第五十三話 異変
キーンコーンカーンコーン
「そろそろエサやらないとな」
「なんにだ?」
「C組の境原」
「は?」
「当たり前だろ?」
「いや、お前らつきあってたっけ?」
「まあまあ、いいから優希もこいよ」
「…これは」
「あうぅううう」
ジャラ
「鎖に繋いでるから安心しろ」
「なぜ?ゾンビのままなんだ?しかも学年で一番の美少女と言われる境原が…」
「ほら、肉だぞ」
「ぅぁあぁあぁぁ」
「…」
『優希くん…見ないでぇ…でも、肉、肉!!』
「?今のは…」
『もっと、もっと肉!』
「まだ食い足らねぇのか?」
「ぁああぁぁ」
「ほらよ、肉だ」
「あううう」
「…山田、ちょっと二人にしてくれないか?」
「…二人って、お前さ」
「もう一度言うぞ、山田、一旦教室から出てけ」
「…っち、はいはい、解ったよ」
「…境原、俺の言葉が解るか?」
「ぁあぁあぁ」
『解るよ?』
「じゃあ今の状況は解るか?」
「あうぅう」
『解らない、ただ』
「ただ、何だ?」
「あああぁぁ」
『お腹が空いて仕方ないの』
「…そうか、ほら、野菜」
「う、あああぁぁ」
『肉しか食べたくない』
「…食べたくなくても食べてみろ」
「う、ぼぇえええ!!」
『マズ、ぼぇえええ!!』
「…肉しか受け付けないか」
「ああぁ」
『助けて』
「しかし、どうすれば」
「優希くん、ちょっといいかな?」
「リア、こんなとこにいて大丈夫なのか?」
「理事長の権限でね」
「…母さんか」
「この娘、特殊な体質よ」
「…特殊な体質?」
「そう、俗に言う魔力に影響されやすい体質」
「だから治らないのか…」
「…ちょっとごめんね?」
「あうぅううう」
「さあ、飲んで」
「あああぁぁ」
「…変わらないぞ」
「…そのうち変わるから」
「ああぁ…あれ?」
「ね?」
「一体何をした?」
「魔力に影響されやすい人は基本、魔力の耐性がないの」
「…つまり?」
「耐性を作ってしまえばいいだけ」
「あの、私お礼を」
「いいのいいの、気にしないで」
「まあ、いいか?」
「まあ、副作用でゾンビのままだけど」
「でも、普通に話せますし、状況も解りますよ?」
「…いつかの祐希と同じ状態ってことか」
「そういう事」
「あの、何がどうなっているんですか?」
「チートになっただけだ、気にするな」
「それじゃあライフへったりしないの?」
「…なんか妙に詳しそうだな」
「ゲーマーだもん」
「威張るな」
「あう」
「これにて一件落着か?」
「あ、そうだ、明日から紗季達が転校生として来るからよろしく」
「はいはい」
つづく