目覚る時は私がそばにいたい!
いつも間にか結界が解けて、私たちは戦場へ向かった。
カイ。無事でいて…
カイは、気を失ったままバラックに担がれていた。
「カイが、母さんだった?」
リュウが聞くが、誰も答えられない。事態を把握している人がいなかったからだ。
「状況から見るに、エリス様がこの少年になったのは間違いないな。」
ピーターが言う。ピーターはなぜかエリスを様つけする癖がある。前に聞いたら、あんな恐ろしい人呼び捨てになんかできないよ。だって。
「とりあえず。治癒魔法をかけます。目が覚めれば、エリス…カイさんから話を聞きましょう。」
「うん。じゃあ、俺は、王様に経過報告しておくよ。まぁ、なんとか上手く言っておくよ」
この中では、ピーターは王様と個人的な付き合いがあって、気心が知れている。王様を珠に隠密スキル使って連れ出して遊んでいるとか。もっとも、女性が仲良くしてくれるお店に行ったりしているのは、ローザには内緒らしいけどね。
ローザの応急処置の後、学園の救護室に運ばれたカイは、小一時間程して目覚めた。被害はほとんど無かったとはいえ、魔物達によって壊された物もあるので、皆は修復に行っていた。残った私私がカイのことを診ていた。ついていたかったから。
「ん。ここは?」
カイの目が開き私を見た。
「カイ…」
会いたかった。と言いたかったんだけど…。
「そうか。封印魔法できたのか?シャドは?」
「どこにもいない。いなくなったよ。」
少し考えて、カイが言う。
「皆を集めて説明しないと、講堂が良いかな。皆を呼んできてくれる?もう少し休んだら動けると思うから。」
私はうなずき、
「わかった。じゃあ、呼んでくるね。」
言いたいことは、一杯ある。でも、言葉にならないし、なにか、もどかしい。でも、感情を抑えて、立ち上がろうとした。
「エリカ。その前に」
カイが手招きする。
「なぁ…」
顔を近づけて何?って聞こうとしたんだけど…
カイの唇で塞がれてしまった。
「ぅん」
突然のこと。でも、心が満たされる。一度顔をはなして、見つめあって、目をつむって、もう一度キスをした。
もどかしい気持ちはなくなった。交わしたいのは、言葉ではなかったみたい。長いキスの後、カイが言ってくれる。
「会いたかった。ずっと」
「私も…」
やっぱり、カイがいるなら私はこのままで良いっ。
講堂には、主だったメンバーが集まっていた。
見慣れない金髪のお兄さんがいる。あのきれいな金髪と完璧な美形、見覚えがある。前会った時は、王子だったけど、王様になったと聞いた。この世界での最大の国の王様が、こんなところにいて良いのか?勇者パーティーの揃っているここが、世界一安全な場所ではあるんだけど…
カイが口を開いた。
「わたし、いや僕がエリスだったのは、皆さんがご覧になった通りです。変化の指輪と言うエルフの秘宝で変身していました。今は、シャドが指輪に何らかの干渉をして強制的に変身させられてしまっているようです。」
一呼吸おいて続けた。
「変身の源の水晶は、シャドにより取り出されて戻れなくなっていると言うのが、今の僕の状況なんだと思います。」
カイが、一度私の方を見て頷く。私の事は、黙っていくようだ。
「僕の状況は以上として、元魔王のことについて話したいと思います」
カイの話は続く。
「まず、魔王いずれ復活することは解っていました。魔王が倒れた後、魔族の中から次の魔王が生まれるのです。
前魔王のように好戦的な魔族が魔王となると、世界は以前のように危機となります。でも、魔王がどのように生まれるかは、結局わかりませんでした。恐らくですが、何か魔王の力の源のようなものが有るのではないかと考えています。」




