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80.踏破者、朝の鍛錬をする。(剣姫、二度寝する。)

「ん…。」


朝日を浴びて目が覚める。

すぐにそこが自室であるかと、周りに人が居ない事を確認する。

昨晩は特にアクシデントはなかったようだ。

ゆっくり休めた。


まだ少し意識は覚醒しきっていないが、朝の鍛錬をしに木刀を片手に外へ出る。

殺風景な庭に出ると、周囲に何もないことを確認して負荷をかける。


「【(プレス)】」


瞬間、体が異様に重くなる。

同時に意識もはっきりとする。


自身を中心とした半径2mの範囲への重力強化。

一般人であれば立っていられないレベルだろうか。

俺はこの重力中で素振りを開始する。

まずは真っ向切りの型から。


「1…2…3…」


流石に朝の鍛錬では各型1万回の素振りをしたりはしない。

適度に汗をかきながら次々へと素振りを行っていく。


「ん?」


型の切り替え時に一瞬集中力が切れた瞬間だった。

俺は自身に向けられている視線に気が付いた。


視線のする方向を見やると、そこには隣の家の住人である【剣姫】レクシアが立っており、じっとこちらを凝視していた。

鎧などの装備はしておらず、動きやすそうなシャツにパンツスタイルだが、その手には木剣が握られている。

どうも俺と同じく朝の鍛錬をしに庭に出てきたところで俺を見かけたという状況のようだ。


こんなあからさまな視線に気づかないほど素振りに集中していたか。

こう、集中しながらも周囲への警戒も出来るようにならねば一流とはいえんな。

武の道は険しい。


何となくそれっぽいことを考えて気の引き締めを図る俺。

腕を組んでうんうん頷く俺に対し、驚くことにレクシアが声をかけてきた。


「お前、今使っていたのは魔法か?重力魔法?そんな高度な魔法が使えるのか?」


俺は改めて周囲を見やる。

俺を中心に半径2mの範囲の芝がぺちゃんこに潰れていた。

重力場というのは目には見えないが、周囲環境から状況を察したのだろう。

まぁ別に隠すことでもないがな。


「まあいろいろあってな。それがどうかしたか?」


「…そんなどうでもいいことのように。そうか、私はその程度(・・・・・・)という事か。」


「ん?何が言いたいんだ?」


「…その魔法、私にも使ってみてくれないか?」


これは意外な申し出だった。

もしかしたら彼女は朝の鍛錬時にもっと負荷をかけたくていい方法がないか探していたのかもしれない。

まぁちょっと付き合うくらいなら別にいいのだが、毎朝それを要求されても困るな。


「別にいいが、毎日はやったりしないぞ?」


「ああ、ちょっと体験してみたいだけだ。」


「そういう事ならいいが、俺の負荷だと少しきついかな?ちょっと弱めにするか?」


「いや、さっきのと同じ負荷で頼む。」


俺のと同じ負荷か…。

まぁ本人がやりたいって言ってるんだしいいか。


この時の俺は軽い気持ちでその要望に応えることにしてしまった。


柵を越えてレクシアの家に庭に移動する。

彼女は頷くと木剣を構える。

恐らくはどこかの流派の構えだろう。

かなり様になっている。


そういえば俺は刀の基本の素振りしかやってこなかった。

それはその他の事を教わる機会がなかったからなのだが。

今以上に強くなるため、どこかの流派に属して修行を行うのもよさそうだ。


そんなことを考えながら魔法を行使する。

負荷は先ほどと同じだ。


「【(プレス)】」


レクシアを中心とした半径2mの範囲に重力場が形成される。


「か…っは。」


瞬間、レクシアが手にしている木剣のあまりの重さに構えを維持できなくなり、木剣を落としてしまう。


それを見た俺は眉をしかめる。

剣士が剣を手放すのはダメだろう。

死んだも同然だ。


そう思い叱咤してやろうと思ったのだが…。


レクシアは加えられた重力に耐え切れず片膝をつく。


ボキ


膝をついた衝撃で大腿骨が折れた。


「え?」


驚く俺をよそに上半身を揺らした入れ込むレクシア。

地面についた両手もあえなく骨が砕け、うつぶせに倒れこむ。

その顔がこちらを向いたのだが、白目をむいていた。


「ええええええぇぇぇぇぇぇぇええええ!?」


すぐさま【(プレス)】を解除し彼女に近寄る。


完全に失神していた。

呼吸はしているが、荒い。

もしかしたら内臓にもダメージがあるかもしれない。


「シファさーん!!」


俺は回復魔法の使えるシファを呼びに自宅へと駆け込んだ。




◇◇◇◇◇




side レクシア


朝目覚めると着替えて庭に出る。

毎朝の日課だが、ここ最近気乗りしていないのが自分でも分かっている。


原因は王城での敗北。

私は第三王女の王族専属騎士(ロイヤルナイト)と紹介された名前も聞かぬハンターに負けた。

【舞剣術】の才を得た私は剣の腕を磨きながら【剣姫】と称されるまでになった。

剣の腕はこの国でも1,2位を争うものと自負していたが、その自信も砕かれた。


あの男の強さは異常だった。

私は抜剣すらしていない相手に全く手も足も出なかったのだ。

いったいどうすればあそこまでの強さを手に入れられるのか。


知りたい。


そう考えていると、隣の家の庭で木刀を振っているその男が視界に入った。

そう、この男はあろうことか長らく無人だった私の隣の家を拠点にしていたのだ。


これはチャンスだ。

奴の鍛錬法を見ることにした。


…一見するとそれはただの素振りだった。

それも刀を使った素振りとしては基本的な。

ただ、異常な点が2つ見つかる。


1つはその素振りが綺麗すぎるという事。

一切の歪みがなく、全ての素振りが完璧な軌道を描いているという事。

私ですら完璧な軌道の素振りは10回に5~7回程度、回数を重ねて疲労が出てくればもっと下がる。


もう1つは彼の周りにある場だ。

眼に見えるわけではないが、足元の芝が綺麗に彼を中心とした円形の範囲に押しつぶされている。

まさか…重力魔法!?。


そうしていると彼もこちらに気付いたようだ。

疑問に思っていることを聞いてみたが、やはり重力魔法だったようだ。


てっきり剣士かと思っていたが、こんな高等魔法まで使えるとは…

そして私との手合わせはまったくもって本気ではなかったという事だ。

まぁ抜刀すらしていなかったのでそれは分かり切っていたのだが…。


本当は話すのも嫌だが、彼の強さの一端を知った私はもっと強くなるために彼の練習法を体験させるように要求した。


彼にとってそれは些細なことだったのか、特に条件もなく了承される。

この時私は正直、ワクワクしていたのだと思う。

より強くなるための手掛かりをつかんだ。

もっと強くなれる。

そう言った感情に支配されていた。


「【(プレス)】」


その言葉を聞いて私の視界は暗転した。

レクシアさん再登場です。ハードな二度寝でしたね。

次回もレクシアさん回です。彼女の素顔が明らかになる?

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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