復活!
籠城戦は、続く。
ソーディアムの城壁は、高く丈夫であり、魔法にも耐性がある。
人類側の、最前線となる砦というだけあり、生半可な攻撃ではびくともしない。
リュウが率いる部隊の遊撃と、私の魔法で魔物たちは後退しており、文字通り生半可な攻撃しか受けていない。
落とされる心配はないのだ。
城壁があれば、総攻撃にも耐えられるだろう。そうなれば、反撃もできる。
しかし、魔物達は、軽く様子見に仕掛けてくるだけで、数に頼った包囲を続けている。
「なんなんだろうな?」
リュウも焦りを感じているようだ。
「魔族も少なくない数がいて、魔物達を指揮しているようだ…」
「お兄ちゃん何が言いたいの?」
「わからないけど、なんだか敵の目的が別にあるような気がして………」
数日経ったが状況は変わらなかった。
魔物達は、相変わらず押しては引き、こちらが引いたときには、その分押し戻してきた。この煮えきらない戦い。
こういう戦いを仕掛けて、時間を稼ぎ、最後には目的を達成する。私、というかエイタは、こういう戦いかたをする奴をよく知っている。
それは今、魔王になっているシャドだ。エイタが、魔王討伐に何年も掛かったのは、シャドのこういった戦いかたによるものだったと思う。
シャドは、局地線では勝ちを譲るものの、全体として人間側を追い詰めていた。その頃倒した中ボス達は、シャドの政敵だったことが多かった。
要するに、邪魔な魔族を勇者に倒させていた。その度にシャドは、魔王軍としての地位を確立させていったらしい。そういった内情は魔族として、シャドと供に魔王に仕えていたアーシャさんが教えてくれた。
誰かに伝えるべきか、シャドが復活というか、結界の中からでも影響を及ぼしていることを。
「ねぇ、お兄ちゃん。話があるのだけど…」
「どうした?エリカ」
どう説明したらいいのだろう。その時、歓声のようなものが聞こえてきた。
「隊長が帰ってきたぞー!」
えっ、ということは、カイも?
「エリカ。話はあとだ。行こう」
「うん」
ゴートが二人の体を支えながら、抜け道からの通路を出てきた。
ゴートの両隣には、ソーディアムで最強のパワーファイターのマッドさんと、……カイがいた。
なにも考えられなかった。
カイのもとへ駆け出していた。
「カイっー!」
カイに抱きつき、カイの体を支えようとする。
「…エリカ。…会いたかった。」
「私も、、」
カイが、抱き返してくれる。ん?何か違和感がある。
「カイ…あなた…」
カイの左腕から先が…
「あ、これか、うん、魔物にやられたんだ…」
無くなっていた。
「カイ君が、俺を庇って…」
「いや、マッドさんそれは違う…。僕はあなたに助けられたのだし…。」
逃走中に、カイを庇ったマッドさんがピンチになり、今度はそのマッドさんを庇ったカイの左腕が、魔物に食いちぎられたらしい。
私は、どういう表情をしていたのだろう。わからないけれど、ただ唖然としていた。
「僕は大丈夫だよ。エリカ。心配要らない。」
っ、違うだろ、私がカイに励まされている場合?
「カイっ、私が治してみせる!」
欠損箇所は治癒魔法では、治らないとされていた。治癒魔法の正体は、時間短縮だと考えられる。怪我がなおる時間、疲労が快復する時間、この時間を無理矢理短縮させているのが治癒魔法なのだと思う。
以上は、私の仮説なんだけど。
だから、時間が経って治る怪我は、治癒魔法で治せる。
だけどカイのように、無くなってしまったものは…
「無理だよ。この数日、身を隠しながら治癒魔法をかけ続けたんだ。おかげで傷口はかなり塞げたんだけど。やっぱり、無くなったものは、戻らないらしいな。」
カイは、諦めたように話す。人のために自分を犠牲にできたこと、誇りに思っているようだ。
でも、いや、やだよ。私は、カイに両手で抱き締めてほしいよ!
「やってみせる。」
治癒魔法とは違うアプローチ、トカゲの尻尾が再生するように、再生芽を作るんだ。遠い昔の理科の授業でやった気がする…。
万能細胞?のノーベル賞の研究とか、STaップ細胞は、ありますっ!
それらの、もう20年以上前の記憶。もともとあったのか怪しい知識を総動員して、魔方陣を作り魔力を込めた。
「あっ、くうっ」
一瞬で魔力がなくなり、気を失ってしまった。
理論的には可能と思えた再生魔法は、魔力の消費量が間に合わず、現実的には無理なのだろうか。
そんな時、キングダム郊外の魔王シャドの封印場所で異変が起きていた。
総合評価が、500超えました。
ありがとうございます。
完結まで、もうちょっとあります。
まだまだ、未定な部分も多いですが、お付き合いくだされば幸いです。




