97.踏破者、魔境を消滅させる。
隕石。
そう呼ぶには巨大すぎる大岩が落ちてくる。
シファの見立てでは、これが落ちたら近くの町が壊滅するくらいらしい。
そうなるとこの魔法を使用した俺は一気に咎人だな。
それはまずい。
「シファ、【探索】で読める落下軌道からこいつの着地点割り出せるか?」
「ちょっと待って…。おおよそだけど、森の中心近くだと思う。」
「よし、この森を壊滅させるのは後回しだ。あれをぶち壊すぞ。町に被害が出るのは避けないとな。」
そういうと俺はバハムートの背に立ち上がり、巨大な隕石を睨みつける。
まず最初に思い浮かぶのは【虚無】で吸い込んでしまうことだが、空中ではバハムートもシファも吸い込まれてしまう可能性が高い。
シファたちに避難してもらってからならありだが、それは最終手段だ。
「【終焉の息吹】」
そこでまず俺は遠距離からの魔法攻撃で隕石の破壊を試すことにした。
赤黒い光線が隕石に当たり大爆発を起こす。
爆発の起こった個所は大きく抉れ、周囲には亀裂が入っていた。
「よし、これで目途が立ちそうだな。【終焉の息吹】【終焉の息吹】【終焉の息吹】」
『さ、3発同時じゃと!?』
俺の眼前に魔法陣が3つ浮かび上がり、それぞれから光線が放たれる。
そして全ての光線が狙い違わず先ほどの抉れた箇所に当たり、大爆発を引き起こす。
煙が晴れると、先ほどまでより大きく抉れた傷跡がそこにはあった。
あの雰囲気からするともう一回打ち込めば割れそうだな。
「もう一回だ。【終焉の息吹】【終焉の息吹】【終焉の息吹】」
『さらに3発じゃと!?普通なら1発打つのでさえ多大な魔力を必要とするのじゃぞ?それを【厄災招来】を使用した後で、一体何発打てるのじゃ!?』
下で何か喚いているが今は無視だ。
再び放たれた光線が隕石を直撃する。
再び起こる大爆発。
だが、先ほどと違うのはそこから縦横無尽に亀裂が走る。
ミシミシとここまで聞こえそうな勢いで割れていく隕石。
どうやら粉砕に成功したようだ。
「いやジーク!!まだだよ!!」
ほっと一息つきそうになったところでシファが叫ぶ。
隕石を観察し直すと、どうやら粉砕に成功したのは突入している前方半分のようだ。
後ろ半分はまだ一塊のまま落下してくる。
というか粉砕した隕石の破片はそのまま落下してくるんじゃないか?
もともとの軌道から逸れて、まるで散弾のように落ちてくる。
これ、状況悪化してないか?
これだけ広範囲になったらもう【虚無】じゃカバーしきれないぞ?
あ、でも破片は小さいからそこまで大きな被害は出ないか?
とすれば残りはあの一塊だが…。
「シファ、あの塊でどのくらいの被害が出ると思う?」
「あれなら…、魔境は壊滅させられるくらいじゃないかな?でも着弾の余波は街まで届くと思う。」
「よし、それならあとはそこを防御すれば任務完了だ。バハムート。森の前まで下りてくれ。」
『わかった。』
バハムートは言われたとおりに急降下する。
ちらりと魔族の拠点を見やると、混乱した魔族たちが右往左往しているのが見えた。
もうこちらに意識を割く余裕はなく、攻撃もしてくる気配はない。
『着いたがもう落ちるぞ!?どうするつもりだ!?』
「これは私の【神の盾】でもカバーしきれないよ!?」
「心配しなくても俺がやる。これもとっておきだ。【冥府の門】」
俺が魔法を行使すると、地面から禍々しい雰囲気の門が出現する。
高さは100mを超え、幅は80m程だろうか。
そしてそれが何百門と横並びに次々と出現する。
森を囲うさながら壁のように。
「これは【冥府の門】!?異界と現世を繋げる!?なんてものを…。この門が開かれれば異界の魔物が溢れかえってしまう…。」
「心配要らん。これは俺が【開門】というキーワードを発しなければ開かない。」
「あ。」
『あ。』
「あ。」
「あ、あ、あ、あほーーーーーーー!!!!」
見ると呼び出した【冥府の門】がすべて開こうとしていた。
着弾直前の隕石。
開きかけの冥府の門。
突如襲来した隕石とバカでかい門に混乱する魔族。
何という混沌とした状況だ。
俺は思考を停止し、この後起こるであろう門の向こう側での惨事に情景を巡らす。
直後耳をつんざくような轟音と、衝撃波が門にぶつかることで起こる大地震のような振動が発生し、その門越しに巻きあがる粉塵が確認できた。
「【閉門】」
とりあえず俺は【冥府の門】を閉じておく。
門森のほうを向いて召喚していたので、門が開いたと思って飛び出した魔物は全部隕石に巻き込まれたとみていいだろう。
ある意味彼らが今回の一番の被害者になってしまったな。
後ろを確認すると、門で爆風や衝撃波が遮られた箇所の風景は変わっていなかった。
これなら町の方に大きな被害は出ていないだろう。
【冥府の門】を解除して門をすべて消滅させると、その先には燦燦たる光景が広がっていた。
遠目に見える巨大なクレーター。
その周囲の木々はなぎ倒され。一部は燃えている。
建造物の類は一切の跡を残さず。
生存している者は皆無であると断言できる。
そんな状況だった。
一度思考をクリアにする。
「よし、任務達成だ。帰るぞ。」
「もう、疲れたわ…。」
隣を見るとシファがぐったりとしていた。
この世界は人族・魔族が居て、神族は神界、魔神は魔界という事なる次元の世界に居ることになっています。
そしてこの他にも幻獣の住む幻界や今回の冥界などの異界が隣接しているという設定です。
なので冥界と魔界は別物という事です。
とにかくそう言う事です!!
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