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98/218

98.踏破者、事後処理についての説明を受ける。

フレンブリード領北部の魔境が消滅した翌日。

俺達はスリアドのギルドへと来ていた。


色々疲れていて昨日はスリアドの宿に直行して休んだため、ギルドへの報告が翌日になってしまったのだ。


ギルド内に入るとすぐにマスター室へと通される。

魔族の脅威は去ったというのに、職員の顔からは緊張の色が抜けていない。


もしかすると魔族を殲滅したという報は出回っていないのだろうか?


そんなことを考えながらマスター室内へ入るとそこには予想外の人物がいた。


「ジークさん、やりすぎですわ。シファお姉さまはお怪我ありませんでしたか?」


マスター室のソファにはティアが座っている。

その後ろにはランドールさんも控えている。

多分どこかにラマシュトゥも居るんだろう。


居るよな?あいつサボってないだろうな?


ちなみにギルドマスタのアセットは事務机で書類の処理をしている。

魔境関連の資料もあるのか、その量は前に来た時よりはるかに多い。


俺はティアの正面になる位置に座る。


「そっちの首尾はどうだい?うまく手柄にできそうか?」


俺の言葉を聞いてティアはため息をつく。


「ジークさん、あなたの狙いは『私の陣営には天災をも引き起こせる力の持ち主が居る』ことを周知させ、私が今回のようなちょっかいを受けないようにすることでしょうか?」


「ついでに言えば他の候補者が王戦から降りてくれたらラッキーくらいだな。」


「ですが、あの力は強大すぎます。あなたがそんなことをするような人だとは思っていませんが、その気になれば国の一つや二つ楽に壊滅させることが出来てしまうでしょう?その力を振りかざして王となっても誰も追従してくれはしません。私の目指すところは恐怖政治ではないのです。」


「そうかい。そりゃあ崇高なことで。」


俺の嫌味にまたため息をつくシファ。


「ですが、既にハンターギルドからは周辺の各ギルドへ通達が出ていますのであなたが無関係だとも言えません。そこでアセットさんと相談して今回の件はこうすることにしました。」


そう言ってシファが資料を俺に差し出す。

俺はそれを受け取り、目を通す。


ティアの王族専属騎士(ロイヤルナイト)であるジークは、今回の魔族襲撃の対応として敵拠点内に潜入していた。

そこで魔族が隕石を呼び寄せる大規模な儀式魔法を発動させようとしていることを知る。

ジークは魔法式に干渉し、隕石の落下地点を魔境に書き換え魔族拠点を脱出する。

同じく魔族対応に当たっていた他のハンターが巻き込まれるのを避けるため、天変地異が起きるとして各ギルドへ注意喚起を行った。


なるほど、直接隕石を落とした張本人だとは言わないが、ことの収束は王族専属騎士(ロイヤルナイト)の行動の結果とするのか。


「別にいいんじゃないか?他のギルドへどういった内容の連絡が行ったかは知らんが…。」


「よそのギルドへは天変地異が起るから近づくなとしか言ってない。説明も出来んしな。」


そこで事務作業を黙々と行っていたアセットが顔を上げて話に入ってきた。


「そう言えばエリオには詳細を話したな。お前さんの知り合いだときいていたのでな。」


「エリオ?」


どこかで聞いたような…聞いていないような…。

隣のシファを見るが、彼女も首を横に振る。


「ん?コウナードで共同作戦を行ったと言っていたぞ?」


「コウナード…あぁ、あの赤髪のAランクハンターか。」


「名前くらい覚えてやれよ…。」


アセットは若干困ったような表情をする。


「まぁ吹聴するような内容じゃないから心配は要らんと思うが、エリオにはこちらから言っておこう。」


「そうしていただけると助かりますわ。ではジークさんもそのように。」


「ああ、わかった。シファもそれでいいな?」


「良いわよ。ジークがそれでいいなら。」


俺は資料をティアに返そうとして、その資料が受け取られないことに気付く。


「ん?ティア?」


顔を上げてみると、ティアは大きく目を見開いたままフリーズしていた。


というか呼吸も止まってないかこれ?

何処からか刺客が送られてきていて感知不能の攻撃を仕掛けられたのか?


俺は周囲を見渡す。

だが、状況をよく呑み込めていないアセットとシファが居るだけだ。

ティアの後ろのランドールさんは苦笑いしている。


ランドールさんがこういう態度をとるということは、ティアのそっち系のスイッチが入ったということか?


状況を理解しようと努める俺をよそにランドールさんがティアの耳元で手を打つ。


「はっ!?」


ティアは耳元でで鳴り響いた音で意識を取り戻したようだ。

かと思えば身を乗り出してシファに詰め寄る。


「シ、シ、シファお姉さま!?先ほどジークさんの事を何とお呼びしました!?」


ああ、そう言う事か。


「ふ。ジークと呼んだのだ。」


何故か勝ち誇ったかのように胸を張るシファ。


「マママズいですわわわわ。このままではお二人の仲がどんどん進んで付け入るスキが無くなってしまいますわ!!」


ティアの顔は青ざめ、恐怖からか小刻みに震えている。


うーん。

先日1500の兵を率いて勝ち目のない戦いの指揮を取ることになったと言われた時よりひどい顔をしているな。

コイツにとっては国の一大事より恋慕の方が大切だと…この国大丈夫か?


「かくなる上は私もジークさんのお屋敷で生活を送るしかありませんわ!!」


「自分の立場忘れんなよお姫サマ。俺たちは先に帰るぞ。」


そう言って立ち上がる。

豹変したティアの態度に困惑の表情を浮かべるアセットが見えたが、わざわざフォローする気にはなれなかった。

書くタイミングを逃したので一応ここで捕捉を。

最素のギルド職員が緊張していたのはギルド内に王族が来ていたからです。

いきなり権力者が来てびびってしまったということですね!!

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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