89.踏破者、自爆魔法を封殺する。
『【審判の炎】』
ミカエルが魔法を発動した瞬間、その体が神々しく光り輝く。
その体の中に凄まじい量の魔力が収縮していくのが分かる。
いつの間にかミカエルの装備する鎧の上に魔法陣と思われる幾何学模様が浮かんでいる。
感覚的にヤバいと感じる。
「ジーク!!それは全生命力を使う自爆魔法だ!!使わせると王都まで被害が出る!!」
王都まで!?
10km位離れてるんだぞ!?
だが、自爆魔法と言うからには術者本人を起点とする魔法なのだろう。
それだけ分かれば対処のしようはある。
『今更どうすることも出来まい!!この命と引き換えに貴様らはここで確実に葬る!!』
ミカエルは俺たちの死を確信しているようだった。
半径10kmにも及ぶ広範囲魔法から逃れることは出来ないと考えているようだ。
実際、魔法発動までどれくらいあるか分からないが10秒程度だとしても逃げ切ることは不可能だろう。
だが、対処の方法は逃げる以外にもある。
「シファ!!踏ん張れよ!!【虚無】!!」
ここが平原で良かった。
俺が放った魔法は全てを吸い込む黒点を放つ魔法。
一つで半径100㎜くらいの範囲のあらゆるものを引きずりこむそれを、ミカエルの周囲に30個ほど出現させる。
即座に周囲にある物を吸い込み始める黒点。
岩や木、天使の亡骸と吸い込める物は何でも吸い込む。
そしてそれは発動した魔法も例外ではなかった。
【虚無】を発動した一瞬後に発動した【審判の炎】。
ミカエルの体が一層強く輝いたかと思うと、大爆発と共に紅蓮の炎が生み出される。
だが、本来ならば周囲を焦がしつくしたはずであるその炎は周囲に展開された【虚無】へと飲み込まれていく。
十数秒は生み出される炎と吸い込まれていく炎を見続けただろうか。
そろそろ【虚無】の効果時間が切れそうだから追加で発動させておくかと思い始めたくらいのタイミングで炎の勢いが陰り始めた。
その後すぐに炎は消えた。
【虚無】を解除して周囲を確認するが、そこにはすべてが無くなった平原が広がっていた。
勿論ミカエルの亡骸もない。
炎に焼かれたか、吸い込まれたか…どちらでもいいが。
「今までで一番死を近くに感じたわ…。」
シファは【神の盾】を複数枚地面に突き立てるような形で展開しており、それで体を支えるようにして【虚無】の吸い込みに抗っていたようだ。
「確かに…。【審判の炎】か、命を使う魔法は流石に強力だな。」
「そっちじゃないわ…。【虚無】をあんな数出すんだから吸引力がとんでもないことになってたわよ!!【審判の炎】は広範囲を焼き尽くす魔法だけど、私個人なら【神の盾】を全方位展開すれば凌げるの!!」
「そうなのか?あれ、術者は吸い込まれない仕様だから体感できないんだよな。1個なら【アビス】で使われたことあるんだが。」
80階層のボスであるフェンリルが使ってきたのだ。
あれは鉄壁じゃ防げないから焦ったな。
「はぁ。次からは私のいないときにしてよね…。じゃあ帰りましょうか?いろいろ疲れたわ。」
そう言ってシファは王都へ向けて歩き出す。
俺はその行為に首をかしげる。
「何言ってるんだ?まだ続けるぞ?もう一回同じ魔力量で召喚魔法を試すに決まっているじゃないか。」
シファの動きがピタッと止まる。
2秒ほどたっぷり時間を掛けて止まった後、ゆっくりとこちらへ振り返る。
その顔はひきつった笑い顔のようになっていた。
おおう…。
これは美人が台無しな奴だ。
「…ジーク?…何言ってるの?」
シファは本気で分からない、というか分かり合えないという雰囲気を晒しだしている。
…仕方ない、ここはしっかりと説明して納得してもらう所だろう。
この後も彼女の協力は必要だしな。
「天使を召喚していた時は毎回別個体だっただろ?でも天使は無数にいるから何度召喚しても同じような結果になった。でももっと上位の者を召喚した後、同じように召喚魔法を使った場合どうなるのかってのが気になるだろ?」
「?」
「今ミカエルは死んだと思うんだけど、同じミカエルが召喚されるのか。同程度の強さの天使が召喚されるのか、はたまた別の何かが召喚されるのか…。もしかしたら俺たちの望みを叶えれる何かが召喚されることも十分考えられる。」
「??」
「まぁさっきのミカエル程度の強さの奴なら問題なく処理できるし、次行ってみよう。」
「ちょっと待った!!」
早速闇魔法で魔法陣を描き始めた俺をシファが制した。
「なに!?ジークはここで再びあの大立ち回りをするつもりなの!?私巻き込まれて死にそうになってたんだけど!?」
「死ななかったじゃん。」
「運よく地上に居てね!!様子見で【天翔】でも使って空中に居たらなすすべなく飲み込まれてたわよ!!」
「使ってなかったからいいじゃん。」
「あなたはさらっと周囲を巻き込む手段取るから本気目の戦いするときはこっちが怖いの!!」
「そんなこと言われてもな…魔法陣出来ちゃったし。ほい、召喚。」
俺の周囲に魔力放出による突風が吹き荒れる。
「人の話をきけぇぇぇぇえええ!!」
突風と共にシファの叫び声が周囲に響いた。
「ほい、召喚」の軽さが素晴らしい回でしたね。
次は何が(誰が)呼ばれることやら…。
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