諸条件
諸条件は、次の通りとなった。
まず、筐体を直接攻撃するような、物理攻撃は厳禁とする。
次に、舞台は第3者が提供する空間とする。具体的には、アフリカにある仮想空間サーバーらしい。
欧州連盟が創りだした、現在試運転中の量子コンピューターらしい。
そして、武器は無制限、防御も無制限となる。
時間制限もない。
ただし、おそらくはそれ以前に双方とも終わると考えているが、24時間経った時点で勝負がついていなければ、引き分け。
再試合は無しとなった。
また、時間はGMT、すなわちグリニッジ標準時において0時ちょうどに試合が始まることになる。
最期に、これの勝負の結果について、何ら文句を言わないということと、互いにクラッキング、ハッキングをしないことを確かめた。
「……以上の条件でいいですか」
ゲンガーが影法師に尋ねると、うなづいた。
「では、こちらに署名を」
そう言うと、羊皮紙が現れ、ゲンガーの手元から自然に影法師の手の中に収まる。
空中から取り出した万年筆を使い、影法師はその羊皮紙に署名を行った。
「……電子署名を確認。では、次会う時を楽しみにしていますよ」
「ええ、こちらも」
影法師は、万年筆を服の内ポケットに入れ、ゲンガーのところの喫茶店から離れた。