幕間 昔話
これは昔々、遥か昔の話さ。
この世界には二人の神様がいて、神様達は二人だけでさみしいと思い、一匹の動物を創り出した。
それがきっかけで神様達はたくさんの生き物達を創り出していった。
動物達は言葉を覚え、互いに話をしたり、たくさんの物を作ったりして生活するようになってね。
神様達はそんな動物達の姿を見守りながら、自分の中の寂しさがなくなっていくのを感じてたんだ。
そしてこれからも見守っていくのだと。
それがこの、緑と海に囲まれた世界「メルフェリーネ」なんだ。
ある日動物達は自分達と同じ姿の仲間達と共にコツコツと小さな国を作り始めた。
コツコツと作った小さな国はそれはやがて大きな大きな国へと変わっていってね。
国が大きくなればなるほど、動物達の住める場所はあっという間に埋め尽くされて、やがて互いの国を奪おうと争いが……簡単に言えば大きな喧嘩が起きてしまったんだ。
そして………世界にはいつしか黒い靄が現れた。
その靄が何なのかは分からない。
けれどそれは触れるだけでもその人の心を狂わした。
優しい人が急に怒り出す、みたいにね。
まだ靄に触れることのなかった動物達はその光景を見て怖くなった。
あぁ、これはきっと、自分達が争いなんて事をしたからだ。きっとバチが当たったのだ、と。
人々は後悔しながら、どんどんと世界を覆う靄を見つめながら生きる事を諦めてしまったんだ。
神様達は見守りながら動物達の姿に悲しんだ。
その時の神様達にできるのは見守ることだけだったからね。
だから黒い靄をどうにかしようとしたけれど、どうやっても靄は消えなくて。
二人は悲しくて悲しくて泣いて、そして願ったんだ。
「 だ れ か た す け て 」
そんなある時、靄の中から突然光が差し込んで、よく見ればその光の中に誰かが立っていた。
光が徐々に消えていくのと同時に、その誰かが一人の女の子だって分かった。
小さな手の中に小さな鍵を持った少女はアリス、そう名乗った。
アリスは良くも悪くも優しくて好奇心旺盛な女の子でね。
彼女にとって知らない世界のはずなのに、不思議と思った事があれば分かるまで駆け回り、動物達の困った様子を見ればすぐ傍によって話しかけた。
そんなアリスだからこそ、この世界は少しずつ変わっていったんだ。
周りの人を巻き込んで森の中や海の中を冒険してみたり、小さな子供の木を植えてみたり、…と思えば花畑も作ってみたり。
かと思えば動物達の小さな困り事から大きな困り事、国同士の喧嘩に自分から飛び込めば、その優しさと好奇心旺盛で解決……仲直りさせていった。
アリスが動物達の心を、優しい心を取り戻してくれた。
アリスがそうやってこの世界で色んな事を解決させていると、彼女の目の前に不思議な扉が現れてね。
それがちょうど持っていた鍵の大きさと同じだったから、アリスはそれで扉を閉めた。
そしたら黒い靄はその度に徐々に消えていったんだ。
そうやって世界を回って解決して扉を閉めてを繰り返していると靄がほとんどなくなった。
不思議な扉もそれに合わせてか薄っすらと透明になり、アリスがその扉を閉めると鍵が虹色に光り出した。
それは何処かに指を指しているように空に向かって橋になった。
まるで彼女においでというようにね。
アリスは好奇心旺盛のままに橋を渡ると、その先で神様達が笑顔で迎えてくれた。
神様達はアリスに言った。
助けてくれてありがとう、と。
世界を見守る事しかできなかった神様達は心から感謝をした。
けれど彼女は首を振ってこう返したんだ。
お礼を言われることはしてないよ、
私はただ、皆と友達になっただけだよ、と笑顔を向けて。
二人はそんな優しいアリスへ、一つだけ願い事を叶えてあげると言った。
その言葉を聞いたアリスは言った。
それなら友達になってほしい、と。
その願いを神様は叶え、神様達とアリスは友達になった。
そして3人でいつまでも世界を見守っていったとさ。
めでたしめでたし。
…なんて、実際は3人がどうなったかは誰も知らないんだけどね。
でもきっと今でも見守ってくれてるんじゃないかな。
え?
どうしてそう思うかだって?
…………ふふ、どうしてだと思う?