幕間 とある部屋にて
謁見が終わり、女王はその後自室に双子の弟リオーレと護衛と共に戻った。
部屋につくと女王は着替えるからと侍女達に頼み、自身の服装から寝間着に着替えさせてもらう。
それも終わり侍女達が女王の部屋から出たのを確認すると、リオーレは部屋の扉の間からひょっこりと顔を出した。
入っていいかを確認し、女王から了承を得ると直ぐ様彼は部屋に入り彼女の傍まで歩み寄った。
リオーレは口を開く。
「女王陛下」
「………今はいつものように呼んで構わん」
「………それなら、姉さんもその口調やめなって」
女王からの言葉に彼はそう返す。
彼女はそれに対してふぅとため息を一つすると、
「………そう、ね。
はぁ…、本当に嫌だわ慣れって。
舐められないようにあの口調をし始めただけだというのに」
いつの間にかそれが普通になってるなんて。
そう呟いた彼女の表情も雰囲気も年相応の一人の女性に今は変わっている。
そんな姉の様子にはは、とリオーレは苦笑いしつつも、いつもの姉の口調に少し安心する。
「………で?
何であんなこと言ったんだよ?」
「あんな事?」
「ほら、救世主なんて信じてないってやつ」
「あぁ…あれね」
数刻前、側近であるルーアが連れてきた一人の男の子に言った言葉。
思い出したように自身の言った言葉に対する答えを彼女はリオーレに言う。
「……どうも最近、国の様子がおかしいのよ。
だからなるべくこの国に滞在させないようにしたくてね」
国の様子がおかしい。
謁見の時には異変は起きてはないとまで言っていたというのに。
そんな言葉を言う理由は何か。
その理由を、リオーレはなんとなく分かっていた。
「………"平和過ぎる"…ってとこが?」
「ふふ、やっぱり分かってたのね。
だてに城を抜け出してるだけあるわね」
「い、今それ言うか…??」
"平和過ぎる"、この国の異変というのはそこであった。
昔からこの世界には魔獣というものが存在していた。
多少の前後はあるものの、魔獣の数はそれ程変わることはない。
あったとすれば………昔話にあるアリスが存在した遥か昔のことだろう。
魔獣は人を襲う。
その理由や原因はわかってないが、国も村々も例外なく、人がいる場所に現れては襲ってくる。
トランプの国シュピカルーレも同じ。
昔から魔獣の被害は多々あり、その度に何度も対処してきた。
怪我人も出ることもあったし、国内の建物を崩壊させられたこともあった。
…………だというのに。
「ここ数年、殆ど魔獣による被害がないのよ」
あっても指で数えられる程度までその被害はなくなっているのだ。
国民達は不思議に思いつつも、この平和に対して嬉しいそうにしているけれど。
けれど女王には、そんな平和が、今がつかの間の日々にしか、
「………何かの前兆である気がしてならない」
「…姉さん」
何か起きてしまうのではないかと、不安しかないのだ。
この国に、この世界に………目に見えぬ大きな何かが静かにうごめいてる気がして。
とはいえ…だ。
「あの子が異世界から来てるのは明らかよ。
例え救世主であろうとなかろうと、表だってはできなくても……裏ではちゃんとサポートしていけたらとは思ってる」
「姉さん…」
アレクという少年。
服装も似ても似つかぬもので、あの謁見での言動からも分かるこの世界を知らぬ者。
突然この世界に放り込まれてしまった子。
見知らぬ世界で彼がどうしていかなくてはならないのか、この世界に元々住む自分達にそれを理解してあげられるものはいない。
「だからねリオーレ、あなたにも協力してもらいたいのだけど」
「はは、言われなくても分かってるさ。
俺も俺なりにあいつをサポートする」
リオーレの言葉にありがとうとお礼を言って彼女は笑った。
不安であるのは変わらない。
それでも、彼女は心からただ願う。
何も起こらない事を。
この不安は…………きっと杞憂であると。
まだ続きます…!
たぶん0時周りが回らないかくらいで出せるかと…!(><;)




