第百十五話 山田家の大黒柱
「優希、部活はどうだったんだ?」
「うーん、もう杖がダメなのかな?最近調子悪いんだ・・・」
「そうなのか?」
「うん、小学校から使ってるし、大水晶も濁って来ちゃって」
「お父さん、お客さんが来てるよ?」
「分かった、優希、明日新しい杖を買いに行こうか」
「うん、ありがとうお父さん・・・」
「ねぇ、お客さんって本当にお父さんの知り合い?」
「何でだ?」
「だってお母さんに妹がいるなんて一度も聞いたことないよ?」
「・・・沙紀、夕飯の準備しとけ、それと、2人とも、後で大事な話がある。」
「え?うん、分かった」
「義兄さん、漆愛です、分かりますか?」
「ああ、分かってる、記憶改変も解けてる、だが・・・済まないな、帰れない」
「あなた?なんで帰れないのか聞いてもいいかしら?」
「美香・・・そうだな、まずは上がってくれ、皆は真実を、いや、今の状況を知る必要がある」
〜山田家リビング〜
「待たせたな」
「お母さん!?お母さんなの!?」
「・・・ああ、お母さんだ」
「お父さんとお母さんが帰って来るなんて!信じられない!」
「沙紀、優希、聞いてくれ、実はな、俺とこの母さんは、お前達の親じゃないんだ・・・」
「え・・・嘘だよね?」
「・・・優希は、驚かないんだな」
「うん、知ってたよ、だって、私見たんだもん、"お父さんとお母さんが消えるところ"」
「嘘だよ!優希姉言ったじゃん!海外に行ったって!」
「ごめんね・・・沙紀、ごめんね、私もお父さんが来た時、帰って来たんだって思ったよ?でも、お父さん、私達について、何も知らないんだもん」
「優希姉はそれでいいの!?私達騙されてたんだよ!?勝手にお父さんだって偽って!成りすまして、痛っ!何よあんた!なんでぶつの・・・私?」
「いくら別の世界の私でも今の言葉は許せないよ、勝手に偽った?成りすました?ふざけないでよ、そりゃ唐突に行方不明になって記憶が戻ってて連絡できるのに連絡もしないで他人の親やってるような父親だよ、でもね、困った人がいたら放っておかない優しいお父さんだよ、自慢のお父さんなんだよ?」
「でも!お父さんが居て、楽しかったのに・・・お父さん、また居なくなっちゃうの?」
「大丈夫!お父さんは必ず私が見つけるよ!だから、見つかるまでの間私のお父さん貸してあげる!ね?」
「そうですよ、なんならもれなくお母さんも付いてきますから、待っていてください」
「沙紀、優希、済まないな、優希を探すので手一杯だろうに」
「良いんだよお父さん、お父さん探すのもこっちのお父さん探すのも変わらないから」
「・・・手厳しいな」
「お父さんとお母さんの消失について詳しく教えて貰える?」
「えっと、あれは半年前、沙紀が部活の合宿で居なかった時、お父さんとお母さんとで魔導書を買いに行ったの、そしたら突然2人とも光に包まれて消えちゃったんだ」
「半年前というと・・・」
「ちょうど世界が崩壊した時だな・・・」
「という事は?」
『あー、あー、聞こえておるかの?』
「ラトさん?何かあったんですか!?」
『おかしいのう、返事が来んわ』
『ラトよぉ、向こう側のマイクオフ何じゃねぇの?』
『憂鬱な事にベルの言う通り、マイクがオフですね』
『何じゃ、まずらわしいのう、そもそもこの魔法具、型が古いんじゃよ!』
『仕方が無いです、魔法界に異世界から魔力を送るとノイズが酷いので、これを使うしかないのです、ね?お父様?』
『まあ、古いのは仕方がねぇよ、ベルゼ、報告だ』
『はい、お姉様、聞こえておりますか?傲介様を見つけましたわ、ですが色々様子がおかしいのです、記憶改変されていると思い、ラト様が解除をしようとしたのですが、そもそもが改変されていないのですわ、取り急ぎ、戻って来て貰えますでしょうか?』
「分かった、こちらもちょうどこっちの世界のボスを見つけたところだ、もしかしたらこちらの世界の傲介かもしれない、支度が出来次第そちらへ向かう。」
『分かりましたわ、では、御武運を』
「お父さんが、見つかったの?」
「恐らくだがな」
「優希、沙紀、良かったな」
「うん、うん!・・・」
「それでは一旦崩壊した世界に帰りますか」
「そうだな、そうしよう」
つづく