第六十七話 霊界
「霊界だと精神の姿でいられるみたいだな」
「ご主人様、それは違います」
「るぅ?なぜここに?」
「こう見えて一応来期冥王様の補佐ですから」
「冥王?」
「今の冥王は魔王のお兄様だと聞いていますが・・・」
「父さんの兄?」
「ご主人様にとっては実の父親に当たりますか」
「俺は霊界出身なのか?」
「はい、しかし、肉体を持っていなかったと」
「俺の実の父親・・・」
「そろそろ来る頃ですね」
「優希ぃぃ!会いたかったぞぉぉ!」
「ふぇ?」
「ああ!優希!俺は会えて嬉しいよ!さあ!俺に真の姿を見せておくれ!」
「おい、なんで優希に抱きつくんだよ、普通こっちだろうが」
「!?なんと!ではこちらは?」
「は、初めまして優希と言います」
「優希ちゃん!大きくなったね!」
「お父様、そろそろ本題に」
「ん?そうか」
「なあ、親父、精神の姿と霊体との違いはなんだ?」
「よく聞いてくれた、それはな」
「精神の姿は、霊力が作り出した器のようなもの、霊体は実体を持たないいわば霊力そのもの」
「と言う事を、俺が言いたかったのだがな・・・」
「すみません、ですがお父様が話すと確実に理解できないかと」
「そうか?」
「はい、では、仮に洗濯のやり方を教えて下さい」
「ああ、洗濯のやり方はまず服を洗濯機に入れて洗剤をびゃびゃっとしてスイッチをぴーするとジャーでぐわんでショワーでウイーンで洗濯機が停止するから服を取り出して外に干す」
「親父、すごく分からない」
「なんと!」
「あれ?優希さん、なんか透けてません?」
「透けてるな」
「ふむ、霊力が弱まって来ているな」
「なんで弱まるんだ?」
「霊界だからな、何もしていなくても霊力だけでいれば世界に吸われる」
「ならどうするんだ?」
「霊力を高めるには自分で自分の存在を信じることだ」
「あれ?叔父様、普通に説明できてる?」
「お父様は霊力のことに関してだけはすごくわかりやすい説明が出来るのですよ」
「自分を、信じる?」
「そうだ、自分を信じて、自分の存在を確かなものにする」
「存在を信じる・・・」
「さあ、信じるんだ」
「凄い!優希さんがみるみる濃くなっていく!」
「俺は、俺だ!」
「合格だな、ほら、優希ちゃんもやってごらん?」
「はい!」
「ふむ、流石は弟の娘だ、飲み込みが早い」
「しかし、なぜお嬢様も透けているのですか?」
「長い期間霊力を圧縮していたんだ、下手すると消えていたな」
「そこまで追い込まれていたんですか?」
「ああ、だが、普通の人間なら3日が限度なのに彼女は数年も持ちこたえた、これはものすごい霊力を持っていないとできない」
「叔父様、終わりました」
「よし、なら現実に戻ろう」