第百二話 始発点
目が覚めると、私の部屋だった、さっきまでのは夢だったのか?夢にしては現実味を帯びていたと思う。
「優希姉、入るよ?」
紗季、私の双子の妹、昔から私達姉妹は仲が良かった、あれ?本当にそうだったっけ?何故か小学校から中学校卒業までの記憶が曖昧だ、小学校より前は鮮明に覚えているのに。
「優希姉、あのさ、私、優希姉の事、前から優希姉って呼んでたっけ?」
「え?何言ってるのよ、前から優希姉って呼んでたじゃ・・・あれ?」
確かにおかしい、前まではお姉ちゃんと呼ばれて居たはず、それに、私の名前は優希なのに、何故紗季は優希と呼ぶんだろう?」
「ねぇ紗季、私の名前って、"ゆうき"よね?」
「何言ってるの優希姉、優希姉は、"ゆき"でしょ?」
「それじゃあ、"ゆうき"って、誰?」
「え?うーん、確かに、私もその"ゆうき"って名前、知ってる気がするけど・・・」
「色んな人に聞いてみようよ!」
「誰に?」
「ほら、お父さんとか、お母さんとか」
「そうだね、聞いてみよう」
〜リビング〜
「ねぇ、お父さん、優希って誰だか知ってる?」
「ん?優希はお前だろう?何変なこと言ってるんだ?」
「何言ってるのよ、優希ちゃんは優希でしょ?」
「そうだ、従姉妹の麻紀に聞いてみたらどうだ?」
「そうね、隣だし同い年でしょう?その方がいいわよ」
〜山城家〜
「優希さんが、どうかしましたか?」
「何か知ってるの?」
「知ってるも何も、祐希兄さんとよく遊んでるじゃないですか、それに、優希さんの兄でしょう?」
「え?私に兄なんていないわよ?」
「え!?ちょっと待っててください!今祐希兄さん呼んで来ますから!」
「なんだよ、俺は今忙しいんだよ、もうすぐ追試なんだよって、優希に紗季じゃんか、遊びに来てたのか?」
「いえ、そうじゃなくて、優希って誰なのか聞こうと思って」
「はあ?優希はもう一人のお前だろう?」
「そんな、優希姉が二重人格だったなんて・・・」
「いやいや、紗季、お前まで何言ってんだ?え?なんかのドッキリか?」
「それが違うみたいなんですよ」
「まさか、優希のやつ、また変な事に巻き込まれてるんじゃ・・・」
「その可能性が高いですね」
「沙紀に連絡取ってくれ、ああ、それと、リアとベルゼにもな」
「わかりました」
「ちょっと!私達抜きで話進めないでよ!何があったのよ!」
「それは私が説明する」
「先生、なんでこんな所にいんの?」
「なるほど、これは大変な事だな、それと、何故か魔王様と連絡つかないんだが、流恵、知ってるか?」
「・・・ボスは記憶操作を受けた可能性が高い」
「なるほど、だが、何故私達は省かれているんだ?」
「それは、多分、昨日の夜に山田家にいた人だけが記憶操作を受けたからだと思いますわ」
「・・・なるほど、私は仕事、流恵は?」
「・・・散歩」
「ま、まあ、猫だしな、それで、ベルゼは?」
「私は、まーちゃんの所に」
「そうなると、記憶操作を受けていない人が、私、流恵、祐希、沙紀、麻紀・・・まあ、もしも敵が現れた時の戦力としては充分か」
「・・・SBCはどうしますか?」
「うむ、第二権限は、確か令介だったな」
「・・・冥王様なら今、事務所にいるかと」
「では、令介に連絡を」
「・・・はい」
『お電話ありがとうございます、ショップイング店長、山田でございます』
「・・・」
『あの、もしもし、お客様、どうされました?』
「・・・」
『もしもし、冷やかしですか?』
「・・・」
『申し訳ありませんが切らせていた「オーナー、ニャンダフルフードの在庫ありましたっけ?」それなら2番倉庫に8箱ほどあると思うぞ?』
「・・・にゃ!?」
「あ、あからさまに尻尾振ってるな・・・」
『あの、お客様、ご要件を思い出されましたら再度おかけ直し頂いても宜しいですか?』
「・・・二番カウンターが開きました」
『・・・なんだ、流恵か、二番カウンターだな?状況は?』
「スーツ、エプロン、ワンピース、スカートが品切れ、ジーンズが発注不可、キャンピング売り場で迷子です」
『解った、すぐそちらに向かう、おい!磯山!今から運営回ってくる!「了解です!」』
「凄いツッコミ所満載だが、隠語だよな?」
「だと思うよ、正直おじさんのセンス独特だから」
「私達はどうすれば・・・」
「記憶操作は犯人を探し出さなくては先に進まない、それと並列して優希を探さないとな」
「大変だ!優希君が!!」
「ラース!?」
続く




