城下の出会い(2)
太陽の光に当たる度に、白い髪はキラキラと輝く。
ある時は青く、ある時はピンク色、といったように、七色とは言わないけれど…様々な色の輝きがあった。
あれだ、例えるなら…宝石?みたいな…。
服装は至ってシンプルな白い、首が隠れるフードの付いていないパーカーのような服に、横が編み込みになっている長ズボン。
そんな服を着た不思議な髪の少年だった。
「…?どうしたの?」
「あ、ごめん…。
髪がキラキラしてて宝石みたいだなぁって」
素直にアレクはそういえば、一瞬少年はキョトンとし…そして吹き出すように笑う。
「そんなきっぱり言う人久しぶりにあったよ!
あははは…!」
「そ、そこ笑うところ??」
「だって初対面で宝石みたいって言われたら笑っちゃうでしょ?…ふふ…っ…あはは!」
ほんと、どこか笑うところあったのかな…?
正直何処に笑う要素があったか分からないアレクだったが…。
何はともあれ、迷子だった彼はこの少年に塔の場所を教えてもらおうと話を切り出した。
少年はえ?塔の場所??とまたキョトンとして、けれど納得する。
君も迷ったんだね、とそう言って。
「塔に行きたいなら案内するよ」
「え?いいのか?」
「もちろん。それに僕も行くつもりだったし」
ニコッと笑いアレクに行こうと誘った少年。
彼にアレクはありがとうとぱあっと笑った。
塔へと向かう道の中で、少年とアレクは色んな話をした。
ルーアには聞いたが、この国の事や女王の事、何が美味しくて何が有名か、そんな他愛もない話を。
「へぇー、クラースはこの国に住んでる訳じゃないんだな」
「うん、北の方にある村に住んでるんだ。
この国には村にはない食べ物とか消耗品を買いに来ててよく来ててね」
クラース、そう名乗った少年が言う。
どうも野菜などは自家栽培しているが、肉などのタンパク質だったり、料理に使う塩などの調味料や薪などの消耗品は村にはなく、それを週一回一泊二日かけて買いに来ているそうだ。
今日は買い物を終え宿に荷物を置いた後、たまたま国の景色を一望できる塔に行こうとしていた所で、ちょうど迷子のアレクにあった…という訳である。
「アレクは初めてなんだね、この国に来るの」
「あ、うん…。
色々とあってさ、ここに来る前………えっと、迷子になって。
で、ここに来たのも連れてきてくれた人がいて何とか来れたんだけど」
「え?そうなの??
…あれ?でもその人はどこに??」
「…用があって離れてる。
それが終わるまで暇だから、城下街の散策をしてて…そこで熊のおじさんが塔に行くのをおすすめしてくれてさ」
「熊のおじさん……あぁ!串焼き屋の!
それでおじさんに進められて行こうとして迷子になったんだ?」
「…ぅっ………………はい」
流石に別の世界から来ましたーなど言えず、迷子だったと嘘をつく。
…………なんか迷子常習犯に思われそうだけども。
それに女王の所とは驚かせてしまうかもしれないから言えない。
クラースはそれに対して特に変に思ってはいないようで、彼はそっかぁ…と口にした。
それから実を言うとね、と続ける。
「初めての人ってこの国に来ると迷子になりやすいんだよね」
彼が言うには、この国は道がたくさんあり、しかも似たような形の広場や何本もある横道などがあってまるで迷路のようなんだという。
何度も来てる彼ですら最初は迷ってしまったそうだ。
噴水広場は国の中に数個あって噴水周辺円状の広場。
そしてそこには何本かの分かれ道になっていたり、建物の合間に横道があるがいくつもあるので横道の何処を曲がればいいのか分からなくなったり…。
とにかく分かりにくいのだ。
アレクが何でそんな風になってるんだと呟けば、クラースはそれが聞こえたようで、
「この国ってトランプの国と呼ばれてるけど、もう一つ『迷路要塞の国』とも言われてるんだよ」
「迷路要塞…?」
「そう、迷路要塞。
森に囲まれている上城壁で守られてて、それだけでも要塞の意味は持ってるんだけど…。
それ以上に国の中のこの道に意味があって」
この国は城壁やら役割やらあるが、それが突破された場合この道が要塞の役割を担うのだという。
「………迷子になる、から?」
「うん、そういう感じで思ってて大丈夫」
建物はそれぞれ屋根も色も形も違う。
道がただ複雑なだけだけれど。
けどそれが意味があるのだという。
例えば城、あそこに行きたいとする。
何処にいても見える城、見えてるのだから簡単に行けると思うだろう。
…………けど、そう簡単ではない。
城に真っ直ぐ行けそうな道が何本かある…が、実際真っ直ぐ行った所で辿り着けない。
行き止まりだったり、いきなりT字路になったり、そこを曲がった所で城壁まで戻ってしまうなどもある。
高さも形も違う建物で城への距離感覚は分かりにくい上、いくつもある道が更にそれを拒む。
初めて来て城に辿り着けるとしたらよっぽどの運の強い者か、
「どの道へ行けばいいかを知ってる人がいた場合、かな」
今の僕らみたいに案内してくれる人がいたらね、と彼は笑った。
アレクはそれを聞いて改めて、クラースに会えてよかったと思った。
「あ」
そうこう話をしている内に塔が目前という頃、その塔の近くでアレクは声を出し、そしてとある方へと視線を向けていた。
「?どうかした?アレク」
「いや、あの店…うさぎの置物あるなぁって」
うさぎ?、アレクの言葉にクラースは彼の指差す店へ視線を向ける。
そこにあったのはガラスの彫刻の店。
花や人、そして動物の形をしたガラスが並んでおり、その中に彼が口にしていたそれ、ちょこんと小さなそのうさぎはあった。
「……」
「…アレク?もしかしてほしいの?」
「え?いや、そういう訳じゃ…可愛いなぁって思っただけというか」
ガラスのうさぎへ視線を向けていた彼にクラースが聞けば、アレクは誤魔化すようにそう言った。
なんとなく、何処か寂しそうな彼の表情にクラースは不思議に思ったが、
「あ、クラース!
あそこの道を右に行けば塔の入り口なんだよな!」
何事もなかったこのようにアレクはそう声を上げ駆け足になる。
その様子にあっ!とクラースは思わず焦り、同じく駆け足で追いかけ、
「アレク待って!そこは右じゃなくて左…!」
「…………あれ?」
見た感じでは塔は目の前で、目の前の道を右に行けば入り口があると思うだろう。
が、これも迷路要塞と言われるだけあって実際は、塔の下の土台となっている建物から入れるように見えてフェイクであり、別の方に入り口がある。
そう説明はしていたのだが…、それでも危うく間違えそうになったアレクを彼は止めたのだった。
* * * * *
何やかんだでどうにか塔へと到着した二人は、早速その最上階へと登り始める。
塔の最上階へと続く道は所謂螺旋階段のような形になっており、塔の中の壁際を円状に登っていく。
パッと見た時は簡単に登れそうだと思ったが、これが意外とキツかったりする。
はぁはぁと息を切らしながら登っていると、最上階から降りてきた獣族や人族達がすれ違うたびに頑張れと声をかけてきた。
「初めて登る人は皆今のアレクみたいになるから、他の人から結構声かけてくれるんだよね」
「そ、そうなんだ…?」
慣れていない人にはキツイのがもう分かり切っているというか…当たり前になってるというか…。
たぶん皆が皆疲れながらも登っているから声かけてくれてるだろうな。
アレクは息を整えようと大きく息を吸いながら思う。
………せっかく応援されたし、頑張ろう。
そんな気持ちになりながら。
そうしてやっとの事で最上階へたどり着く。
「…!」
もう既にあれから時間が経ってしまっていたのだろう。
太陽がそろそろ沈むという所でたどり着いたそこにはまだ数名人はいたものの、その先に見える景色に彼は言葉を一瞬失う。
この国でここが景色がいいと言われるだけある。
目の前には先程まで歩いていた道々やそこを歩く人の小さな姿、木々に覆われた建物の数々が見えるに加え、
「あ、もうすぐ夕焼けが見えそうだね」
クラースの言葉通り太陽が少しずつ隠れ始め、そこから漏れ出す淡い橙色の輝きで辺りが照らされていく。
その輝きで照らしだ等されたこの風景は、違う世界だからもあるけれど…アレクが見てきた夕焼けの景色とは違って見えて。
(………綺麗だ)
感動のあまり、やはり言葉は、出なかった。
彼の様子を横目で見たクラースは、それに嬉しそうに笑う。
「すごい綺麗だよね」
「……うん」
そう言いながらアレクの視線は変わらない。
それでもその理由をわかっている彼はまた笑う。
そして、
「ここ、この国に来ると少しの間でもいいから来たくなる場所なんだよね」
「……確かに分かるかも」
「そうそう!分かるよなぁ!
ここは別の国から来た奴でさえ足を運ぶ場所だし!」
「「………。
……………………………!?」」
クラースの言葉に返答して、……………見知らぬ誰かの声一つ。
突然で二人同時に声の方へ向いた。
「おいおい、何だ二人してそんな顔して。
まるで幽霊でも見るかのような」
少し不服そうな表情をするその人物はそれだけ言うとニカッと笑う。
髪はアレクのよく知る彼、良樹と似た黒髪をし、それを赤いリボンで一つにまとめ右肩から下げている男性。
服装はここに来るまでに出会った人達のような服装ではあるが、でも若干違うような…もう少しいい服装に見える。
「ぁ…………リ((ムグッ」
「おーやっぱ見たことあると思えばクラースか!
よぉっ久しぶりだなぁ!」
(………リ?)
何故か男性はクラースの口を手で抑える。
何か言いかけていたような…?
とそれより、少し驚きだが…この二人。
「もしかして…知り合い??」
「ん?おう!
この塔に来ると最近見かけてたからなぁ!
まぁまぁ知り合いには入るぜ」
「プハッ))ち、ちょっと、……驚いたじゃないですか!」
「ん?あぁーすまんすまん!」
「いやそれ全然すまんと思ってないでしょう!」
………なんか仲良さそうにも見える??
知り合いなんだろうが、言葉の言い回しに仲が良いようにも見える。
「にしても、クラースが人を連れてるの初めて見たぜ。
こいつ、お前の友達なのか??」
そう思っていたら今度はアレクをじっと見てきた。
「あ、えっと…」
クラースは迷子の件を言おうか迷っている。
その様子にこれは自分で言うべきだと判断し、じっと見てくるその男性に顔をきちんと向けて言った。
「オレがその、この塔に行こうとして迷子になったんだ。
その時にクラースが困ってたオレに声をかけてくれて、ここまで一緒に来たんだ」
「…へぇ」
………何か変なことでも言ったっけ?
やけにあわわとクラースの表情と、こちらを探るような視線を向ける男性に、彼は少し居心地が悪くなる。
けれどそれはほんの少しだけだったようで、男性はまた先程のようにニカッと笑うと、
「あはは!いや、俺にいきなりそんな話し方してくるたぁ面白いなぁ!」
「え??」
「いや、普通さ。
年上って場合、言葉に気をつけるだろう?
それがお前もきたら普通に話してくるんだぞ、俺はお前の友達かって!」
「あ」
そう言われればそうだ。
この世界に来てから………というか、この国に来てから初めて敬語という敬語を使ってなかったかもしれない。
あの串焼き屋の獣族の男性の時も何ていうんだっけ?……フレンドリー??ではあったが敬語を使っていたというのに。
…まぁ、クラースも歳が近そうだからとはいえ初対面から特に気にせずにタメ口になっていたけれど。
「えっと………すみません、でした?」
「なんで疑問形??
いいっていいって!今更敬語使われても困るし」
「えっと…」
男性も男性で今更とはいえど敬語をと思って言ってみれば、この国の人達と同じくそのままでと笑った。
そのままでいいと結局彼にもクラース同様タメ口で話すこととなった。
「それにしても久しぶりにここに来たが、変わらず夕焼けが綺麗で心が浄化される〜」
(浄化…??)
「相変わらず大変なんですか?」
「まぁな、色々と問題が出来ちまって中々仕事が進まなくてさ」
男性が何か仕事をしているようで、それを知っているらしいクラースは心配そうに話す。
何の仕事かは分らないがどうも彼の表情からかなり大変な仕事のようである。少し遠い目をしていた。
「あ、仕事といやぁー………」
と、………そういえばとまた男性はこちらをじっと見る。
…今度はなんだろう??
「なぁ!白耳うさぎの獣族が金髪で青い帽子を被った少年を探してたみたいだったが、知ってるか??」
「白耳、………うさぎ…って」
……それ、まさか。
「その、」
「うん??」
「首元のリボンに………時計の形の飾りしてる…?」
「おう」
時間帯的に今は既に夕方。
あれからどれくらいかは分からないが、恐らくは5、6時間は経ってるはずだ。
やばい。
となると、その白耳の獣族というのは…!
「待ち合わせ場所に早く戻らないと!!」
「え?どうしたの急に」
「ほ、ほら!この国に連れてきてくれた人がいるって言ったでしょ?
その人と待ち合わせしてたんだ!
時間かかるだろうって事だから散歩してたけど…もうあれからだいぶ経ってるから!」
わぁどうしよう!探してる!?、慌てるアレク。
男性の言う獣族は特徴という特徴は一部だけだから恐らくとはなるが…ルーア、彼女であろう。
「アレク、落ち着いて!
何処で待ち合わせしてるの?」
「街の中央の噴水広場!」
クラースの質問に返答したものの、この等からその場所までどう行けばいいかもわからない。
早く彼女のもとに戻らないと、とは思うけど………このままじゃまた迷子になるんじゃ…。
「あぁ、あの広場か!
ならこっからすぐだな。
大丈夫さ、そうかからずに行けると思うぜ!」
「え?」
と思いきや、男性の言葉は簡単に行けるような言葉で。
「あ、そっか。
確か、あの道………。
リ………あなたは裏道をよく使ってますもんね」
「あはは、バレてたか!」
クラースもクラースであの道を行けばと言って大丈夫も彼の言葉に頷く。
彼が頷くなら、大丈夫なのかも…?
「てな訳で…………あーっと、お前名前は??」
そういえば名乗ってはいなかった、と今更に思う。
あれだノリノリな雰囲気のこの男性に乗せられて忘れていた。
「アレク…来栖川アレックス」
「アレックス…なるほど、それでアレクか!」
名前を聞くやいなや、男性がまたニカッと笑うと、
「んじゃアレク!
俺がお前を噴水広場までの道を案内すっから、頑張ってついてこいよ!」
「え?ありがとう………………って早っ!!」
「あははは…」
案内をすると言って男性が階段へ走っていく。
アレクはそれに返答したが、返答している内に………いつの間にかに姿が見えなくなった。
え、案内ってそういう案内??
ついてこいよとは言ってたけど、まさかの走りの速さで驚きである。
クラースは笑いながらも早く追いつこうと言い、彼も先に走っていった。
うん、クラースは知っていた感じか。
二人の姿は既になく、先に下まで降りている。
アレクはまたこの階段を今度は降りるのかと思いながらも、噴水広場で待つルーアを思い、早く行かなきゃと重い足を動かし上りで大変だった階段へと進むのだった。
こんにちは、ほしよるです。
色々とリアルが忙しくてちまちま書いてたから日本語おかしい気もしますが…今回はとりあえずここまでです。
その内に修正などもしてこうかと思います。
今月いけたらですがもう一話出せたらと思ってますのでよろしくお願いいたします…!(><;)