第九十六話 日向の過去
「あれは、高校卒業して1年してからかね?まあ、アタシ、こう見えてやんちゃしててね、当時所属してた仲間と夜の海岸沿いをバイクでチェイスしてたんだけどね・・・」
〜3年前〜
「おい、日向!今日もおまえに下剋上を申し込む!」
「リーダー、下剋上の使い方間違ってますよ?」
「そんなんどーだっていーんだよ!今日のレースで勝ったら今度こそ俺の後を継いでもらう!」
「はいはい、どうせ勝てないですよ、リーダー弱いですから」
「なんだと!?俺の愛するCBR1300を馬鹿にすんのかばーか!」
「いえ、速度自体は良いんですけどね、何せテクニックが皆無ですし、無改造じゃないですか」
「馬鹿野郎!俺の可愛いCBRに改造なんかできるかよ!日向が改造してくれんなら良いけどよ!」
「それは無理です、敵に塩を送るような真似したくありません」
「毎回そー言ってたぶらかすんだもんよ!ずりぃよ!」
「リーダー、たぶらかす、では無くはぐらかす、ですよ」
「うっせー!良いから勝負だ!」
「仕方ないですね」
今思えばアタシはこうしてなんやかんやありながらも仲間とこうして走りたかっただけだったんだ、だけど、あんな事が起きるなんて・・・
「ちくしょう!日向!はえぇよ!」
「コーナリングできちんと重心を傾ければ曲がりやすく、スピードも落ちにくいですよ?」
「成る程なぁ、ちょっと、向こう行こうぜ」
「何かあるんですか?」
「なあ、日向、俺さ、馬鹿だけどよ、日向の隣で走れるのが楽しいんだよ、だからよ、俺と付き合ってくれ!」
「え!?それって」
「こ、告白だよ!悪いか!」
「え、えっと、っ・・・!!」
アタシは、嬉しくて、恥ずかしくて、その場から逃げたんだ、何より、気持ちの整理がしたかった、じゃないと、泣いてしまいそうだったから・・・
「!?日向!危ない!!」
続く