これからの予感
先のインターネット網の断線事件については、どの調査機関が調査しても、全く判別しなかった。
その情報の発信源となるべき量子コンピューターは、情報の該当なしという返答をかえすだけだ。
当然であるが、彼らは、先ほど戦った戦闘については、完全に彼らのみが知ることである。
ログを見る場合、閲覧権をゲンガー、欧州連盟、影法師の3つ全ての承認が必要であると定めたため、一般や研究者を始め、彼ら以外が閲覧することはほぼできない。
ロシア、シベリアにおいて。
ゲンガーの妨害によって出来なかったサーバー群の再起動式典が、盛大に執り行われている。
その光景を、ホワイトハウスでは苦々しく見ていた。
大統領は、わずかに白髪混じりとなった頭を右手で支えつつ、頬杖のような形で、机に据え付けられているクラシカルなブラウン管風液晶テレビを見ていた。
再起動式典は、ネットにより、全世界同時生放送となっていた。
月に住む住民も、きっと眺めていることだろう。
「ゲンガーは失敗したのか」
「いいえ、成功しなかった。というだけです」
秘書長が話す。
大統領は、それを細かく突っ込んだ。
「成功でなければ失敗ではないのかね」
「いえ、大統領閣下。我々は、彼らの式典を止めることはできませんでした。一方で、彼らも、我々を潰すことができませんでした」
「何かあったのかね」
「はい、大統領閣下」
秘書長が、そっとA4サイズの封筒を大統領へと差し出す。厳重に封がされ、さらには「国家最重要機密」というスタンプまで押されている。
「……ほう」
大統領はその封筒から二つに折りたたまれた紙を一枚取り出す。
「我々は、ただ、運が悪かった。そういうことでございましょう。次は勝てる、そう私は分析いたします」
「日本皇国、それに欧州連盟ときたか。彼らはこのことを?」
「当然、知っていると思われます。少なくとも、そのような前提で話を進めても、問題ない程度には」
秘書長が話す。
大統領は、秘書長からの報告を聞き終わると、命じた。
「このことは、代々の大統領に伝えていかなければならない。君がそのことを知らせたまえ。サイバー戦争は、これらからだと」
「はい、大統領閣下」
秘書長が敬礼すると、その封筒は厳重な保管庫としまわれた。
どんな封筒だったのかはわからない。
だが、今後も、ゲンガーと影法師は、戦わなければならない運命にあるようだ。
夜、北米条約ではそんな思いが満ち溢れていた。




