表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2696 かくして植民惑星は内戦に向かった  作者: もってぃ
新たな局面へ、そして…
PR
23/48

23


 眼前のデュフィ上級大佐の言葉と表情に微妙な隔たり(ギャップ)を感じたサンデルスは、同じ所感をマズリエも得ただろうかと、さりげなく分析官の横顔を窺った。

 冒頭で挨拶をしてからこれまで一言も発していないマズリエは、やはり黙ったままデュフィ大佐を観察している。


 大佐は()()に気付いていない振り――それが〝振り〟であることはサンデルスにはわかる――で、シーロフ支部長の表情を窺うようにした。……自身の仕える準州代表を揶揄しているかのような言葉は、〝鎌をかけた〟ということだったか。


 しかし、それなりに年齢を重ねているシーロフは、迂闊に乗らなかった。


「捜査の件でしたら〝順調に進んでいます〟と(しか)……」


 デュフィ大佐はそれを遮り、大きく肯いてみせた。


「…――私も〝彼女〟にそう言った」 含みのある、落ち着いた言い様である。「軍と警察は違う。軍は出しゃばらず、〝この件〟は現場のプロにお任せなさい、と」


「ご配慮、感謝します」

 この〝駆け引き〟に、シーロフも慎重に応じた。


「礼に及ぶことではありません」 デュフィは表情を改めると、もう一度頷く。「ただ、くれぐれも〝敵〟を見失うことのないよう願いたい」



「――ロマン・リシュカのことをお教え頂けますか?」

 ここで、マズリエが初めて口を開いた。


「話が〝見えない〟な……」

 マズリエを見返したデュフィ大佐は、わずかに表情を軟らかくする。だが警戒はしたようだった。


 マズリエは淡々とした口調で食い下がる。

「テロリストは彼の釈放を要求しています。違いますか?」


「話にならない。それは不可能事だ」

 デュフィは声音を少し低く改めて応じた。


「〝テロリストとは交渉しない〟という原則でしたら…――」

 〝使い古された方便(ルール)〟を盾に話を煙に巻かせない、というマズリエを、大佐は手を上げて遮った。


「…――そうは言っていない。居ないものは釈放できないと言っている」 大佐は主任分析官に頷いて続けた。「……本当だよ。〝彼は死んだ〟と聞いている」


「IISOはそう見てない」

 シーロフが〝助け舟〟を出す。


彼ら(IISO)は〝ファテュで起こっていたこと〟を正しく評価できなかった。そういう組織だ」

 デュフィは落ち着き払ってはいたが硬い声となって応じる。「彼らは〝戦場〟に立っていない」


 その言には、マズリエだけでなく他のPSI捜査官ら全員が〝納得しがたい〟という目になった。


「情報源は?」

 デュフィが硬い声音のままに訊く。


「ジーン・ラッピン」

 マズリエが簡潔に答えた。つい先日にバンデーラから得たばかりの情報だ。


「ああ…――」

 それで得心がいったとばかりにデュフィは嗤った。「あの女にサローノのことは解らない。デスクワークしか知らない手合いだ」



 これまでの会話でサンデルスは理解した。

 デュフィ上級大佐の頭の中で〈諜報特務庁(IISO)〉の情報分析組織(インテリジェンス)の〝序列〟は〈軍情報局(DIA)〉の下なのだ。この分では〈公安調査部(PSI)〉や〈情報調査室(IIRO)〉はその更に下になるのだろう。……優男然とした容貌に似ず〝マッチョ〟な考え方をする男らしい。



「そうですか……」 一方、デュフィのその言葉を〝女性蔑視〟と捉えたのか、セシリアは素気のない声で応じた。「心しておきます」 ――部局内外の情報調整は彼女の職責だった。


「さて、私としても仕事の邪魔をするつもりはない。失礼するとしよう」


 場の雰囲気にようやく気付いたという〝振り〟をして、デュフィ大佐は席を立った。




「どう思う?」

 客人が帰った後、部屋に残った3人にシーロフ支部長は訊いた。


我々(PSI)の動きを見にきたんでしょう」

「〝動き〟? ――〝働き〟でしょ」


 無難な回答をしてみせたサンデルスに、セシリアが言葉尻を訂正した。その様子から、どうやら大佐を好きにはなれなかったらしい。マズリエは逆に支部長に確認をした。


「大佐は〝軍務で〟来たのじゃなく〝準州代表の顧問(アドバイザー)の肩書で〟来た?」


 支部長が肯くと、マズリエは肩をすくめるようにして言った。


「……彼は何かを知っているかも知れないし、そうでないかも知れない」


 それはつまり、現時点では情報が少なすぎて判断はできない、ということだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ