第百九話 汝等、平和を求めん
〜崩壊した世界、学校〜
「そう、そんな事が」
「今からワクチンを作る、これに釣られて敵が来れば一石二鳥なんだが」
「それは無いじゃろうな、生存者が残っているという事はもうこの世界の役目は終わったという事じゃ」
「俺はどうしたらいい?この発端は俺なんだろ?何も出来ないかもしれないが、協力したいんだ」
「しかし、ただの庶民を巻き添えにする訳には・・・」
「庶民なんかじゃないわ!私がいるもの!この色欲のオクちゃんにおまかせよ!」
「・・・誰だ?お前」
「・・・まさかとは思うが、オックトンか?」
「そうよ!貴女に消し炭にされ、気がついたらこの世界で独りぼっち!だけど変わった事があった、そう、変身できたのよ!・・・戻れないけど」
「なぜ戻れないんだ?」
「教えて貰って無いのよ!」
「誰に?」
「色葉様に決まっているじゃない!」
「それはいつの話だ!重大な手がかりかもしれない!」
「それは、二週間前程、傲慢のリーダーと色葉様が怪しい動きがあるって私の元に来たの!私の力を借りにね!」
「・・・それで人の形になるのを教えて貰ったのか?」
「勿論!それでこの手紙を渡してきたわ!」
「手紙・・・」
未確認の色欲の反応があったから来たものの、どうやら一連の事件の犯人はこいつじゃないらしい、しかし、こいつがリアを知っていると聞いて手紙を託した、この手紙を読んでいるという事は恐らく俺達はお前の知っている俺達じゃないだろう、きっと優希を知らない、ただの平凡な姉妹の父と母と叔母になっているだろう、依然として敵の手がかりが無い、リア、頼む、皆を救ってくれ、こいつには色葉の魔力を少し与えておいた、敵の手がかりになる事を願う。
傲介
「お父さん・・・」
「それで!ちょっと触手失礼するわ!」
「ひぎっ」
「な、なにを!」
「はい、おしまい!どう?」
「あ!お姉ちゃん、山田君!」
「2人ともなにか思い出したのか!?」
「はい、それよりも、急がなきゃ、山田くんが危ないです!」
「けーくんが!?」
「どういう事だよ!」
「こっちの世界と元の世界で戦争が起きる・・・その指揮者が身体を乗っ取られた山田君なの!」
「乗っ取るやつの名前は!?」
「リリア、じゃろう?」
「その通りです、その、グラトニーさん」
「ラトでよいわ、そうか、やはりリリアじゃったか、・・・なぜリリアは、娘は、優希とやらでなく、圭介を器として選んだのか・・・」
「恐らく、リリスの子孫と間違えたからでは?と、推測します」
「るぅ?」
「いえ、私は流恵ではありません・・・まあ、家族ではありますが」
「バアルか、久しいのう」
「流恵、貴女は覚えてないでしょうが、私は覚えています、立派になりましたね」
「・・・お母様、なのですか?」
「貴女には、普通の猫として、生きて欲しかった、なんと憂鬱な事でしょうか、ですが、これも運命なのですね、今は悪魔としてでなく、母として、再会を喜びます」
「お母様・・・お母様!お母様!私は、いい飼い主に出会いました!」
「ええ、そのようですね」
「しかしお主、猫として余生を過ごすとか言っておったろう」
「勿論、旦那亡き後、私は猫として余生を過ごしました、悪魔として子供を授かり、野良猫として産み、飼い猫として死にました、しかし憂鬱な事に、本来私は猫又、寿命など無いのです、ですが、流恵も猫又でした、なんと爽快な事でしょうか」
「憂鬱の悪魔の癖して爽快とは、数奇じゃの」
「私もそう思います」
「さて、リア、流恵よ、主らにはわっちらの力を授けようと思っとる」
「力?」
「いや、そんな大袈裟な話ではないかの、各種族の純度の高い魔力じゃ、わっちは暴食、バアルは憂鬱じゃ、と言ってものう、二つだけじゃ物足りない、きっと、リリアには勝てんじゃろう」
「では、どうすれば・・・」
「だから言ったじゃろう?お主なら出来る、わっちが保証するとな・・・さて、お主ら、いや、同胞よ、今から原初の世界へ行くんじゃ、じゃが、わっちらは行けん、いいか、まずはベルフェゴールの元へ向かうんじゃ、そこにはバアルも居るが、何とかなるじゃろ」
「・・・分かりました、ですが一つ、お母様に聞きたいことがあります、お母様の飼い主の名前をお聞きしたいのです」
「ふふ、爽快ですね、なんと晴れやかな事でしょうか、良いですか?私のご主人様の名前は・・・」
つづく