第一話 天魔の到来
西暦2051年、
蝉が鳴き始めた7月の末。
午前8時、人々が今日も一日が始まらんと足を運ぶ。
そんな何気ない一時、日本海の中心部、
突如として関東と同等ほどの島が出現した。
名は「天魔島。」
天魔島には魔族と呼ばれる怪物が闊歩している。
魔族とはその身体を魔力で創り上げられており、
属性魔法、というのを扱うんだそうだ。
…なんでそんなにも冷静なんだ?と思うかもしれないが、戸惑っている暇は無いのだ。
魔族共は着々と侵攻を進めている。
既に北陸部は魔族の手に堕ちてしまった。
しかし人間の素晴らしいところは、その対応力。
はや5年、人間達は魔族に対抗する術を見いだした。
その術のひとつが精霊との契約。
精霊は万物に宿り、
その宿りしものと深く関係する能力を持つ。
天魔島の顕現により世界が魔力に包まれ、
精霊が活性化した。精霊は人間と友好的な奴らだ。
精霊の者たちは俺たち人間に力を分け、魔族を斥ける。
そして精霊と力を分けた者共を契約者と呼ぶ。
そんな契約者達をまとめあげているのが日本魔族討伐軍だ。文字通り魔族を殲滅するために設立された軍隊だ。
地方によって軍が設立され、それぞれ実力者が揃っている。ここ関東地方の軍隊は関八隊という。
まぁ俺には堅苦しくて苦手なんだが…
―
ここらで自己紹介させていただこう。
俺は純ジャパナイスガイの豊織天吉
この豊織天吉はただの一般人。ではなく、契約者。
世界上に10人しか存在しない、軍に所属していない契約者だ。
この10人らには所属してない理由がある。
自由が欲しいと言うやつもいれば、
魔族と戦いたくないと言うやつもいる。
そしてこの俺は軍への試験でおちた落ちこぼれだ。
―
「魔力が騒いでいる。」
「うわ、なんか厨二病みたいなこと言ってる…」
「え?なんか心外だぞ。本当に騒いでいるじゃないか?」
「うん。騒いでるわね。」
「おい。俺をバカにしたいだけだったよな!?」
「ははは、君は相も変わらずいい反応するよねぇ。」
やかましいヤツめ。
こいつは清水祥子。いわゆる情報屋だ。
まぁ全然いい情報なんてくれないがな。
ただの世間話相手のような友人のようなものだ。
「はい。豊織、早く行ってきなさい。」
そう言ってサンドイッチを投げ渡した。
食べ物を投げるなと言いたいところだが、ここは急がないと。
「行ってきます。」
―
「じゃあぼちぼち向かおうとするか…」
魔力解放!
俺が魔力を解放すると同時に暴風が起こり、空間が歪んだ。
「ではゆこう。|天倪の英霊《月未 京香》『転移術起動。』」
【了解じゃ。青嵐の風に赴き、魔を祓いたもう。『転移。』】
相変わらずの幼く可愛らしい声が心に響く。
京香は僕の契約している「英霊」だ。
まぁこれは後で話そうとしよう。
転移した先は、戦場のはるか上空。
転移した矢先。
『ぐおぉぉぉぉお!』
魔族共の咆哮が耳に響く。
「やめて、死にたくない…たすけて!やめ…」
幼女が腕から血を流し、魔族に捕らえられていた。
転移した瞬間にこれかよとは思ったが、
俺は瞬時に刀を鞘から取りだし、
魔族の腕を切り落とした。
ちなみに俺の刀はカエリムから貰ったものなのだが、なかなかの切れ味だ。
「魔族共、殲滅だ。」
―
西暦2057年
8月18日、午後6時11分。
魔族総数7720体。
関八隊と豊織天吉による殺戮の末、魔族全滅。
決着がつき続々と魔族が死に絶えた。
俺は多量の戦闘に疲労を覚えていた。
こんなに頑張ってもお小遣いすら貰えないのは辛いものだ。
『よくやってくれた皆の者!我ら人間の勝利だ。』
彼は、黒田 正景
彼は膨大な知識量と生真面目な性格、この冷静さに加え、
隊長にも並ぶ有力者だ。
関八隊のムードメーカーだそうだ。
祥子が言っていた。
まぁ単純な戦闘では俺が負けることは無いが。
「今回、我々関八隊は、魔族の侵攻を食い止め、殲滅に成功した!改めてよくやったお前たち!今宵は帰ってゆっくりと休むがいい!」
軍を遠目に見ていたが、相変わらずの熱気だ。
―
俺は想定よりも早く殲滅が終わったから散歩でもすることにした。
もしかしたら怪我人が途方に暮れているかもしれない。
散歩を開始してから数分後、
とてつもなく禍々しい大きい魔力が空間を入り乱した。
俺は瞬時に戦闘態勢にはいった。
ガツガツと重みのある足音が心臓に響いた。
『貴様が契約者とやらか。』
「喋る魔族……!?」
俺は警戒心を強めた。
今まで対話を図った魔族はいないからだ。
『魔王様の命により、貴様を始末することになった。』
「くっ…」
魔王、?
俺はよりの警戒を強いられた。
たが一筋縄で殺せるような魔族ではないことはひと目でわかる。
突っ込めば、致命傷を負うと肌で感じた。
『おっとすまないな、無粋であった。まずは名乗るのが先であったな。我はかの魔王様の側近、マグスリア・ドトリシア。以後よろしく。と言ってもこれで会うのは最後であろうがな…』
魔王様の側近とは驚きだ。
どんなケダモノかと思っていればこんな美青年な執事様だったとは。
もはや魔族という言葉に値しないほどの美しさであった。
マグスリアは奇しくも、人型だった。
人型というのはつまり、人間と同じ容姿を持つ魔物だ。
今までに人型の魔族は現れたことがない。
つまりは何もかもが異常で不条理だ。
『貴様は名乗らないのだな。まぁよい。』
「『火炎弾』」
俺は火炎属性魔法を発動した。
炎の弾丸を放つ魔法だ。
一発でビル1棟を貫く威力がある。
着弾すると、雲に届くようにも見えるくらい高く火煙が上がった。
「手応えはあったが…」
煙が上がると、少し煙たそうな顔をしたマグスリアが立ち尽くしていた。腰周りの服が剥げ、少し血が垂れていただけだった。
あれでかすり傷か。
『ふはははは。面白い。そんな魔術は初めて見たぞ!貴様は殺すには勿体ないが、仕方あるまい。任務遂行だ。』
そういうと視界からマグスリアが瞬時に消えた。
戸惑う俺の肩に顎を乗せ、魔術を発動した。
『エネルギア・エクゼクティオ──ゼロ・ウィンクルム・アクティベート。』
魔力の揺らぎと共に俺の体に鎖が巻きついた。
体が動かねぇ…こんなの初めてだぞ…
そうすると不気味な笑みを浮かべ詠唱を始めた。
『レインネイション・メタルスタ・フォーツイツ』
『アクティベート。』
『最初で最後のさようならだ。ではな…』
なにか物騒なセリフを吐き、すぐさまに背中を向けた。
その瞬間、足元になんとも高度な魔力を秘めた魔法陣が出現した。
そんなものを気にする間もなく視界が真っ白になった。
―
目を空けた時には視界に拡がったのは、
荒廃した原だった。草木は枯れ果て、地面を形造る土はまるで乾きボロついた粘土のようだった。
まさに魔境。魔界であった。
第一話終わり。




