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勇者と少女と変化の指輪  作者: 山口瑛史
変化の指輪と勇者
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居候の毎日。


「エリカっ。今だよ!!!」

ロゼがスライムたちを、剣で牽制し魔法の範囲内に誘導した。

「よしっ、火炎放射~」

この魔法は、広範囲の炎系の攻撃魔法。スライムたちが焼かれていく。


「これで、このあたりのスライムも退治できたでしょ。お城に帰ろう」

ロゼが、額の汗を拭いながら言った。ちょっと張り切って温度あげすぎたかな。

スライムは、打撃系で倒すことが難しい魔物で、切ると分裂し、潰しても再生する。

そのため、魔法使いの少ないこの国の天敵といえる。

スライムが増えたときは、他国に援助を求めたりして討伐、駆除しているが、今回は数も少ないことから、放置していたようだ。魔法使いの少女の俺としては、家賃代わりに駆除を買って出たわけだ。

ロゼが、スライムを集める囮として手伝ってくれたので効率よく駆除できている。


「ただいま~」

「ただいまです~」

城に変えると、アーシャが迎えてくれた。

「お帰りなさい。来月は、ロゼの13歳の誕生日でしょう。また、あなたの旅立ちもあるのでパーティーを開くことにしたのよ」

「パーティー?そんなのらしくないよ」

「ま、特別よ。それでね、汗を流したら、これちょっと着てみせてちょうだい」

アーシャが持っていたのは、真っ赤なドレスだった。

「・・・そんなの着れないよ」

ロゼの顔が赤くなってる。

「いいから、いいから。そうだエリカちゃんのも作っておいたの着てみて。ロゼ。エリカちゃんと一緒ならいいでしょ」


ロゼは不服そうだが、基本的にアーシャの言うことには絶対服従らしい。前は、野菜が嫌いで食べないってバラックにはダダこねていたのに、アーシャにピシャっと言われたら渋々食べてた。

でも、アーシャも普段はあまりロゼの嫌がることは言わないようにしているようだ。

女の子の恰好をするのは嫌と言っていたけど、今回は、俺も一緒だったので抵抗も少ないらしい。。


赤いドレスを着たロゼは、本物のお姫様だった。こんな国でも、姫として育った品の良さは隠せなかった。美形の多いこの世界でも、群を抜いた美しさを誇っていた。

エリカ用のは、青色のドレスだった。鏡に映った姿は、確かに可愛いのだけれど、派手な顔つきではないために、ロゼの引き立て役のような感じになってしまいそうだ。まぁ、良いけどね。

「エリカっ。カワイイよ」

ロゼが、褒めてくれる。照れ隠しに何か話そうとしているのがわかる。女の子らしい恰好をほとんどすることがなく、スカートをはくのもここ最近では記憶にないくらいなんだって。

「ロゼは、きれい。やっぱお姫様なんだね」

二人で褒めあって照れてしまう。何をやっているんだろう。。。


そんなかんだで、1月が過ぎた。ロゼとの友情は何度かの魔物討伐(女の子二人で何をやってるんだろう。。ホントに)を経て深まり、無二の親友と言えるようになった。実際俺たちのコンビは、お互いの欠点を補いあい戦闘力的にもかなり高かったし、強者ぞろいのソーディアムの中でもバラックを除けば、最高戦力と言ってもよかった。出会ったときの飛龍を軽く狩ってしまった時点で、もうおかしかったんだけどね。



開かれたパーティーは、窮屈なドレスを着ながらだったけど食事は美味しく、楽しかった。招待客は、国の重役クラスの家族たち。やはり俺は、ロゼの引き立て役には違いなかったけど、ムタさんにこんな可愛い娘さんがいたなんてと、ちやほやされる感があった。中には、10代半ばの息子の嫁にどうかなんて冗談ともとれない話題が上ったりして。。。


「エリカちゃん。エイタは来られないの残念だったね。」

食事も一段落し手持ち無沙汰にしていると、バラックが気を使って話しかけてくれる。

「なんか世界の行ったことのないところを見つけたらしく、当分戻らないらしいです。あの、入学手続きとかいろいろ動いてくださってありがとうございます」

「エイタの頼みだ。お安い御用だってね」

そう言って、酒を一気飲みするとまた話し始めた。

「あのだな、俺の左目には、真実の瞳っていう宝具が埋め込まれているのは知っているか?」

おっさん、何を言っている。

真実の瞳は、物の真の姿を見ることができるアイテムだ。バラックが昔受けた傷は、本当の傷ではなかったため回復魔法が効かず、自然治癒もしなかった。

それは偽物の傷であり、精神にダメージを与える呪いであったために、真実の瞳を手に入れたことにより、実際には傷ついていないことが判り、解呪されたのだった。


「あ゛」

ということは、俺の姿も見えてる。のか?

「あー、酔っぱらったからかな。人が2重に見える。酒のせいかな。。。うん。酒のせいにしておこう。お前が楽しそうで、俺もうれしい。それでいいや」


やっぱバレてる。ちょっと恥ずかしくなってきたな。

「…というわけで、ロゼを頼むぞ。お前がそばにいれば、安心だ。」

「うん」

恥ずかしさで顔に血が昇ってくるのを感じ、返事をした後うつむいていると

「お父様、エリカをいじめちゃだめじゃないっ。エリカっお父様になんか言われたの?」

変な雰囲気を感じたロゼが助けに来てくれた。

「いや、いじめているわけじゃなくて・・・」

困っているバラックをみると、少し笑ってしまった。

「くすっ。何でもないよ。ロゼと仲良くしてくれってさ」

「変なお父様。エリカとは仲良しだもんねー」

「ねー」


バラックは、俺の元気がないことを常々心配してくれていたらしい。で、最近はエリカの姿になってロゼとはしゃいでいるのが楽しそうに見えて、変に安心してしまったそうだ。


一週間後。

いよいよ、出発の日がやってきた。

バラックとは、あれから話してないけど、うん、持つべきものは友だな。そっとしておいてくれるんだろう。この友情にかけてロゼのこと任せてもらおう。命かけて守るよ。



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