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陽介はディスプレイに向かって考えを巡らせながら、次々とアイデアを浮かべていった。草原エリアが形になり、冒険者たちがどんな風に進んでいくのかを想像するだけで、彼の中には新たな欲求が湧き上がってきた。
「湖の次は……そうだ、丘の先に洞窟を作ってみるか。ここを次の階層への入り口にして、もう少し雰囲気を変えたエリアに繋げてみよう」
陽介は湖の奥に緩やかな丘を作り、その先にぽっかりと開いた洞窟の入口を設置した。洞窟は黒々とした深い影を持ち、どこか冒険心をくすぐるような雰囲気を漂わせている。その周囲には、いくつかの岩や枯れ木を配置し、荒涼とした風景を演出した。
「洞窟の中には、少し難易度の高い仕掛けを入れてみるのもいいかもしれないな。例えば……通路が複雑に入り組んでいるとか、時折天井が崩れたような障害物があるとか」
陽介がディスプレイを操作すると、洞窟の内部が画面上に現れた。通路を蛇行させ、ところどころに倒れた岩や崩れた壁を設置することで、迷路のような雰囲気を作り上げた。
「それと、洞窟の中にもモンスターを配置しないとな。ここでは、草原とは少し雰囲気を変えたモンスターを入れたい」
陽介はディスプレイを見つめながら、自分の頭の中で洞窟に合うモンスターを思い浮かべた。最初に浮かんだのは、コウモリ型のモンスターだった。暗い空間を飛び回り、侵入者を不意打ちするような動きを設定する。次に、岩のように見えるが突然動き出す「岩ゴーレム」を配置した。これらのモンスターが洞窟内に潜むことで、侵入者に緊張感を与えることができるだろう。
「よし、これで洞窟の基礎はできたな。中ボスを置くとしたら、この先の広間がいいか」
陽介は洞窟の奥に広い空間を作り出し、その中央に大型のモンスターを配置することにした。今回選んだのは、硬い甲羅を持つ「巨大なカニ型モンスター」だ。岩のように擬態しているが、侵入者が近づくと突然動き出す仕掛けを加えた。
「このカニ型モンスターなら、洞窟の雰囲気にも合うし、見た目にも迫力がある。倒すのに少し時間がかかるような耐久力を設定しておけば、侵入者たちに達成感を与えられるはずだ」
陽介は自分で作り上げた空間に満足げに頷きながら、さらにディスプレイを操作した。洞窟を抜けた先には、次の階層へと繋がるゲートを配置し、そこからゴーレムの待つ迷路へと続く設計にする。
「これで草原から洞窟、そして次の階層への流れができたな。まだ細かいところは調整が必要だが、少しずつ形になってきた」
「君、すごいよ陽介!」
コアが輝きを増しながら感嘆の声を上げる。「これだけ自由に作れるのに、ちゃんとバランスを考えているのがすごい!冒険者たちが喜ぶ姿が目に浮かぶよ!」
「そうか?まあ、まだ完璧とは言えないが……」
陽介は少し照れたように笑いながら、ディスプレイを見つめた。自分が想像したものが現実の形になっていく感覚は、初めての体験でありながら、どこか懐かしさすら覚えるような気がした。
「まだまだ作りたいものが山ほどある。次は迷路の細部を詰めていくか……いや、その前に草原エリアにもう少し仕掛けを追加するのも悪くないな」
彼の中に湧き上がる創造の衝動は止まらなかった。ダンジョンの形が少しずつ完成していく中で、陽介は自分がダンジョンデザイナーという役目に夢中になりつつあるのを感じていた。