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幼き澄んだ瞳に映った世界は・・・・・・

 そよそよと心地よい風が吹き抜け、私の頬をそっと撫でた。


 ふと我に返った私。どうやら銀杏の木の下のベンチで微睡(まどろ)んでいたようだ。


 辺りを見渡すが、幼かった頃の二人の姿はもうどこにも見当たらなかった。


 何故だかとても寂しい気がした。


 私は銀杏の大木を見上げた。


 突如零れ落ちてきた滴が私の頬を濡らした。


 それは私の涙だったと遅れて気づくが、何故泣いているのか自分でもよく分からない。


 ただ、後から後から絶え間なく溢れ出る温かな滴は私の頬を濡らしていった。


 まだ見ぬ輝かしい未来に向かって夢や希望を抱いていたあの頃の私たちは、光り輝いていた。


 あの頃、幼き澄んだ瞳に映った世界は・・・・・・


 移りゆく四季の色合いは絵の具では表せぬほど色鮮やかで。


 風の声に耳を澄ませば、遠く咲き誇る草花の香に心躍らせた。


 湧き出でる冷たき清水を、その小さき両手にすくいあげ喉を潤わせた。


 五感に伝わるそのすべてが、切ないくらい美しく儚くて尊い、心躍る冒険の世界だった。


 それは、どこまでも果てしなく広がる世界――


 今となってはもう二度と戻ることのできない、輝かしいまでの世界――


 あの頃の私たちは、それは永遠に続く・・・・・・そう信じていた・・・・・・



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