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陽介はディスプレイを前に腕を組み、しばらく考え込んだ。白い空間には静けさが漂い、彼の思考を妨げるものは何もない。だが、その分、頭の中で考えるべきことが次々と浮かんでは消え、まとまらない。


「オーソドックスなダンジョンって言ってたけど、具体的にはどんなものを作ればいいんだ?」

陽介がぼそりと呟くと、水晶玉――いや、ダンジョンコアが軽やかな声で返事をした。


「うーん、そうだね。最初だから、冒険者が『ザ・ダンジョン』って感じで想像するようなものがいいと思うよ。たとえば、入り口から少し進むと分かれ道があったり、トラップがあったり。あと、お宝もあったほうが喜ばれるよね!」


「なるほど、冒険者が期待するような基本的な構造か。だが、具体的な形がまだ浮かばないな……」


陽介はディスプレイに映る空白の設計図をじっと見つめた。画面には、何もない広い空間が広がり、まるで白紙のキャンバスのようだ。直感的に操作できるツールではあったが、それをどう活用するかは彼自身のアイデアにかかっていた。


「そうだ、ダンジョンを作る上で、何を基準に考えればいいんだ?」

陽介はディスプレイ越しに問いかけた。


「基本的には、侵入者が楽しむことかな。それと、僕自身も『いいダンジョンだなぁ』って思えたら、ポイントが増えるんだよ」

コアの言葉に、陽介は眉をひそめた。


「侵入者が楽しむ、か。具体的には、例えばどんな楽しみ方を想定してるんだ?」


「たとえば、驚いたり、焦ったり、嬉しかったり。感情が高まるほどポイントになるんだよね。だから、トラップでびっくりさせるのもいいし、難しい仕掛けを解いたときに達成感を与えるのもいいかも!それに、お宝を見つけたときの喜びとか!」


「なるほど。つまり、侵入者が色々な感情を味わえるように作ればいいわけだ」

陽介は少しずつダンジョンのイメージを固めていく。


まず、入り口はどっしりとした石造りのアーチにしよう。古びた感じを出すことで、冒険者たちに「ここから未知の世界が始まる」という期待感を抱かせる。そして、最初のエリアは広めの空間にして、中央に簡単なスイッチ型の仕掛けを置く。スイッチを押せば扉が開くようにしておけば、冒険者たちは「ダンジョンに入る」という最初の達成感を味わえるだろう。


その先には、迷路状の通路を作ろう。ここでは少し考える力が必要になるように、道を分岐させておく。そして、一部の通路には簡単なトラップ――例えば、床が少し沈むと石の矢が飛び出す仕掛けなどを配置しておく。矢が当たらない程度の威力であれば、安全性も確保できる。


「次は、宝箱をどこに置くかだな……」

陽介は図面上の通路をいじりながら、宝箱の位置を考える。あまり目立つ場所に置いては味気ないが、隠しすぎると誰も見つけられない。悩みながらも、ひとつの結論に至った。


「迷路の行き止まりにいくつか配置する。全部が当たりじゃなくてもいいだろうな。中には何も入っていない、いわゆるハズレの宝箱も混ぜておけば、緊張感が出るかもしれない」


陽介が思考を巡らせるたびに、ディスプレイ上のダンジョンが少しずつ形になっていく。迷路の出口付近には少し大きめの広間を作り、その中央にはダンジョンの象徴となるようなゴーレム型のガーディアンを配置することにした。


「最後の仕掛けはこれで決まりだな。ゴーレムは侵入者に挑戦感を与えつつ、倒しても安全に終わるようにしておけば、達成感も十分だろう」


陽介が最後のタッチを加えると、ディスプレイが一瞬だけ明るく輝いた。次の瞬間、空間の中に設計図そのままのダンジョンが立体的に現れた。


「おお、できた!どうだ、コア?」

陽介は振り返ってコアを見る。コアは一瞬沈黙した後、ふわりと輝きを増して静かな声で言った。


「とてもいい感じだよ!すごくしっかり作れてると思う。ただ……」


「ただ?」

陽介はコアの声に少し不安を覚え、問い返した。

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