第二十六話 優希の運命
「ここは?」
「お久しぶりです、優希さん」
「優希か、なあ、ここはどこなんだ?」
「ここは魂の世界、よく言うあの世、ですかね」
「…死んだのか?」
「いえ、貴方は死んでいません、死んだのは私の方です」
「そんな…」
「そう、全ては貴方のせい、貴方が死ぬべきだった、なのに貴方は死んでいない」
「…」
「何ですか?同情してるつもりですか?」
「そんなんじゃ」
「違うんですか?貴方は私を殺した、貴方が死ぬべき、いや、死ななければならないんです」
「そう、だよな」
『騙されないで!』
「え?優希?」
「チッ…あとすこしだったのに」
「どういう事だ?」
「ふっ…ふふふふふ…あははは!!あとすこしだった、あとすこしでお前は死んで私が取りつく事ができたのに!とんだ邪魔者が居たもんだ」
「貴女は何者?何で私たちを狙うんですか?」
「…そんなに聞きたいなら話してあげる、私には名前が無い、強いて言うなら優季ってところかしら?」
「優季だと?」
「そう、紗季の優希に対する羨み、嫉妬、怒りが優希という魂を力に具現化した違う人格」
「なぜそんなことに…」
「貴女なら心当たりがあるはずだ、貴女はいつも紗季よりかまってもらっていた、それが次第に紗季に大きな影響を与えていたんだ」
「…可哀想に」
「可哀想?ふざけるな、私はそう言って自分は偽善者だみたいな奴が一番嫌いなんだ!」
「…ごめんなさい」
「誤ったところで私は許さない…そうだ、なら優希、貴女が死ねばいい、そうすればこの優希は許してやろう、どうだ?」
「…勝手に決めんじゃねぇよ」
「なんだって?」
「勝手に決めんじゃねえっつってんだよ!」
「…今ここで戦いたく無かったんだが、やむお得ないな」
「黙れ!」
「グッ!」
「何が憎しみだ!」
「ぐはっ!」
「お前は、そうやってただ単に傷つくのが怖いだけなんだろ?」
「くっ!」
「傷つくのを怖がる奴に誰にも傷つける事なんてできねぇ、いや、させねぇよ」
「どうやら邪魔者は私だったようだ」
「何言って」
「じゃあな邪魔者は消えるさ」
「消え、た」
「優季さん!」
「行こうぜ、あいつの分も進まねぇと」
「…はい」