そこはまるで異国の世界
その日二人は、まさえちゃんのお母さんが運転する車に乗って配達に一緒に出かけた。
「私が迎えに来るまで、あんたたちはちょっとここで遊んでいなさい」
まさえちゃんのお母さんは、そう言って私たちをとある幼稚園の前で下ろしそのまま配達に行ってしまったのだ。
私たちは、誰もいない幼稚園の園庭に入り遊具で遊びだした。
知らない街の幼稚園の園庭を、貸し切り状態で遊べることに優越感を覚えた私たちは、ワクワクと胸を弾ませた。
そこは、自分たちの通う幼稚園とは少し違う空気感の幼稚園だった。
「えっこちゃん、こっち、こっち」
まさえちゃんは、重厚感ある大きな扉を少しだけ開き手招きしているので、私もその建物内に入ってみることにした。
勝手に入って叱られるのではないか。と思ったりもしたけれど、知的好奇心旺盛な私たちが踏みとどまるわけがない。
私は、その建物内に入った瞬間、思わず息を呑んだ。
そこはまるで異国の世界のようだったから。
高い天井を見上げたままくるりとまわる私は、高鳴る胸の鼓動を抑えることができなかった。
それまで見たこともなかった世界。
陽光に光輝く色鮮やかなステンドグラス、銀色に艶めく大きな十字架と祭壇。
慈愛に満ちた眼差しでこちらを見つめる聖母マリア像。
幻想的で神秘的な世界は、時の流れがゆっくり感じた。
それはとても美しい教会だった。
二人は祭壇に歩みより、映画のワンシーンのように跪き両手を組んで祈ると、右手で額から胸、左肩から右肩に十字を切ってアーメンと言って祈りを捧げた。
見上げるとそこにはシスターの姿があり、二人を見て微笑んでいた。
神秘的だった。
一生忘れることはないだろう。