ちびっこアドベンチャーたち
今日も二人は飽きずに遊ぶ。
新たな発見に心躍らせ遊びを開発する私たちにとって、毎日が待ち遠しかった。
その日の遊びもまた、エキサイティングだった。
まさえちゃん家の台車を持ち出した二人は、車がほとんど通らない小さな坂道の上から下を見下ろした。
台車の上に立ちフレームをぎゅっと握り締めた私は、ごくりと生唾を飲み込んだ。
次の瞬間、キックスケーターの要領で片足でアスファルトを蹴ると、私を乗せた台車はゴオーッと音をたてながら坂道を下っていった。
勿論、台車にブレーキなどついていない。
飽くなき探求心に満ちた、ちびっこアドベンチャーというべきか。
思えば、あの頃の私たちには勇気があった。
恐れず前に突き進む、幼き無垢な少女たちは尊敬に値する。
なだらかな斜面を下る台車は、私という重力が加わり加速していった。
もう後戻りはできない。うわー! どうなるの――!?
好奇心からくるワクワク感と恐怖が入り交じり、心臓がバクバクと暴れ出す。
途中、車輪が小石をかみ台車は左右にブルブルと揺れながら更にスピードを増した。
私は、左右に大きく振られ一瞬にして台車から放り出された。
「痛・・・・・・っ!」
冒険の代償は、膝、肘、手のひら、その至る所を擦りむき血を滲ませた。
「えっこちゃん、大丈夫!?」
まさえちゃんの、ぱっちりとした漆黒の双眸が心配そうに覗き込んだ。
私は半べそかきながら「うん」と頷いた。
「じゃあ、今度は私の番ね!」
まさえちゃんは、瞳をキラキラと輝かせ満面の笑みでそう言った。
台車を押しながら坂道を登っていくまさえちゃんの後ろ姿を今でも覚えている。
その後、飽くなき探求心に満ちたちびっこアドベンチャーたちは、懲りずに幾度となく坂道を駆け下った。