そばにいて・・・・・・
月日が流れ私たちは小学校高学年になった。
いつしか二人を取り巻く環境は変わり、各々新しい友達に囲まれ日々を過ごしていた。
自宅はお向かいなのに全くといって会うことがなくなった二人。
決して喧嘩したわけではない。嫌いになったわけでもない。
けれども、いつしか私たちは話さなくなっていた。
私の小学校は中学に進学する際、二つに分かれてしまう。
それまで仲良かった友達と別の中学校に進学することになった私は一人ぼっちになった。
――皆、どこにもいかないで・・・・・・私のそばにいて・・・・・・
心の声は誰にも届くことはなかった。
中学生になった私は、時折いいようのない寂しさに襲われることがあった。
まさえちゃんとは同じ中学校で、同じ部活動だというのに会話すらしなくなっていた。
高校は別々の学校に進学し、私たちは大人になった。
結婚し子育てに奮闘する私は、幼きあの頃を懐古するようになった。
そういう時は決まってこう思う。
『まさえちゃん、元気かな?今頃何をしているのかな。あの頃に戻りたいな』って。
実家に帰った時、まさえちゃんの家に寄ればいい。だたそれだけの事だった。
なのに私にはそれができなかった。
――ひょっとしたら、あの時、まさえちゃんは本当に私のことが嫌いになってしまったのかもしれない。だから会話もしなくなったのかもしれない・・・・・・
根拠もないのに、何故かそう思うようになってしまった私は、声をかけることなどできなかった。
多分、これまでのいろいろな人間関係で痛い思いをしてきた私は、臆病になってしまったのかもしれない。
人間不信に陥った私は、人が怖かった。
裏切られることが、傷つく自分が怖かったんだと・・・・・・
だけど、そう・・・・・・私は昔から気になっていたんだ。その想いだけは変わることはなかった。
私の子供の頃の思い出は、他の誰でもなくて。
幼き頃にまさえちゃんと過ごした日々だった。
その時私は気づいた。
私には幼馴染のまさえちゃんがいた。彼女こそ真の友達だったんだと。
その時、目も開けられない程の強い風がブワッと吹きつけ、銀杏の葉が一斉に木の葉を大きく揺らし、ざわざわと騒ぎだした。
目を開けると、銀杏の大木を仰ぎ見る一人の女性が佇んでいた。
私の心臓が高鳴った。
私は勇気を振り絞って駆けだし「すぅ」と息を大きく吸った。
「まさえちゃん!久しぶり!」
「えっこちゃん?!」
まさえちゃんは目を見開いて答えた。
「まさえちゃん、元気だった?」
「うん。私、いつも思ってたんだよ。えっこちゃんどうしているのかなって」
私たちは互いに見つめ合った。
私たちすっかり年を取り『おばさん』と呼ばれる年になってしまったけれど、私たちの心はあの時のまま、何も変わることはなかった。




