伯爵アンデット
そのアンデットが私たちに、語りかける。
「ドーゼンバルフ家のものか?ラモン…ではないのか?」
「いえ。ラモンの息子のラウルと申します。」
ラウルが答える。
「ほおぉ。あの小僧にも息子ができたとは。ずいぶん長いこと眠っておったようじゃ。とにかく、めでたいことじゃな。」
良くしゃべるアンデットだな。
「もしや、お爺様ですか?」
ラウルが聞く。
「いかにも、儂がドーゼンバルフ伯爵であったラルゴである。そうじゃ、そなたの祖父に当たるかの。ここで儂は、息子のラモンが来るのを待っていたのじゃが、あやつめ、父親の墓参りに来んのじゃ。」
「父上は、アンデットが苦手ですから。」
「そうじゃったな。昔からあやつは、夜中に便所に行けずにお漏らししてしまうような奴じゃった。」
ラウルがにやりと笑う。
「お爺様。その話もっと詳しく。」
ラウルさん、親の弱味を握りたいのは解るが、今はそんな暇はないと思いますよ。
「うむ。孫と語らうのも悪くはないが、アンデットとなった儂には、あまり時間もないのじゃ。本題に入ろうと思う。」
ラウルのお爺様の話では、盾の復元は、アンデットのなかに、鍛冶屋がいて、何とかしてもらったとのこと。盾を復元して、ドーゼンバルフ伯爵を継いだもの、息子の伯爵が訪れるのを待っていた。
「先程からの戦いを見ていて、ドーゼンフィールドは使えているようじゃが、バルフチャージはまだ使えてないようだな?」
それを聞き、ラウルは戸惑いつつ尋ねた。
「それは…。私が父上から聞いているスキルはこれだけだと?」
「そうか。それでは、継承が途切れるところであった。これは、フィールドで守りつつ、力を溜めて、攻撃に転じる技じゃ。」
そう言うと元伯爵は、強烈なオーラを纏い始める。
「見せてやろう。ドーゼンバルフ家が守りだけでないところを。うむ、構わぬ、全員でかかってきなさい。前魔王軍の総攻撃を受けきった儂のスキルじゃ。お主らごときヒヨッコどもの攻撃、蚊に刺された程度にしか感じぬ!」
そういう事言うと、
「「手加減はしませんよ!」」
リュウとロゼが燃えちゃうよね。
「ほほう、なかなかやりよる!!だがラウルよ、これが真のドーゼンフィールドだ。良く見ておけ!!」
なんと、この爺さん。いや、見た目はまだおっさんか。リュウとロゼの攻撃を受けきってやがる。
ラウルは、盾を構えながらも、一時も見逃さないように目を見開いている。
「頃合いかな。行くぞ!!」
元伯爵がそう言うと、フィールドのオーラが全面に集まり、バーーンと音がして、みんな吹っ飛ばされた。
…いや、ラウルは、耐えて立ち尽くしている。私は巻き込まれちゃったけど。うん、すごい広範囲の攻撃だね。
「お爺様。確かに見せていただきました。私に習得できるか分かりませんが、努力します。」
「ラウルよ。この技を受けてたっていられたのは見事。技の習得も問題なかろう。そしてな、ひとつ頼みがある…」
「お爺様の頼みであれば」
「儂が儂であるうちに浄化してくれ。もう自我が保てないかもしれん。礼と言ってはなんじゃが、この盾をやろう。ほんで、最後にフィールドを解くので、その背の高いおねーちゃんから一撃を食らって一度、昇天したいのじゃが…」
最後の方、モジモジしだした。まぁ、遺伝?家風?だからしょうがない。
ロゼが、迷っていたので、
「ロゼっ。遠慮なくやっちゃえば!」
背中を押してあげた。
「あ、盾は先に渡しておく。壊れたらいかんしな。それから、そこの綺麗なおねーさんに浄化は頼みたいなと思うんじゃが…」
更に美人をご指名とは、さっきまでの威厳と貫禄が……
「父上には、お会いにならなくても?」
「あやつの事だ。アンデットの儂には会いたくなかろう。前も言ったが、望みを果たした以上、いつまで自我を保てるかわからんし」
「お爺様。ありがとうございました。」
「ダーン」とロゼの一撃が決まり、アリアさんの浄化により、元伯爵様は幸せそうな顔で、旅立っていかれました。
 




