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陽介はディスプレイを見つめながら、草原エリアから洞窟、そして次の階層へと繋がる流れを改めて確認していた。地形やモンスターの配置はほぼ整い、草原エリアは完成に近い。だが、その次の階層にあたる迷路について、まだ具体的な構造は決まっていない。
「迷路の構造をどうするか……ただ複雑にすればいいってわけでもないよな」
陽介は腕を組み、思考を巡らせた。
「例えば、迷路の中にいくつか仕掛けを追加するのはどうかな?」
コアが柔らかな光を放ちながら口を開く。「ただ進むだけだと単調になるから、侵入者が立ち止まって考えるポイントを作るんだよ。たとえば扉を開けるためのスイッチとか、特定の順番で進まないと戻される通路とかね!」
「確かに、それは面白いかもしれないな」
陽介はディスプレイに視線を戻し、迷路の中に複数のスイッチを設置した。これらのスイッチはそれぞれ離れた位置に配置されており、すべてを作動させない限り、迷路の中央にある扉が開かない仕掛けだ。
「これなら、侵入者は迷路をただ彷徨うだけじゃなく、スイッチを探しながら進むことになる。ちょっとした達成感も得られるはずだ」
さらに陽介は、迷路の中に隠し部屋を設置した。部屋の中には宝箱を配置し、道中でスイッチを見つけた冒険者への小さなご褒美とした。宝箱の中には、特別な回復ポーションや小さな金貨袋を入れることにした。
「隠し部屋に入るためには、特定の壁を通り抜ける必要がある。これなら、ただ見つけただけじゃなくて、ちょっとしたひらめきが必要になるな」
陽介が操作を続けていると、コアが楽しげに声をかけてきた。
「君、本当に楽しんでるね!どんどん面白い仕掛けを作っていくのが見てて分かるよ!」
「まあな、こうやって自由に作れるのは思った以上に楽しい。次は迷路のゴール地点をどうするかを考えないとな……」
陽介は迷路の最奥に広い部屋を設置し、その中央に待ち構えるゴーレムを配置した。石でできた巨体が、侵入者を迎え撃つべく佇む姿を思い浮かべながら、ゴーレムの動きや攻撃パターンを設定していく。
「このゴーレムは、ただの力任せな攻撃だけじゃなく、時折周囲の地形を変化させる能力を持たせよう。これなら侵入者も戦いながら頭を使う必要が出てくる」
ゴーレムの設定が終わると、陽介は全体の流れを再び確認した。草原エリアから洞窟、そして迷路を経てゴーレムの待つ最奥へ――。侵入者が進むたびに緊張感と達成感を味わえるような設計になっている。
「これで、ようやく最初のダンジョンが形になったな」
陽介は満足げにディスプレイを閉じ、深く息をついた。
「うん、すごくいい感じだよ!これだけの規模なら、最初に来る冒険者たちもきっと楽しんでくれると思う!」
コアが輝きを増しながら嬉しそうに言う。その言葉に、陽介も自然と微笑みがこぼれた。
「さて、次は細かい調整だな。まだ手を加えたい部分がいくつかあるし、冒険者が実際に入ってきたときにどう反応するかも気になるところだ」
陽介の中には、新たな創造への意欲が絶え間なく湧き上がっていた。そして、最初のダンジョン完成に向けた最後の仕上げに取り掛かるため、再びディスプレイを操作し始めた――。