1皿目 カレー大好き少女。勇者パーティーから抜ける
カレー大好きな戦隊ヒーローこと「イエロー」が異世界に飛ばされ、
カレーで人々を救う話です。
更新不定ですが、よろしくお願いいたします。
「おめぇ、カレーくせぇんだよぉ!!」
海の近い豪華なホテルの一室にて勇者が吠えた。原因はベッドの上でのんきにカレーを食べている少女だった。
「え~? そう? 今日のカレーは、この国のエビや貝で作った、シーフードカレーなんだけ…」
「黙れ、小娘!! 毎日、毎日、そんな下品な物を食しよって!! こちらの品格が落ちるわ!!」
高名な魔法使いの男がカレーを汚い食べ物と叫んだ。ドラゴンを使役する竜騎士の少女や、世界を旅し修行していた格闘家の女などもカレーを毛嫌いしていた。
「え? は? 何言って…私が何食べても、別にいいじゃ…」
「とにかく、その食べ物を俺たちの前に出すな!! いいなぁ!!?」
勇者が少女ことイエローの手にあったカレー皿を叩き落とした。
人より魔力が多く体が強いだけでギルドから推薦されたイエローを仲間たちは快く思っていなかった。
戦闘ではいつの間にか強敵を倒してしまい手柄を取られるは、カレーをふるまい人々から信用されているイエローを妬ましい気持ちもああり、勇者に怒りを向けられているイエローをみて内心嗤っていた。
「…しやがったな…」
「はぁ? なんだ、平民が勇者様に口答えなんぞ…ひぃ!?」
魔法使いの男が悲鳴を上げ気絶した。部屋の中の温度が急激に下がり勇者達は恐怖で体が震えた。
「カレーを粗末にしやがったな!! この馬鹿どもがぁ!!」
イエローの怒号の声が地震対策をされ強固な作りのはずのホテルを揺らした。
「ひぃ!!」
「み、耳がぁ!!」
「きゃぁ!!」
勇者がイエローの怒りにおびえ、格闘家の女が必死に耳を抑える。
竜騎士の少女が可愛らしい悲鳴を上げた。
「ぐるぅぅ、くぅ…」
部屋の傍にある大きな庭にいた竜騎士の少女の相棒であるドラゴンが主の危機に臨戦態勢を取るが、目の前にいるイエローを見て小さく声を鳴らすことしかできなかった。
「私のことはなんだって言えばいいさぁ!! 手柄なんざいくらでもくれてやる!! けどなぁ!! カレーだけは!! 私の命ともいえるカレーを侮辱するのはぜっっっったぃに許さない!!」
床に落ちたカレーを紙で拭きとりイエローは荷物をまとめる。
勇者パーティーに参戦し国からもらった装備品や金貨をベッドに投げ捨て小さなバックをつかみ勇者達に向け。
「カレーを無下にする奴らとは一緒にいたくない!! 私はもうこのパーティをやめる!! 魔王なんか知るか!!」
「お、おい!! 何を勝手に…」
勇者の言葉を聞かず、扉を強く閉めてイエローは勇者パーティーから去ってしまった。
イエローが部屋からいなくなり、恐怖の緊張が解けたのか竜騎士の少女と格闘家の女が冷や汗をかきながら笑う。
「な、何よ…た、食べ物を落としただけであんな…たく、食い意地の悪い頭の悪い奴ね…」
「本当だな。このパーティを抜けたらもう冒険なんてできないのになぁ。本当に馬鹿だなぁ」
口々にイエローを馬鹿にする女二人だった。
気絶した魔法使いの男はともかく。勇者はイエローを止める気などなく、むしろ臭い元がいなくなってせいせいしたと笑みを浮かべていた。
「ま、まぁ…これであの臭い食べ物とはおさばらだ。それに、どうせ一人じゃなにもできないからすぐに入れてくれって、泣きついてくるかもしれないしなぁ…」
イエローの怒りで足を震わせながらつぶやく勇者。そんな勇者を女二人とドラゴンが冷たい目で見つめるのであった。