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陽介は草原エリアの構想を練りながら、ディスプレイに手を動かしていた。まずは広い空間を描き出し、草原がどこまでも続くようなイメージを取り入れる。青々とした草が風に揺れ、遠くには小さな丘や木々を配置することで、冒険者が「自然の中で戦う」というリアリティを感じられるように工夫する。
「草原エリアには、どんなモンスターを置けばいいだろうな?」
陽介が呟くと、コアがすぐに反応した。
「うーん、最初は弱いモンスターがいいと思う。例えば、スライムとか、ウサギみたいな小動物っぽいけどちょっと攻撃的なやつとかね。あ、あと鳥型のモンスターもいいかも!空から襲ってくる感じでちょっとドキドキするよ」
陽介は頷きながら、いくつかのモンスターをディスプレイ上に配置していった。透明な画面には小さなアイコンでモンスターが描かれ、それぞれが動きをシミュレーションするように草原を動き回る。スライムは跳ねるように移動し、ウサギ型モンスターは素早く駆け回る。そして鳥型のモンスターは、遠くから侵入者を見つけると素早く急降下してくるような動きを設定した。
「こんな感じでいいかな……?それと、モンスターの数はどのくらいにすればいいんだ?」
コアは少し考えるように光を瞬かせてから答えた。
「最初の階層だし、数は多すぎず少なすぎずがいいかな。例えば、侵入者が最初に戦うスライムはたくさん出てきて怖がらせる感じ。でも、他のモンスターはその後少しずつ出てくるようにして、侵入者が慣れた頃に新しい挑戦を出すってどうかな?」
「なるほどな……スライムは数を増やして集団で襲いかかる感じにする。他のモンスターは適度な間隔で配置して、侵入者が次に進むたびに少しずつ難易度が上がるようにする、か」
陽介はディスプレイを操作しながら、草原のエリア全体にモンスターを分散して配置した。草むらの中に隠れるスライムや、遠くの木の上から見下ろす鳥型モンスターなど、侵入者が「どこから敵が現れるかわからない」というスリルを味わえるように工夫を凝らした。
「それと、宝箱も忘れないでね!」
コアが陽介に念を押すように言った。
「たとえハズレの宝箱でも、回復用のポーションとか、小さなコインとか、冒険者がちょっと嬉しくなるものを入れるといいと思うよ。草原エリアだから、自然に馴染むようなアイテムを入れるのもアリかも!」
陽介は微笑みながら宝箱のアイコンをいくつか配置した。
「そうだな。ハズレでも『次は当たるかも』と思わせるような内容にしておけば、冒険者たちもやる気を失わないはずだ。それと、最初の階層だからこそ、あまり意地悪な配置は避けるべきだな」
草原エリアが次第に形になり、陽介の頭の中には次のイメージも浮かび始めていた。
「草原の出口には、ちょっとした中ボスを置いてみるか。例えば、大型の鳥型モンスターとか、侵入者たちが『やった!倒せた!』と感じられる相手がいいな」
コアは満足げに輝きを増し、嬉しそうに言った。
「よし、草原エリアが形になってきたね!」
陽介は静かに息をつきながら、出来上がったダンジョンを見つめた。ダンジョンが少しずつ完成していく。その過程が、彼の中に新たなやりがいと楽しさを生み出していくのを感じていた。