする機会がなかった。
友達がいないわけではないし、あと女友達とか彼女とか必要ないし、と誰にするでもなく言い訳を頭の中に並べる。
別に顔がそこまでひどいというわけではない・・・はずなんだ。
主観的に見たら中の中から中の上くらいだと勝手に思っている。
口には出さないが。
口に出そうとすると自動的に俺は下の下だよと言ってしまう。
否定してもらいたいのか、ナルシストと思われたくないのか。
答えは両方だ。
まったくもっていい性格しているものだ。
こうして考えてみてもやはり俺の性格にはネガティブが入ってる。
自分について考えてみても結局、俺はなんてつまらない、むなしい人間なんだ、といつもこの結論に至る。
途中無性にコンビニによりたくなったが我慢した。登下校中に寄り道をするのは確か校則違反だった気がする。
というより家におやつも飲み物のあるのだからコンビニによっても時間と金の無駄にしかならない、そう思いながらわきの道に入りアクセルを入れる。
このわきの道路は交差点が見づらいくせにミラーがなく、大通りにも出づらいという難点があるが、学校への近道だったので大体の人が登下校に利用している。
暗くなるとコンビニの近くなので荒っぽい若者のたまり場となっているという噂があるが真偽は定かではない。
信号は青。交差点の少し先には対向車、その手前に小学生の集団。何も来ていなかったようなので、そのまま通り抜けた。
「あ~ぁ、さっさと帰って勉強しなく――!?」
___とっさにハンドルを切る。視界に入ってきたのは子供。
何とか避けられたがふらつき、クラクションを鳴らされた。
前を見ると俺はセンターラインを越えていて、真正面には車が来ていた。
「うわぁーー」
ガシャーン!
___スクーターから投げ出された俺は突然のことに頭が真っ白になっていた。
「・・・いてて。えっ?えっ!?」
わけがわからず顔を上げると前方にはスクーターが横たわっている。
ナンバーからして俺のものだ。
なんで?と一瞬思うが今起こったことを思い出し、状況を確認しようとする。
とりあえず、スクーターのナンバーが自分のもので、自分が道路に倒れたことと、目の前に車が来ていたことをつなげて、事故になってしまったかもしれない、と焦る。
興奮しているせいか体の表面に痛みはない。ただ体の中の痛みに耐えながら体を起こす。左手が全く動かない。
折れてるかもな、と思いながら騒がしい後ろの方へ体を向けると車が何台か止まっていて人だかりもできていた。何が起きて、どうなったんだ。
近づくとスマホで電話をしている大人と、倒れている子たち。
その子たちに声をかけている人、そしてそれを見ている人たちがいた。
その表情は、信じられない、嘘だろ。とか、嫌だ、なんで。といったもので、現状が受け入れられないようだった。
そういう俺も今、同じ顔をしているのだろう。そこにはおびただしい血が流れていた。
「・・・・」
血の量が多いところに目を向ける。近くのアスファルトの塀には血がべっとりついていた。
集まった人たちの声を盗み聞くと、どうやら俺を避けた車はそのわきにいた小学生の集団を塀と挟んで引きずってやっと止まったらしい。
下を見るとその子たちがうなだれていて、見るも無残な姿になっていた。
「・・・・」
見た瞬間に気持ち悪さがこみ上げる。これはひどい。一般人の俺が一目見ただけでこの子たちはもう、と思えてしまうほどであった。
だがそんなことより、人が死んでいることより、俺の頭の中はこれから自分に起こることへの不安と焦りが支配していた___。
これは俺のせいとかにはならないよな。
どのくらい時間がたったのだろうか、いつの間にか救急車や警察の車が来てあたりは騒然としていた。
その間も立ち尽くしていた俺が再び思考を取り戻した時には病院のベッドの上だった。
顔を上げると、そこには警察官がメモを片手に立っていた。
「事故を起こした人は、君が急に反対車線に飛び出してきたって言っているんだけど、どうしてセンターラインを飛び出したんだい?」
「・・・いや、急に子供が飛び出てきたから」
俺がそういうとメモに何か記入している。なんなんだ。記入を終えると顔を上げ、口を開く。
「・・・それはほんとに?」
「はい」
「けど君の後続車の人も、君がいきなり対向車線に突っ込んでいったって言っているよ」
おかしい。
「え?いやいや、それはないですよ。だって急に子供が飛び出て来るのを俺は見たんですから」
「その子はどうなったの?」
「俺はその子を避けてそのあと必死に対向車からも避けたんでどうなったかは知りません」
「君の後続車の人は君が突っ込んでいったから急ブレーキで止まったって言ってたんだよね。その人の車にはぶつかった跡も何もなかったし、子どもがいたらブレーキ痕も変わってくるよね」
おかしい。おかしい。
「いやいや、そんなはずないですよ、おかしいですよ。俺嘘は言ってませんよ」
「だとしてもそうするとどちらかが間違ったことを言ってることになるよね」
「いや、それは知りませんよ。もう一度その人たちに確認してきてくださいよ」
「そうだね、今日はこの辺にするよ。それじゃあ、また」
そう言うと彼は何かを記入した後メモをしまい部屋を出ていった。
おかしい。おかしい。おかしい。なんだよそれ。これじゃあまるで俺が事故の原因みたいじゃないか。
なんでほかの人は見てないんだ。おかしいだろ。なんだこれ。俺をはめようとしてるのか?いや、これはいくら何でもないな。なんでだ。
確かに俺は子供が飛び出てくるのをこの目で見た。なんでなんだよ。さっぱりわからない。
思考が大きくなりすぎて考えるのが面倒になってくる。その後も思考がまとまることはなく、いつの間にか寝てしまった。
「やぁ」
突然声をかけられて、なんだ?と目を開けると目の前にはどこまでも続いているような灰色の空間と、無数の球体、そして一人の男の子が立っていた。
見た感じ年下で髪の色は白く、服も白い、まるで囚人服のような服を着ていた。
「あれっ?ここどこだ?あんただれだ?」
いきなりのことで頭が回らない。
今俺起きた気がしたんだが、というか俺は寝てしまっていたのか。しかしこれも夢なのかと頬をつねってみるがよく分からない。
「まぁそうなるよね。まず自己紹介からしようか。ぼくの名前は・・・ごめん、自己紹介できないや。ぼくには名前がないんだ。ぼくは世界を管理している一人、きみたちの言葉でいう神に近い存在かな。君は渡部淳。高校3年生、5月26日生まれで18歳。あってるよね」
「あ、あぁ」
全然頭が追い付かない。神?世界を管理?というかこれ夢の中なのか?俺の妄想が新たな世界を切り開いているのか?
「混乱しているだろうけど話を進めるよ。わかんないこと話後で聞いてね」
「そうだな~、まず前提として君たちの世界での死というものは必然であるということを言っておくよ」
「は?」
何言ってんだこいつ。人が死ぬのは当然だろ?というかここどこだよ、ほんと。夢だろ、夢なんだな。はい、終わり。さっさと眼覚ませよ、俺。
「ま~君たちの世界では死ぬ時の場所、時間、状況そのすべてが死ぬ前から決まっているってこと。と言ってもそう設定したのはぼくなんだけどね。ここまではいい?」
「何だそれ、全然わけわかんねーよ。夢じゃないの?」
そう俺が言うと彼は背中から孫の手を取り出したかと思うといきなり俺の肩をたたきつけた。
「夢じゃないよ!もう。全然話が進まないよ。要するに、ここは管理者の空間で、ぼくは管理者の一人。君たちが住んでいた世界はぼくが管理していて、君のいた世界には君たちでいう運命というものが確かに存在しているってこと。わかった?」
効果音つけるとしたら、プンプン、だろうな。相手が怒っているからか、だんだん頭がさえてくる。
なるほど、わからん。
しかも思いっきり振り上げてジャンプまでしたくせにあまり痛くない。ということはひとまず夢か夢じゃないかは保留だな、と結論づける。
つーか孫の手とかもう、真面目に話してんだったら笑えもしないかつリアクションしづらいネタ入れてくんなよ、思わずニヤニヤしちまうじゃないか。
何を隠そうこの俺、しけ笑いが大好きなのだ。あの皆がシーンとする感覚、やらかしちまったって顔・・・いい。
はっ!今はそんな時間じゃねー。わきにそれた意識を戻す。
「・・・・あぁ。だがその世界って何だ。まるでほかにも世界があるみたいな言い方じゃないか」
「そうだよ。ほらこの一つ一つが世界なんだよ」
そう目の前の男の子は何をいまさらみたいな顔して近くにあった球体を孫の手で引き寄せる。知ってるわけないだろ、そんなの。逆に知ってる奴いんのかよ。
というかお前孫の手好きだな。お前もしや引きこもりか?管理者とか言いながら面倒臭いとか言って寝転がってんだろ?
はっ!くそ!こいつは真面目に話をしつつ意図的に意識をそらさせようとしているな。中々やるじゃないか。俺が内弁慶で人と話さないで頭の中で考えている時間が多いからといっ__はっ!
「君たちでいうこの空間が宇宙でこの球体が星みたいなものかな。この1つ1つは全く別の設定になっていて、管理している人も違うんだ。ま、宇宙の場合は管理者なんていないんだけどね。ま~話を戻すよ。君の起こした事故で死んでしまった子たち、彼らはあそこでは死なないはずだったんだよ」
「・・・なんだそれ、どうゆうことだよ。というか俺が起こしたんじゃない」
そうだった。今俺疑われているんだった。一気にテンションが下がった気がする。
あ~ぁ、目覚めたくないな。というか話し戻してないだろそれ。全然違う話じゃん。
「なんというか、あの子たちが本来死ぬはずだった時間も状況も違うんだ。本当なら君はコンビニによって時間をつぶしていてあの場にはいなかったはずなんだ。あの子たちは死なず、君とは無関係なはずだったんだ。誰かが勝手に設定をいじってしまってあの子たちが死ぬように設定を変えてしまったんだ。ついでに君にも被害が及ぶようにね」
俺に被害が及ぶ?ということは結局どういうことだ?俺はどうなるんだ?もしかして俺が事故の原因となったみたいなことがそれのことなのか?
というかほら、若いのに怠けてるからいたずらなんてされんだよ、まったく。これだから最近の若者は。
やばい、さっきからこいつの悪口しか言ってない気がする。ひかえないと。
しかし事故にかかわっておいて人の悪口しか考えられないとか、どんだけ俺はクズなんだよ。いや、今はそれを考える時間じゃない。
「・・・それで、なんでおれはこんなところにいる」
「それなんだ。別にあの子たちが生涯独身だったり、何もしたりしなければそのままでもよかったんだけどね、実はあの子の子孫が未来で合計何千もの人を救うはずの人だったんだ。それがあそこで死んでしまったら修正がいろいろと面倒なんだ」
ま~確かにもともと決まっているものを何世代にもわたって修正すんのは面倒なんだろうな。
「簡単にいうと時間を戻してあげるってこと」
「ほんとか!?」
なんだと!?なんてありがたい提案なんだ。神様に見える。
やったね。これで俺は払えそうもない借金に一生苦しむことにならずに済む。
___いや待て、なんで俺はテンションを上げてんだ、事故を起こしておきながら。
これだから俺はクズなんだ。
いかん、またこの思考だ。ポジティブ、ポジティブ。ま~やり直せるならそれはありがたいことだな。
「もちろんただでとは言わないけどね。本音を言うとね、ぼくたちはただでは時間を戻せないんだ。それに見合った代償を払わなくちゃいけないんだよ」
「まて。なんでその代償をあんたじゃなくて俺が払わなくちゃなんないんだ?そのシステムとやらに侵入されたのは俺のミスじゃないだろ」
「そこは善意でやってくれよ。確かに君の言うとおりだけど君があの時あんな行動を起こしたから、あの子たちは死んでしまったんだよ。ぼくはほかの世界の管理もあって時間がないし、少し面倒なだけで時間を戻さないでもいいんだよ?このままじゃ嫌だろ?というかまずぼくは君のために時間を戻すんだから、君はぼくのために何かするのが君たちの世界では当然だろ?」
「・・・はぁ。ま~やるかどうかは後で決める。やるとしたら何をすればいいんだ?」
確かにこのままよりはその代償とやらを払った方が俺にしてもこいつにしても得なんだろう。とりあえず聞くだけ聞いてみるか。
「端的にいうと、この世界にいる魔王を倒してきてほしいんだ」
一つの世界を引き寄せながら彼はそういった。
「は?」
ここにきて2度目の何言ってんだこいつ。魔王とか。それなんてラノベ。さっきまでの思考が吹き飛んでしまった。
「この世界には今魔王がいる設定になっているんだけどね、ちょっとこの魔王がやらかし過ぎてるんだよ。だからこの魔王を倒してきてほしいんだ。まぁ、君たちの国ではよくある話だろ?異世界ファンタジーなんて」
手に浮かべた球体を回し、ニヤニヤしながらそう言う。
「だがそれはその世界にいる奴らがどうにかするものなんじゃないのか?」
なるほど、RPGの世界か。内心少しワクワクしていた。というより既に妄想を始めていた。
異世界物の基本である主人公チート、ハーレム、これ勝ち組じゃん。ついに俺にも光が。自然とほほが緩む。
「ん~、あんまり言えないことなんだけど、この世界に魔王を送った奴がぼくの世界の設定をいじくった可能性があるんだ。それを調べるためにも君にそいつの注意をひきつけてほしいんだ。自分を貶めた奴に反撃くらいはしたいだろ?」
「・・・なるほど、それでか」
「うん。君は異世界を満喫して魔王を倒し、元の世界に戻った時はあの事故はきれいさっぱりなかったことになっている。どう?」
「・・・わかった。やってやるよ。」
一応ためらうふりをして俺はそう答えた。
頭の中では、すでに目の前に魔王がいる。パーティーメンバーはもちろん、ぐへへ。
「そういってくれると思ってたよ。ただあんまり異世界人であることは口外しないでね。それじゃあ送るね。あっ、それと記憶と言語能力くらいはぼくの方で何とかしてあげるよ。それじゃあ送るから目をつぶって」
そういうと彼はおもむろに手に浮かした世界を動かし、ぶつぶつと唱える。
まさかほんとに俺が異世界ファンタジーを体験できるなんて。
これはもう主人公チートが確定したな・・・そう浮かれながら目を閉じる。
と同時に鼻に水が入った時のような、ワサビを食べ過ぎた時のような、アイスを一気に食べてしまった時のような頭痛がして、どうしようもなく顔をゆがませ頭をかく。
直後、足場が消え、冷汗がドバっと出て、心臓がヒヤッとしたがそこで意識が途絶えた。
「ちょっと!なんで勝手に人よこしてるのよ」
どこから現れたかわからない白い髪の少女が白い髪の男の子に近づきながら言う。
「あぁ、悪い悪い。でもこれも必要なことなんだよ」
「そんなこと言いながらどうせただの暇つぶしなんでしょ?いつになったら私にくれるの?いい加減あきらめたら?」
「そう言えなくもないけど、違うといっておくよ。それにあれはもうほとんど君の物みたいなものじゃないか」
「あなたが邪魔しなければね」
「ごめんね。あ~それと、彼を殺さないでおくれよ?じゃないと彼を元の世界に戻せなくなってしまうからね」
「わかってるわよ」
白い空間に白い髪の色をした2人が話をしている。その静かな空間にただ彼らの声だけが響き渡っていた。




