82.踏破者、直接依頼の結果報告をする。
俺とシファがアルカディア魔道具研究所に着くと、顔を覚えてくれていたのか守衛さんがすぐに取り次いでくれた。
守衛さんの視線を追うとシファに行きつくのだが…。
まぁ俺はそんな特徴的な顔してないから仕方ないけどさ。
少し待つと、前回と同じ黒髪ボブの女性研究員が現れる。
「お待たせしました~。お二方ともご無事で何よりです~。」
「?」
俺が何の話か理解できないでいると、その研究員は状況を説明しだした。
「実は~、今朝【幻獣園】が崩壊したという情報が入って来まして~。タイミング的にお二人が巻き込まれたんじゃないかってちょっと騒ぎになったんですよ~。」
なるほど。
恐らくヴァン侯爵経由の情報だろう。
もしかしたら俺たちがアルカディア魔道具研究所の依頼でダンジョンに潜っていたことから何らかの照会を受けた可能性もあるな。
ただ、巻き込まれたんじゃなくて崩壊を発生させた原因なんだよな。
バレなきゃいいけど。
「そりゃ心配させて悪かったな。確かに巻き込まれたが、強制的に外に出されただけで怪我の一つも負ってないよ。」
「それは良かったです~。まぁその後の情報で溢れ出しじゃなく踏破のようだって情報も来たんですけどね~。何が本当かわかりませんから~。」
俺達はそのまま研究員に連れられ、前回と同じ客室に案内される。
そこには既にジルオールが待機していた。
入室した俺達を確認して安堵したように見える。
相変わらずの長髪で表情は伺えないので、何となくの雰囲気での判断だが…。
「二人とも無事で何よりです。【幻獣園】の事は彼女から聞きましたか?」
「ええ~、お話させていただきました~。お二方とも巻き込まれたそうですが、怪我もないそうです~。」
俺達を案内した研究員はそのまま退室するかと思いきやジルオールの隣に腰かける。
何かあるのかと訝しがっていると、空気を察知したジルオールが説明してくれた。
「あぁ、紹介していませんでしたね。彼女は僕の姉でエレオノールと言います。ここの研究所長です。」
「所長ですか!?」
「所長です~。改めてよろしくお願いします~。」
そう言って微笑む黒髪ボブ丸メガネ、もといエレオノールさん。
つまり、この研究所は初めての訪問者を所長に案内させていたという訳だ。
なんでそんなことをするのかと疑問に思わないわけがない。
だが、そう言った反応も慣れているのだろう。
「実は彼女の趣味みたいなもんでね。偉い人扱いされるのを嫌がって内情を知らない人に絡みたがるんですよ。自覚がなくて困ってます。」
「…心中お察しします。」
「む~。どういう意味ですか~。」
まぁ彼女が所長というのであれば同席することに異議はない。
俺は今回のいらの結果報告を行うことにする。
「では、今回訪問させていただいた理由から…。依頼の結果報告に来ました。」
「そうですね。残念ですが、【幻獣園】が崩壊してしまった以上、達成は不可能ですから…。」
「こちらが依頼の【有角馬】の角になります。ご確認ください。」
「せめてもう少し浅い階層に【有角馬】が出るのであれば間に合ったかもしれなかったのに…。」
「実は【有角馬】の角、2本入手できたのですが2本とも必要でしょうか。」
「ああ、安心してください。依頼未達成での違約金みたいな制度はありませんから。【直接契約】ですからランク査定にももちろん影響しません。」
「2人とも話噛み合ってないよ~。ジル、【有角馬】の角取ってきてくれたって~。」
「え?」
ジルオールはテーブルに並べられた【有角馬】の角を見る。
「えええ!?【有角馬】の角!?いったいどうやって!?しかも2本!?」
「実は3階層で【有角馬】が出現したんです。もしかしたらダンジョン崩壊の前兆みたいなのがあったのかもしれません。ラッキーでしたね。」
そう言って俺は微笑む。
勿論、俺たちは【有角馬】など討伐していない。
これは【暴食竜】の腹の中にあったものだ。
奴は他の魔物を食らい尽くしながら階層移動をしていたようなので、その中に【有角馬】もいたのだろう。
【有角馬】の角は再生の象徴と言われているが、それ自体にも再生能力が備わっているのだろう、【暴食竜】の腹の中にあってなお消化されずにずっと残っていたようだ。
それがシュラと同時に吐き出されたため、浅い階層で入手できたという訳だ。
まぁ実は2本じゃなくで15本あるのだが…。
「確かに【有角馬】の角です。ありがとうございます!!これで魔道具の完成に近づきました!!」
俺は依頼達成の報酬として80万ギラを受け取った。
大金だが、ギルドを通すとハンターへの報酬は50万ギラくらいになるだろうか。
【直接契約】のメリットの部分だ。
貰うものも貰ったので、次は俺たちの本題について話していこう。
「今回はありがとうございました。他に依頼あったりしますか?請け負いますよ。」
出来るだけ表情を崩さずに聞いてみる。
ヴァン侯爵関係の依頼があればそれをとっかかりに調査を進めることが出来るかもしれない。
無ければ諦めるが…。
どうだ?
「他の依頼ですか…。あるにはあるのですが…。う~ん。」
ジルオールは踏ん切りがつかないという感じで悩んでいる。
じっと次の言葉を待っていると、予想外の所から声が出た。
「ジル、私から話すわ。」
そう言ったのはエレオノールさんだった。
普段の緩い雰囲気はない。
「ジークさん、腹を割って話しましょう。先日この建屋に誰かが侵入した形跡があったんですが、あなたですね?」
エレオノールさんの瞳は真っすぐ俺を見据えている。
嘘は付けないな。
俺にそう感じさせるほどの力がそこにはあった。
普段の緩い姿は世を忍ぶ仮の姿というよくあるやつです。
現実世界にこんな人いるのかな…。
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