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勇者と少女と変化の指輪  作者: 山口瑛史
変化の指輪と勇者
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旅立ちと再会

「行っちまったなぁ」

「ええ、行ってしまいましたね」

ソーディアムのお城の中のバラックとアーシャである。二人は、娘を見送った後の脱力感のようなものを感じていた。その後ロゼとの思い出話などをしていたが、ふと彼らの友人の話になった。


「エイタさん。明るくなりましたね。ずいぶん姿は変わってしまいましたけど・・・」

バラックは吹き出してしまった。

「やはり、お前にもわかっていたのか?」

「私たち魔族は、魔力で個人を判別するんです。すぐにわかりましたよ。旦那様は、真実の瞳でお分かりになっていたと思いますけど」

「ああ、なんか一生懸命女の子やってるあいつを見るのが面白くて放置していたんだが、ロゼのこと頼みたい気持ちとよっぱらった勢いで・・・」

「ああいうことは、そっとしてあげないとダメです。旦那様はその辺の機微がありません。でも、ロゼのこと頼めたのはよかったです。あれほど頼りになるお方を旦那様以外では、私は知りません」

「俺もエイタくらいは頼りになるか?」

「もちろんですよ。私の旦那様ですもの。ところで私、魔力が戻ってまいりました」

「ロゼを生んだ時に消耗したっていう魔族としての力か?」

「ええ、ロゼが10歳を過ぎたあたりから、力が戻ってくるのを感じていました。ですから・・・」

アーシャは赤面し下を見ている。

「俺は、頭がよくない。そこで黙ってしまうと、君がなにを言いたいかわからない」

「意地悪ですよ。旦那様。この力があれば、また産むことができるはずです。」

語尾はかなり小さくなっている。

「おぉ。すまん。つまりは」

娘が旅立ち暗かったバラックの顔に輝きが戻る。


この後、二人は子作りラブラブモードに突入。ロゼに弟か妹ができるのも時間の問題である。


人間の子供を宿した魔族の女は、自らの魔力で胎内の子供を傷つけてしまうことがある。自分の力を子供に移すことで子供を強化し子供を守る。そのことで、一定期間魔族としての力を失う。ロゼを生んだときに失っていたアーシャの力は戻り、また子供を作ることが可能になったのだ。



ソーディアムの国境超えて20㎞といったところ


私たちは、二人並んで馬車に揺られていた。

乗り心地は、はっきり言ってよくない。飛龍で飛んでいけば良いのだが、一応魔物である飛龍を他国で飛ばすのは国際問題になってしまいかねないので地道に馬車でキングダムを目指すことになった。移動魔法使うのもなんか違うしね。とにかく旅を楽しむことにしようっと。


「ロゼの戦い方はさっ。アーシャさんに似てるよね」

私が言うと、ロゼが少し驚いた顔になった。

「エリカっ。お母様が戦っているところ見たことあるの?」

「あっ、いや。おとーさんに聞いたことがあるんだけど。アーシャさんは魔力を力に変えて戦うんだって」

「魔力を・・・。そんな意識ないけど」

「うん。アーシャさんやロゼみたいな筋肉のあまりない女の人でも、魔力を込めることで、その筋力以上の力が出せるの。闘気なんて言って人間の戦士も少なからず魔力を使うんだけど、その使う魔力がけた外れに多いというか」

「お母様にもらった力かな?」

「うん。たぶんロゼは、魔力が人よりかなり多い。今は、魔法が苦手みたいだけど、学校行ったら魔法を習って魔法剣士とかになってもすごく強くなれるかもね」

「魔法剣士。。あまりピンとこないね」

「ロゼは、ファザコンだからなー。バラックさんみたいになりたいんでしょう?」

「ファザコン??まぁ。とにかくお父様には憧れるわ。できれば魔力なしで勝ちたい」

「もしそうなったら、ものすごくロゼがごつくなっちゃう?それは、美しくないよ」

「はははっ。そうだね。」

ちなみに、闘気による戦闘力強化は、勇者の強化魔法とは違い、瞬間の力を上げるもので、魔族が得意とする戦い方である。

「ロゼ、剣をとって。魔力の塊が近づいてくる」

ロゼの態度が引き締まる。

「わかった」


馬車の前方に人影が立ちふさがる。馬車は仕方なく停止する。

馬車を操っている御者が叫ぶ。

「邪魔だよ。どいてどいて」

人影は答えない。魔力の発散を感じる。不味い。

「おじさん。下がっていて」

魔法障壁を馬車の前に展開する。魔力の塊が飛んでくる。エレルギー弾って感じだ。

エレルギー弾は障壁に当たると霧散した。


「ほう。私の魔法を跳ね返すとは、お嬢さん何者ですか?」

人影が言葉を発する。

「あなたに名乗るほどのものではないですよ」

答えると、人影が人の形に変わっていく。肌と髪の色は灰色。身長はこっちの世界の平均的な大人の男で、やせ気味の体をしている。奴は魔族だ。


「ここは、下がってもらって二度と現れないでいてくれるとありがたいのですが」

提案してみた。魔族と戦って無事でいられるかわからないし、此奴がどれほどの強さかもわからない。

「そうはいきません。そこの御方。アーシャ様のお嬢さんでしょう?私はとある方からその御方を連れてくるように言われているのです」

「誰だ?」

魔族は答えなかった。

「というわけであなたは邪魔です。死んでください」

さっきより大きい魔力が収束していく。

こうなれば先手必勝だ。圧力魔法の魔法陣を描く。

魔族には、炎やら氷やらは効きにくい。爆裂魔法は効果あるが、この距離だと馬車を巻き込んでしまう。障壁で直撃はしないけど、馬を驚かせてしまう。

奴からエネルギー弾が飛んでくる前に、魔法を完成させる。

「くっ」

「つぶれてしまえ。えいっ」

さらに魔力を込めると、目の前の魔族はかなり苦しそうだ。

「やっ」

魔族にスキができたところを、ロゼが斬りかかった。

腹に致命傷を与えたようだ。

「油断していました。でも私の死は無駄にならない。うぅっ」

目の前の魔族は息絶えたようだ。

テレパシーのようなもので、此奴のとある方とやらに情報が行ってしまったかもしれない。

まっ、いいか。

・・・とはならないな。今回は、なんたってロゼが標的のようだし。

最大限、気を付けよう。元の姿に戻るべきか、いや、戻ってからすぐに敵が現れたら、魔力がほとんどなしの状態になり戦えない。ロゼへの説明も面倒だし。


それから、二日間は何も起きなかった。所々で雑魚魔物を軽く退治したくらい。

キングダムまであと1日程の距離になったころ、馬車の前の空間が歪みだした。


ロゼと私は、剣と杖を構えて臨戦態勢だ。

「おーほっほっほっほっ。アーシャさんの娘にちょっかい出しに来てみれば、ずいぶん懐かしいヒトがいるじゃな~い。」

現れたのは、筋肉マッチョで、厚化粧のオネェ。魔族の血色のなさを無理やり化粧でケバくしている感じ。とにかく気味の悪い魔族だった。

「・・・エリカ、あの人知ってるの?」

ロゼは、ドン引きしている。

「・・・うん。ちょっとね」


ヤバい。このオネェ様の名前はシャド。元魔王軍参謀長。魔王討伐時にいつの間にか姿を消していた。おそらく魔王軍の残党をまとめて、魔王復活なんかを企んでいるんだろう。


バラックに治らない呪いの傷をつけたのはこのオネェ様。

アーシャさんが魔王軍を裏切るきっかけを作ったのもこのオネェ様。

そして、勇者エイタはこのオネェ様に、強烈なアタックを受けていた。


「嬉しいわぁ。こんなに可愛くなったダーリンに会えるなんて」

ボクハウレシクナイデス。でも、ロゼからこのオネェを離さないと危険だ。


「場所を変えましょうか。」

「ええ。いいわ。積もる話もありますものね」


一人で、しかもこの姿で勝てるか?

でもやるしかない。







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