86.踏破者、気分を害する。
「フレンブリード領の対外的な抑止力の低下は主に兵士の減少によるものです。」
ティアはフレンブリード領の現状について説明を続ける。
確かフレンブリード領の守護兵は5000近くいたはずだ。
「私を襲撃した兵の中に守護兵の中心人物がいたようです。フレンブリード元辺境伯の凶行が明るみになり、同時に主要人物がそれに巻き込まれ殉職する。それが兵士たちの士気を落としたようで、他領へ移ってしまう兵士が後を絶たないそうです。」
その中心人物をやっちゃったのって俺だよな?
まぁ無関係を決め込むつもりもないが、意外と直接的に関与しているのかもしれない。
「んで、今のフレンブリード領の守備能力はどうなってるんだ?」
「…派遣している代官が言うには、兵士の数は1000人程度との事です。」
「思ったより少ないな。」
「はい。内政も安定しておらず、魔族の侵攻があっても抗う術がないという事で派兵の要求が上がってきたのです。」
「派兵要求か。だが、それだけの数を常時補填し続けるわけにもいかんだろう?」
「ええ、常駐で派遣できるのは1000人程度でしょう。そして、それでは魔族への対抗手段としては弱い。」
もともと5000の兵で魔族との均衡が保たれていたのだから、その数が2000になったところで侵攻を止めてはくれんよな。
「そこで、私が王城から1500の兵を率いて魔境へ攻め入り、魔族の拠点破壊を行う事になりました。」
「は?」
なんだそりゃ?
突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込めばいいか迷うぞ?
「えーと、まずなんでティアが指揮を執ることになったんだ?」
俺の質問にティアは少し表情を曇らせる。
「昨日、周辺諸国の近況報告会がありまして、次期王候補の私たちもその会議に参加していたのです。そこでフレンブリード領の報告の際に先ほどの話が出て、一部の人間がフレンブリード元辺境伯の拿捕のタイミングや手法がお粗末であるせいでこの事態が引き起こされたと主張し始めたのです。」
「んな阿保な。」
思わず突っ込んでしまったが、そんな理論あるか?
「私もそう思いますが、他人のやり方に異を唱えようと思えば何とでもいいようはありますから。問題は、その意見に賛同する人の数が多かったことですね。おそらく、お兄様方やお姉さまの派閥の人間でしょう。」
「意見が無理筋でも数を揃えられると無視できなくなるという事か。」
俺の中に沸々と怒りの感情が込み上げてくる。
俺はこう言った腐った政治の世界が嫌いなのだ。
「そこで、私は正面からその意見を潰すべく自ら出兵して事の対処に当たることにしました。この問題を他人に任せてしまうとまたその結果について責任言及されるでしょうから。逆に収拾すれば王戦にプラスになることも考えられます。」
ティアはこの腐った政界を変えるべく王戦の勝利を目指している。
それは理解している。
だが…。
「そこで、ジークさんたちにも今回の作戦に参加してほしいのです。手伝っていただけませんか?」
俺は大きく息を吐く。
「それは無理だな。俺達は2週間後に王都で外せない用事がある。それに、俺はその腐った世界に関わりたくない。」
「それは…っ!!」
ティアの表情に焦りの色が浮かぶ。
元より1500の兵で魔境への攻撃作戦など無理がある。
大方俺たちの戦力を当てにしていたのだろう。
「それにそのクソ殿を黙らせた方が手っ取り早い。今から俺がこの城の人間全員を沈めてやろうか?そうすればお前が王となって万事解決だ。」
「…それはダメですわ。正規の手順で無ければ納得しないものが現れるでしょう。新たな火種を生むことになります。私は、正規の手順で王となり、この国を改革していくことを目指しています。」
「志は立派だが、クソどもを相手にするには正直すぎるんじゃないか?今回みたいに相手の良いようにやられてりゃいつか潰されるぞ。」
「それでも…。私はこの道を歩むと決めたのです。ですのでどうか。」
そう言うとティアは立ち上がり頭を下げる。
相変わらず王族とは思えない行動を平気でする。
「…200万ギラなら請け負う。どうだ。」
その言葉にティアは表情が幾分か柔らかくなる。
「ぜひお願いします。…2週間後の予定の件は申し訳ありません。」
王都からフレンブリード領へ行って帰るだけでも2週間はかかるだろう。
軍行ならもっとかかるはずだ。
ティアも当然そう言ったスケジュールを考えているはずだ。
だが、俺はそんなに時間を無駄にするつもりはない。
「言っておくが1500程度の兵なんぞ必要ないからな?護衛だけ連れて魔境を目指せ。俺が先行して壊滅させておくから、それがちゃんとティアの手柄になるように報告しろ。…そうだな、5日後くらいに行動を起こすようにするから、王族専属騎士を先行派兵して作戦行動を開始するとでも周知しておけば何とかなるんじゃないか?」
「え?…え?」
「…もう一度言うぞ?今日から5日後、魔族の拠点は壊滅させる。その手柄がちゃんと自分の所に入るよう動け。俺たちはその作戦行動が終わったら王都に戻る。俺たちの2週間後の予定はそのままだ。」
「…そんなことが…?相手の兵力も分からないのに…!?」
「今の俺は多少気が立っているからな。少しストレス発散したい気分なんだ。それにこの際だ、魔境は無くなった方が良いだろう。」
そう言って俺は立ち上がると、呆然とするティアたちを残して部屋を後にした。
クーデターってなじみがなさ過ぎてなんか悪いことみたいなイメージがあるんですよね…。
まぁあまり正攻法ではないだろうということでティアさんに却下してもらうことになりました。
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