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エッチな、Hな話

死後の体験 この世とあの世と天国と地獄

作者: 天本有泉

ちょっとだけえっちな記述があります。それほどめくじらを立てることはないと思うのですが、弱気な作者としては、R15としました。

霊魂になっても、えっちなところは残るわけですが、きっとこの霊魂は、エロが好きなんでしょうね。エロいのはちょっとという方は、読まないでください。エロを期待する方は、ちょっと物足りなく思いますが、、、

○ある日死んだ

私は、ある日、死んだ。どうして死んだかは記憶が飛んでいてて、思い出せないが死んだことだけは確かなようだった。

死んだあとに、自分の遺体を取り囲んで、葬式が行われていた。私は、それを上から見ていた。泣いているものや、笑っているというか笑いを抑えているもの、めんどくさそうなもの、義理で来ているもの、さまざまだった。

自分の体に戻ろうとしたが、無理だった。まるで、他人というか、死体そのものというか、取り付く島がなかった。

やがて、自分の体が火葬場へいき、燃やされ、骨になったようだった。もう帰る場所はなくなったのだった。


○死んで、体がなくなっても意識は残る

自分は、体はなくなったのだけれど、なんだか意識は残っていて、こういうのを世間では、浮遊霊とかいうのだろうが、別に、誰かに強い恨みがあるわけでもなく、まあ、嫌な奴は数人いたように思うが、呪い殺したいとか、そこまでの恨みはなかったように思うし、いやなことだから忘れたのか、それもあったのか、そもそも覚えていない。

浮遊霊というのは、透明人間みたいだ。そういえばそうだな。昔、透明人間だったら、やりたいことがあった。女湯に入るというのがあったなあ。


○浮遊霊の状態

死んだとき、どういう状態になるかって、ちょっと不思議だったのだが、体が軽くなるわけだ。だから、ふわふわと浮くことができる。天井ぐらいの高さまでは簡単に行けるし、ドラえもんのタケコプターを持っているとでも思ってくれ。もっともプロペラはついていないけど。歩く速度位で、上下することはできる。でも、そんなに高くまではいけない。せいぜい天井くらいまでだね。また、人間やビルや車も素通りで、ぶつかるということはない。だからっていうか、人間にさわることはできないわけだ。影を踏んでいると思って想像をたくましくしてくれ。相手には、私がいることはわからない。あと、ワープすることはできるようだ。自分の行きたい場所を念ずると、そこへワープできるようだった。だから、いつもいっているスポーツクラブだとか、職場だとか、学校だとかは、イメージを思い浮かべれば電車やバスに乗らなくてもいけるようだった。


○女湯に入ろう

せっかくなので、子どものころに入りたかった女湯にでも入ろうかと。体はないのだからもう男ではないのだが、意識はまだ、男だ。死んでも意識は残っていて、だからって、やることもなく暇なわけだ。最近は、すっかり街には、女風呂は減ってしまった。スポーツクラブの女子更衣室に併設されているところが狙い目だね。行きつけのスポーツクラブの女風呂にでもいくか。そして、イメージを浮かべて、一気にワープ。慣れてくれば簡単なものだ。電車に乗らなくていいぶんらくだ。そして、女子更衣室の前にたつわけだ。どうどうと歩いて女子更衣室に入っていくこともできるわけだが、なんだか恥ずかしいので、天井くらいの高さから、浮遊するようにして入ることにした。どきどきするよな。昼間の時間帯だったので、ばあさんが多いのだが、たまに、見ても目の保養になりそうなおなごもいるわけだ。盗撮ビデオというか、どうどうとだけど。おなごが着替えているのはなんとも眺めのよいものだ。服を脱いで、ブラを出して、ブラをはずして、乳をだして、母乳まではでないけどね、若いおなごはよいものじゃ。

「生きかえりますな。」

するとそのとき、「死んでいるだろうが」とつっこみを入れるものがいた。


○仲間がいた

死んで浮遊霊になって、別に悪いことをしたいわけではないのだが、暇だ。

知り合いのところへいっても別に向こうはこっちのことはわからないのだし。呪い殺すほどの奴もいないし、実際、呪い殺すにしても、相手はこっちが見えないのだし、なぐったって、すり抜けるのだし、そいつにつきまとったって、結構、胸糞の悪いものだし。

それにだ。浮遊霊となっているのが、自分だけというのもなんだか寂しい気持にもなる。


○つっこみを入れた奴と会話する

奴「ここは、はじめてかい?」

私「葬式が終わったばかりだ。こんな状態になったから、女風呂でも覗いてやろうと。」

奴「じゃあ、あと40日ぐらいだね。」

私「え、あと40日って?」

奴「死者の霊は、亡くなった日から7週間(四十九日間)はこの世とあの世をさまよっているわけだ。だから、四十九日法要とか忌明けとかいうだろ。死ぬと生きている時間と違って、すぐに日がくれてしまうのさ。だから、葬式が終わったばかりだと思っているようだが、もう一週間はたっているようだぞ。」

私「このあとどうなるの?そして、君はだれ?」

奴「おいおい質問はひとつずつにしてくれ。死んだあと49日が過ぎると、閻魔大王のもとへ行き、地獄へ行くか、天国へ行くかを決めるわけだ。そして、おれは、お前の指導霊だ。」

私「指導霊?」

奴「指導霊なんていうとなんだか偉そうだが、先祖霊ってやつだね。ひとりぼっちじゃ寂しいだろう。いちおう、お前のおやじのおやじだ。お前が生まれる前に、死んでいたので、指導霊になれたわけだ。」

私の親父の親父、つまり祖父は、1945年の終戦間際、ビルマ戦線で死んでいるので、当然、私とは面識がない。親父もまだ、小さくて、かつ戦争ばかりに駆り出されていたので、父親の思いではほとんどないようだった。

私「閻魔大王はどうやって天国行きか、地獄行きか決めるの?」

奴「生前の行いをみて、天国か地獄を決めるといわれているけど、結構適当なんだ。この世では、極悪人とされているのが、天国にいたり、この世では善人で通っていたのが地獄へ行ったりと。たまにいれかえもするし。」

私「これからなにをしたらよいのかな」

奴「たいていのものは、自分が世話になった人のところへ挨拶がてら行くものだけどな。」

私「実は、最近の記憶が飛んでいて、何で死んだのか、最近、誰にあったのか、よく思い出せないんです。ここは覚えていたけど。」

奴「そういうことはよくあることさ。無理に思いださなくていいんだ。」

私「ただ、あなたのことは、父から聞いていて、覚えています。」

奴「それは、光栄なことだな。」

私「どうしたら、あなたのようになれるのですか。」

奴「それもおいおいわかるさ。それと、40日間なんてあっという間さ。」

私「父や母がいたことまでは、思い出せるのですが、それから、結婚したのかどうかとか、子どもがいたとかいないとか、どんな仕事をしていたのかとか、学校の友達とか記憶が飛んでいるのです。」

奴「よくあることさ。もう肉体はないのだし。死ぬってことは、これまでの因縁と別れるということなんだから、別に覚えている必要もないのだけどね。忘れたなら忘れたでいいんだよ。」

私「でも、なんとなく覚えておかないといけないような、思い出せないのがもどかしいというか。」

奴「そのうちそういう感覚になれてくるんだ。」

私「ここのスポーツクラブに来ていたことは覚えているんですが。」

奴「それでいいんだよ。記憶なんてものは、実はうつろいやすいものなんだ。頭を強く殴られると、結構飛んでいくし、酒を飲んだり、年をとったりすると、どんどんと脳細胞が壊れていくしな。もっとも、もう、脳細胞なんてないんだけどね。」

私「でも、自分が自分であるという意識だけはまだあります。」

奴「そう。これはなかなか消えない。これを我執(がしゅう)といって、これがあるうちは、悟れていないという坊さんもいるけど、ほんとうはこれこそが本質なんだよ。」

私「本質?」

奴「自分がじぶんであるということさ。よくいうだろ。死んでも魂は残るって。そう君は、今、まさに、魂の状態なのさ。」

私「よくわからないな。」

奴「ちょっと難しかったかな。まあ、そのうち、おいおいとわかるさ。」


女子更衣室では、女たちが着替えており、裸になった女たちは、風呂へ向かっていった。女の裸をみながら、先祖霊と称するものと妙な会話を続けた。記憶がほとんど残っていない自分としては、こいつだけが頼りといえば頼りだった。でも、ほんとうに、俺の味方なのかどうかはわからないが、、、


私「自分が自分であることが大事ってことなら、自分の記憶を思い出すことも大事なことなのでは?」

奴「気付いたね。そういうことさ。でも、急には思い出さない方がよいことや、順番を踏んでから、解った方がよいことが数多くあるのだよ。記憶が途切れているのには、なにかわけがあるはずさ。」

私「知っているなら教えてよ」

奴「残念ながらそういうわけにはいかないのでね。あくまでも、私の役割は、君をサポートすることなんだよ。答えは、自分で、悟らなきゃならない。もっとも私といえども、君のすべてを知っているわけではないのだしね。」

私「じゃあ、あなたならこういうときどうするのですか。」

奴「待つのさ。それに、ヒントは君の無意識の行動のなかにあったりもする。」


更衣室には、おなごがいなくなり、なんだかつまらなくなった。

私「女風呂へいきませんか。」

奴「行きたい所へいっていいし、消えろといえば消えるし。」

私「いやでも、また、いろいろと教えて欲しいし。やっぱり、一人は心もとないし。それに、今のぼくには、女の裸ぐらいにしか興味がなくて。」

奴「わかった。付き合おう。もしかしたら、女の裸が実は、記憶のカギかもしれないしな。」

私「女の裸は嫌いなんですか?」

奴「好きとか嫌いとかの問題ではないんだよ。まだ、君は死んで間がないから、無理もないが、男であることと女であることにそう違いはないというだね。男の体というのは、女の体の変異体でね。女のからだがまずあってね、Y染色体によって、女のからだが男へと変化していくわけだ。生殖ということを除けば、女を男が好きになる理由もないといえばないのだがね。」

私「そんなもんですかね。」

奴「まあ、これもおいおいわかるがね。」

しばし、女の裸の鑑賞をすることにしたが、なんだかいまいちって感じだった。そりゃそうだ。もっと、モデルみたいなきれいどころのお姉ちゃんの裸がみたくなったし、女がセックスしたり、エッチなことをしているものも見たくなってきた。

奴「もっと刺激的なところへ行きたいか?」

私「いきたい、いきたい。もっと美人の裸がみたい。」

奴「では、いこう。」

奴に連れられて、刺激的なところへ行った。美人の裸が山のように、女のからだ、セックス、あそこ、モザイクもなしに見たいだけ見ることができた。自分の体は、ないけど、ペニスに相当するものは、想像すれば堪能できる。それはそれで、よいのかもしれないと思えた。でも、なんだか物足りない。なにかもっとこう大事なことをやらなくてはいけない気がしたのだが、それが、なにだったのか、思い出せない。とりあえず、ここは、楽園なんだろうと思った。

「おらは死んじまっただあ。ねえちゃんはきれいだし。裸も見放題だし。」

半分、歌いながら、半分、酒でも飲んで酩酊しているような気分になった。

でも、自分が、自分の過去を思い出せないのはもどかしい。

私「ここは天国なの?」奴に、聞く。

奴「ちがうよ。まだ、閻魔大王の審判をうけていないだろう。」

私「過去のことが思い出せないのがもどかしいぐらいで、毎日、美女の裸でも見ながら過ごすのは楽しい。ずっとこうありたいのだけど。」

奴「まあいいさ。でも、もうあまりここで滞在する時間は少なくなってきたぞ。」

私「そういわれると、なんだかもっといたくなるけど。」

奴「閻魔さんにお願いしたらどうだ。」

私「案外そんなことをいうとへそを曲げるのではないの?結構、ひねくれてんじゃないのかな。」

奴「さてどうかな?よくわからないな。」

結局、女の裸を見続けて、49日は過ぎてしまい、閻魔大王の前に引き出されることになった。


○閻魔大王による審判

閻魔大王「よく来たな。では、お前、自己紹介しろ。」

随分と尊大な口を聞くものだと思ったわけだ。お前なんて、失礼だな。

閻魔大王「ようこそいらっしゃいました。自己紹介をお願いします。」

え、こいつおれの心が読めるのか?気持ち悪いなあ。でも、自己紹介って、まずは、自分から名乗れよなあ。

閻魔大王「申しおくれました、私は、閻魔大王でございます。私の決定に随い、あなたさまを地獄もしくは極楽へと導くこととなります。」

げー。

私「私は、自己紹介をしたいのですが、名前もなにもすっかり忘れてしまい、父と母がいたことと、スポーツクラブへ通っていたこと、父の父、すなわち祖父が、ビルマで死んだこと、そして、その祖父がさきほどまで、私の指導霊だったことぐらいしか覚えていないのです。」

閻魔大王「嘘をいっていないのは、わかっているのだが、まあ、よい。とりあえず正直に話したから、天国行きとしてやろう。」

まあ、よかったようだ。天国へ行けるなんて、嬉しいね。

祖父「よかったね。とりあえず、天国へ行こう。」

あっさりと、天国行きが決まり、あっけない。でも、「とりあえず、天国へ行こうって、なにか気になる。」

祖父「ついてくれば、とりあえずの意味はわかるよ。」

祖父につれられて天国へと向かったというか、ワープした。


○天国

祖父「さあ、ついた。ここが天国だ。」

天国?真っ白で、なにも見えない。

祖父「そうこれが天国なんだ。」

え、え。

祖父「なにもないのが天国なんだよ。」

私「それって、どういうことなの?」

祖父「天国というのは、悟りの境地なんだ。悟るというのは、自分の存在を宇宙と一体化して、自分の意思が宇宙の意思と、宇宙の意思が自分の意思になることで、、、、」

なんだか眠くなってきたな。哲学の時間みたいだ。ZZZ。

祖父「やっぱり無理か。」

私「無理って?」

祖父「天国はねえ、なにもない世界なんだよ。それでいいって人もいるんだけど、大抵の人は、物足りなくなるんだよ。ここには、争いもなく憎しみもない。けど、喜びを感じることができる人は、ごく少数なんだ。まあ、その少数が聖人といわれる人たちなんだけど。」

私「聖人なら、こんなところで、のほんと、自分の安全を確保して、のんびりと暮していていいわけ?聖人こそ、地獄へ行って、愚かなる衆生を救わなくていけないのではないのかな。」

祖父「よく気がついたね。そのとおりなんだ。」

そして、祖父は、悲しそうに、上をむいて、涙ぐんでいた。

祖父「褒めてあげるよ。でも、今、君が言ったことはね、君自身が実行しなくてはならないんだよ。多くの聖人君主たちもね、同じように感じてね。感じたら、やらずにはおれないのだよ。でも、結果は、悲劇的な結末が多いのだよ。特に、キリストなんかはね、磔にされてね、、、」

私「え、私も磔にされるの?」

祖父「そうときまったわけじゃないんだけど。自分で言ったからには、天国を捨てて、地獄へ行かなくてならないんだよ。」

私「え、聖人君主でもないんだけど。」

祖父「でも、悪人じゃないし、嘘もつけないし。それに、なによりも大事な正義感は持っているわけだし。」

私は、なんだかしまったなと思ったが、後の祭りのようだった。「ここにまだいたいんだけど」

祖父「いたいなら、いてもいいんだけど、結局は同じことさ。ここは、なにもない。なにもないことが、魂の安らぎといえばそうなんだけど。地球上でいえば、刑務所の独房みたいものさ。」

私「やっぱり地獄なんて嫌なんだけど。せっかく天国へ来たのだし、なにもないからって、地獄よりはましなんでしょ。」

祖父「そうでもないさ。地獄には地獄のよさもあるんだよ。」

私「でも、でも、地獄へ行くなんて怖いし、、、」

祖父「じゃあ、いい方法がある。」

祖父は、私に、ゲームボーイを渡してくれた。

私「デームボーイ?」

祖父「そう。地獄を体験できる。ゲームとして、とりあえず、地獄を感じたらどうかな。いやなら、途中でやめることもできるし。このなにもないところで、ぼっといるのも、結構、退屈だろ。」

確かにそのとおりだった。ここは、なにもなくて、退屈でしかたがないし、だからといって、地獄へ行くなんて、なんだかおぞましい。でも、この退屈さから、少々逃れられるのならそれは楽しいかも。


○ゲームの中の地獄

ゲームをやることにした。どうせ退屈だし。格闘技ゲームだった。ボタンを押して、相手をパンチ、キック、チョップとよる。しゃがんだり、飛んだりして相手の攻撃をかわす。それを繰り返す。なぐっても、なぐられてもいたくもかゆくもない。ただ、ダメージによって、体力が減っていってゼロになると、ゲームオーバー。最初の相手は、ノロマで弱く、簡単に勝った。勝つと、点数が増えて、お金も増えて、ポイントもたまる。次の相手は、少々強く、ダメージも受けたが勝った。なんのことはない。ただのゲーム。え、これが地獄とどう関係があるのかな?

祖父「地獄では、こんな感じさ。みんなゲーム感覚で、格闘ゲームでもやっていると思えばいいんだよ。今二人倒したけど、倒した二人に、憐れみもなければ、なんにもないだろう。倒して幸せだろ。」

確かに、そのとおりだった。退屈しのぎに、ゲームで遊んだ。ただ、それだけだった。

祖父「地獄はそんなところなんだよ。痛くもかゆくもないんだ。感覚がないから。そして、ゲームを続けるだけなんだよ。そして、ゲームに勝てば、お金ももらえるしね。」

なんだか地獄の方が楽しい気がしてきた。だけど、痛いんじゃないのかな?

祖父「それは、感受性の問題さ。感受性が強いと、勝手に想像してしまって、痛くもないのに、痛いと感じてしまうわけだ。」

私「げー。もし、僕が感受性が強ければ、痛いってことだよね。」

祖父「そのとおりさ。」

私「それなら、文字通り地獄じゃないか。」

祖父「はははは。最初だけさ。感受性が強くても、痛いのは最初だけさ。しばらくたつと、なんとも感じなくなる。」

私「でも、そんなじゃ、人類救済とかにならなくて、ゲームとしての殺し合いに参加するだけじゃないのかな。だれも、仏心どころじゃないじゃないか。」

祖父「そうだよ。でも、最初に戦ったキャラ弱かっただろ。あれは、聖者のなれのはてさ。」

私「確かに弱かった。単に下手なのかなと思っていた。」

祖父「そういうことさ。地獄へ行っても、聖者は受け入れられずに、単に、最弱のキャラクターとして、登場するだけさ。」

私「それじゃ、聖者が聖者として、地獄へ行ったとしても、結果として、やられるだけで、意味がないじゃないの。」

祖父「そのとおりさ。よく気がついたね。」

私「じゃあ、聖者として、地獄へ行ったって、救いにはならないし、ただただ、ゲームとして、ゲームをつづけることにしかならないじゃないの。」

祖父「そのとおりさ。でも、みんなゲームで遊ぶだろう。」

私「ゲームと人生は違うよ。」

祖父「そうかな。ゲームと人生と一緒というのが多いんじゃないのかな。みんな寸暇を惜しんで、ゲームに没頭しているようにみえるけど。」

私「うん。確かに、ゲームはするけど、ゲームと分かっているから、格闘技も楽しめる。でも、これが本当の殺し合いだとしたら、それは楽しめないよ。」

祖父「実は、おんなじことなんだよ。生きているときは、ゲームと、本当の殺し合いは違うことは、区別できるけど、死んだ世界では、違いなんてないんだよ。」

私「それは、死んでいるからで、、、あ、そうか、僕は死んでいるだった、、、」

祖父「死んでいる。だから、ゲームも、地獄での殺し合いもおんなじなんだ。地獄での殺し合いは、もっとリアリティがあるけどね。いまでは、ゲームも随分進化して、リアリティのあるゲームが増えてきたから、だんだんと区別がつきにくくなっているかもしれないけどね。」

私「なんか割り切れないんだけど。生きていた時の記憶がないっていうのも、なんだかと思うし。」

祖父「やっとわかってきたね。」

私「え、どういうこと?」

祖父「生きるって意味さ。生きるってことは、昨日と同じように、今日、明日を過ごすことではないんだよ。」

私「そんなのわかっているよ。」

祖父「わかっているようで、わかっていないんだ。昨日と同じように、今日、明日を過ごすことが実は、人生の大部分なんで、そのことを大抵の人は、悪いと思わない。また、それでいいと思うし。細かく見ていけば、昨日と今日と明日で、食べるものも、着るものも違うから、違うことをしたと思うかもしれない。でも、それは、同じことなんだ。」

私「同じこと?」

祖父「死んでみると、わかるだろう。食べる必要もないから、食べ物には困らない。別に、着る必要もないから服もいらない。」

思い返してみれば、ここ数日、女の裸をみたり、ゲームをするばかりで、食べるだの、着るだのに、関心がなかった。

私「じゃあ、なにをすれば生きているってことになるのかな。」

祖父「ちょっと前に気付いたんじゃないのかなあ。」

私「ああ、そうか、聖人だったら、地獄にいって救済するってことなんだね。でも、地獄じゃ、ゲームの最弱キャラに過ぎず、ただ単にやられて終わりってことだったよね。」

祖父「そうさ。」

私「じゃあ、生きているうちに、なんらかの形で、人類を救済するのが、望ましいってことになるね。

でも、僕は死んでいるから、関係ないっていえば関係ないんだろうけど。」

祖父「そのとおりだ。」

祖父は、力強く、頷き、遠くをみるような目をしていた。

そして、言った。

祖父「再試験合格。」

私「どういうこと?再試験?」

祖父「記憶が消えていたのはどうしてかわかるか?」

私「え、え、え。不合格?!だった。」

祖父「そのとおりだ。」

なんとなく、思い出してきたような気がする。

私は、大学合格をめざし、両親の期待などなどを背負い、大学受験をしたが、残念ながら、不合格だった。なんだか、生きていても仕方がないと思いつめて、自殺した、、、

祖父「ちょっとずつ思いだしてきたね。大学に不合格を取り消して、合格させることはできないけど。君の人生の時計の針を戻してやることはできる。自殺するちょっと前の時間までだけどね。」

私「それって断れるの?」

祖父「断れないし。たとえできたとしても、ここで、ゲームボーイを続けるか、地獄で、もうちょっとリアルにやるかだけど。」

私「。。。。」

祖父「そうだろう。ここでの生活は退屈さ。この退屈さになれて、この退屈さが苦にならなくなれば、ここはいい世界だけど。それはまだ、君には無理のようだね。」

そのとおりだと思った。確かに、ここにいても退屈だし、地獄は、気晴らしのゲームではあっても、なんだか心は晴れない。

私「人類救済っていったいなにをすればいいのかな?」

祖父「それはそう簡単にわからないけど、人ひとそれぞれの役割があるんだ。人の能力には、得意不得意があってね、向き不向きもある。でも、それぞれの役割を模索しながら、全力で取り組んでいくと、ある日、ふっと、自分の役割みたいなものをつかむことができる。そうたいしたことはできないかもしれないけど、それを積み重ねていくことが大事なんだよ。」

私「あなたみたいになりたいと、、」

祖父「そうもいっていたけど、まだまだ、修行が足りないぞ。まだまだ、学ぶべきことはあり、経験すべきこともある。そして、それは、残念ながら、ここではできないことなんだ。」

私「。。。」

祖父「また、ヒトの評価は様々でね、毀誉褒貶というか、生きていると、いくら良いことをしても、悪くしか言わない人も少なくない。人は、自分というフィルターを通じてしか、物が見えないからね。だから、悪い人間からすれば、どんなこともわるく見えてしまうものなんだよ。だた、悪い人間というのが、厄介でね、悪いかいいかは実はよくわからない。あるほうからみると、大変、悪いけど、別の方からみるといい人だったりするかね。」

私「、、、それって、自分のことですか?」

祖父は、私には、死後、いろんなことを教えてくれたし、親切だし、一緒におればきっと尊敬もできる人だっただろう。でも、ビルマ戦線では、なんにもの人たちを殺しても来たんだろう。

祖父「そうといえばそうなんだろうな。でも、私だけじゃなくて、よくよく観察すると、ほとんどすべての人にあてはまるんだ。だから、善だ、悪だという見方に固執するとものがみえなくなることがあるんだ。君の場合は、善が前面に出すぎるという傾向があって、それは悪いことではないんだけど、それは、いろんな意味で、もがき苦しむ原因にもなるわけだ。」

私「なんだか、そんなこともあったような、、、」

昔、学校でいじめがあった時、なんだか許せなくて、注意したら、今度は、こっちがターゲットにされた。誰も助けてはくれなかった。その後、人なんて、信じられなくなり、あんまり交わらずに、暮らすようになった。

祖父「すこしずつだけど、記憶が戻ってきたようだね。君は、正義感というかが強いんだ。それは、それで、大事なことなんだけど、今の下界ではそれだけで生きていくことは難しいんだ。正義感が強いことはいいことだけど、それに匹敵するくらいの知恵を身につけないと、君の正義は実現することもなく、つぶされることになってしまうわけなのさ。」

祖父「まあ、そうはいっても、人なんてものはそう簡単にかわれるものではないけど、ある日、劇的に変化することもあるんだ。だから、私はね。『人の評価は様々だけど、自分として最高のものを、最高の行いをしよう、そのときに与えられた条件、能力でできる限りのことをしよう』と思うことにしているんだよ。」

祖父「それにね。下界は、詭弁をろうするものや、いい加減なことを勢いだけで言う人が、繁栄して、正直に地道に生きる人が搾取される構造が実はあるけど、よく目を見開くとね、いろんなことが見えてくるんだ。真実を見極めるんだ。真実を見極める勉強というものをしてほしいんだ。ややもすると、日本における学問は、外国の翻訳学かと思えるものも少なくないし、弁護士なんて、現代版のソフィストかと思える者たちも多い。今の政治家は、デマゴーグばかりで、大衆をあおっては、また、大衆の方も、「パンとサーカス」だとばかりに甘い政策、かっこいい言葉にころっとだまされているようだけど、真実を捕まえるんだよ。現代のソクラテスになれってね。そのためにしっかり勉強をしてほしいんだ。ただの受験勉強じゃなくてね。受験勉強をするときにその視点を忘れずにやってほしいんだよ。」

祖父「それから、自分にしかできないことをみつけてね。それを必死になってやりとげてほしいんだ。たとえ、それがお金にならなくてもね。お金にならなくても価値のあることはいっぱいあるんだよ。それをつかんでほしいんだ。」

祖父「君は、人に媚びへつらったり、右顧左眄することは苦手かもしれないけど、下界では、人と人で、共同作業をすることが大事になってくるんだよ。そのときに、媚びへつらいや右顧左眄が実は、マネージメント力と言われることになるのも、覚えておくがいいよ。」

祖父「今後、不本意な仕事を押し付けられることもきっとあるし、また、心と体のバランスを壊すこともあるだろうけど、そのときは私と出会ったことを思い出してほしいな。」

祖父「下界で生きていくときに、大事なのは、他人にとって必要な能力を身につけることさ。」

祖父は、いろんなことを僕に託そうと、必死になってしゃべり続けてくれたけど、だんだんと、僕は、祖父のもとから去らなくてならないようだった。

そして、大学受験に失敗して、自殺する前の状態まで戻ることになった。そう浪人生として、今後の人生を生きていかないといけない。人類救済、正義感、智恵を身につける、ヒトのために役に立つこと。自分にとってできること、自分にしかできないことを必死になってやり遂げるために。でも、そのためには、必死になって勉強すること。受験勉強だけど、その背景にある、真実を見極める努力を続けるということ。ヒトとヒトで共同して作業をやりとげるということ。祖父から、いろんなことを教えてもらった。でも、どこまで血肉化できたかはわからないけど、なんだか貴重な経験であったことは間違いないだろう。「小説家にでもなろうかな?」「お金儲けしたいから経済でも学ぼうかな?」と漫然と考えていた僕に、祖父のことはは重くのしかかることだろう。










えっちな記述と、主人公の関係をどうまとめようかと悩みました。きっと、受験勉強ばかりで、女の裸も知らずに、勉強まっしぐらで、不満がたまっていたんでしょうね。女の裸をみれば、少しは生きる希望がわいてきてということなんでしょうがね。私は、受験勉強の名を借りて、英語版のエロ本ばかりを読んで、英語力がかなり向上した覚えがあります。faceが顔だけでなくて、お尻の俗語で使われていたのにはびっくりしましたが。

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