ロゼの恋心
「もう、大丈夫。ただの魔力切れだからね。ありがとう。」
「ん、良かった。じゃあ、鍛練にもどる。走ってくるよ」
「うん、ホントにありがとうね。」
ロゼは、出ていこうとして出口の方へ歩いていったんだけど、ふと振り返って
「エリカってさ。」
「えっ、何?」
「エリカって、その、可愛いよなぁ」
お、急に何を…
「どうしたの?ロゼ?」
「いや、ゴートがさ、あのドラゴンの角を取ってくれたとき、私は、剣がなくて心細くて…」
「うん、」
声にならないくらいの相づちを打つ。
「待ってろ!って言ってくれたとき。すごく安心して…」
ロゼは続ける。
「今さ、エリカを運んでると、腕の中のエリカが可愛くて。男からしたら、こんな女の子が良いんだろうなって思って…」
可愛くて。だって。中身は…なんだけど。
もう、エリカになって3年だな。昔の事、もう忘れそう。
「ロゼ。ゴートが好きなんだね?」
「うん、たぶん、この気持ちはそうかな…」
ロゼが戸惑っている。かわいいなぁ。
「でも、ロゼはめちゃくちゃ可愛いし、ゴートもそのままのロゼが好きなんじゃないかな。…私もそのままのロゼが好きだし…」
「ゴートが私を好き?」
聞き流されたけど、私も大好きだよ!
「でないと、ロゼのために命賭けないよ。」
「そうかな?」
「ロゼが、私より強い人じゃないと、とか言ってるから…」
「えっ、それだったら、ゴートって、私よりずっと強いよ。」
でも、ロゼがいくら認めていても、模擬戦含めて、ゴートは一度もロゼに勝ててない。
だからこの恋は、進展できない仕組みになっている。
「ゴートは、ロゼに勝つために頑張ってるんだよ!」
「うん、私も頑張るよ!」
と言って、鍛練に戻りました。ちょっと元気でたかな。
ロゼが頑張ると、ゴートはまた勝てない。ってか。
……頑張れ少年!
しばらくは、日常が続きます…
とある日、部屋でまったりとしていると、
「エリカっ。大変だ!」
慌てたロゼが、騒がしく入ってきた。
魔物かな?このコの場合、それは大変じゃないな。
「どしたの?」
「お、弟ができた!」
おぉ、アーシャさんの子ども産まれたんだ。
「おめでとう!見に行ってきたの?」
「まだ、知らせを受けたとこ、どうしようかと…」
「とりあえず、アーシャさんのところに、行っといで。」
「エリカ、ついてきてくれない?」
え、こういうのって私が行っても良いのかな?
でも、見たいな。
「私が行っても良いの?」
「エリカだから、大丈夫だよ!」
学園からそう離れていない場所に、バラックの家はあり、そこで出産もしたらしい。
「おぉ、ロゼ!来たか。入れ!」
バラックは、私が付いてきていることをみると、
「エイ…エリカちゃんも来てくれたんだな。ありがとう。入ってくれ。」
付いてきて良かったんだ。うん、良かった。
応接間を通り、奥の方の部屋にはいると、赤ちゃんを抱っこしているアーシャさんがベットにいた。
「ロゼ!とエイ……エリカちゃんも来てくれたのね」
この夫婦は……
私は、エイ…エリカではないんだけどな。
「母様、大丈夫ですか?」
「えぇ、あなたの時よりずっと楽だったわ。まぁ、お陰で魔力が無くなっちゃったけどね。」
アーシャさんは、魔力が無くなってしまったことを誇らしげに言う。
「ほら、このコが、あなたの弟よ!」
「うん、ちっちゃいな。かわいい!」
「抱いてあげなさい。優しくね!」
「はいっ、緊張するなぁ」
ロゼは、赤ちゃんを受けとり、抱っこした。
「むふっ、良いな。かわいいっ」
「エリカちゃんも、抱いてあげて!」
アーシャさんが提案してきた。え、良いの?でも、抱いてみたい。
「良いんですか?」
「うん、もちろんよ。ロゼだけじゃなく、このコのことも宜しくお願いします。」
宜しくって…でも、エイタの親友の子どもで、エリカの親友の弟だ。ちょっとややこしいけど、必ず守るよ!
赤ちゃんを抱かせてもらった。
軽い、壊れそう…でも、かわいいなぁ、
赤ちゃんを抱っこしていると、心の奥で、何かが動く?目覚める?上手く言えないけど、心の奥から、何か、何かが沸き上がってくるのを感じていた。
それは、ちっとも嫌な感じはなく、優しく暖かい、幸せな感情だった。
母性に、目覚めてしまったようです…
 




