75.踏破者、【幻獣園】を下りていく。
【幻獣園】は森林階層が続いているようだ。
3階までは特に脅威となる魔物も出現せず、そのほとんどをレベッカ1人(厳密にはパズズもいるが)で処理できていた。
途中に出てきた【蠕虫】だけはダメだったが…。
生理的に受け付けないらしく、まともに対峙できなかったので俺が処理した。
今後例えばハンターとしてやっていくのであればこういった苦手と言うのは克服していかなければならないが、今はまだいいだろう。
ハンターとしてやっていくかも決まっているわけではないしな。
「【有角馬】が確認されたのって9階層でしたっけ?」
「そう言う話だな。それまでは基本レベッカに魔物の対応はやってもらおうかと思っている。」
「ハイ、頑張ります!!」
「例の【竜種】が出てきたときには俺がやる。」
ぶっちゃけ、俺的にはそっちの方が楽しみだったりする。
高ランクハンターが負けるような相手だ。
Sランク魔物であったとしても驚きはしない。
というかそうであってほしい!!
「主殿、不確定要素の話なのに表情筋の統制が取れてないわ。凄く嬉しそうよ。」
若干呆れの入ったシファの指摘が入る。
おっといかんいかん。
戦闘狂に間違えられても敵わないし気を付けなければ。
「このペースなら7階層くらいでキャンプか?3日もあれば往復できそうだな。」
因みにハンターギルドが推奨しているダンジョンアタックの1日の潜層は5階だ。
上級ダンジョンでは4階が推奨されている。
これは戦闘による疲れだけを考慮したものではなく、テント設営や罠、バリケードの設置、食事の準備等を行う時間も加味されてのものだ。
特に休憩中の安全確保は大変で、罠やバリケードを張ったうえで見張りを交代で行いながらと言うのが基本だ。
このため、ダンジョンアタックは4人以上のパーティで行うことも推奨されている。
「キャンプ!!楽しみ~!!」
目の前の女の子はキャンプの単語に心躍らせているが…。
まぁうちには便利奴隷のシファさんが居るから何とでもなるだろう。
「む。主殿から理不尽オーラが検出されたわ。」
「そのセンサー優秀だな。」
「こんなダンジョンの中で求められても応じる準備はあるよ。」
「求めねぇから安心しろ。」
というかここにはレベッカが居るんだぞ?
TPO考えろよ?
シファはそんな事全く意に介していないようだ。
後ででもレベッカの前でそういう発言をしないように言い含めるべきか悩んでいると、徐にシファが森の奥を指さす。
「あっちの方角から【大角鹿】が1体近づいてきてるよ。」
「【大角鹿】!!さっきは手こずっちゃったから今度は慎重にいこう。バズズおじちゃん。行くよ!!」
「我はおじちゃんではない。」
レベッカが姿勢を低くして【大角鹿】の側面を取るため迂回して森に入る。
【大角鹿】はその名の通り非常に大きな角を有しており、まともに正面から対峙するとその硬質な角が邪魔で体を攻撃しにくいという厄介な魔物だ。
レベッカは少し前にこの魔物と対峙した時、攻撃の直前で存在に気付かれてしまっており、何発かその角に矢を弾かれてしまっていた。
「しかし、気配の消し方も見事だな。何も教えてないのに。」
「おそらく、エルフの血が入っているからでしょうね。彼らは狩猟民族ですから。」
「お、撃ったな。」
俺とシファが居る位置にも矢の風切り音が聞こえる。
そして一瞬遅れて低いうめき声。
俺が横目にシファを見やると、彼女は頷く。
「【大角鹿】の生体反応は消えました。」
どうやら一撃で討伐を完了したらしい。
【大角鹿】はDランク上位なので、レベッカは既にCランク程度の戦闘力がありそうだ。
いや、待てよ?パズズの援護を受けているので実際はそこまでではないか?
天狗にならずに鍛錬を続けられるよう指導していかねなならんな。
そんなことを考えているとレベッカが俺たちの所まで帰ってきた。
後ろ手にパズズが【浮遊】で浮かして運びやすくしている【大角鹿】を引きずっている。
【大角鹿】は側頭部を撃ち抜かれて死んでいた。
「今度は狙撃成功したのです!!角も傷つかずに採取できるのです!!」
【大角鹿】の角は硬くて大きいため、魔物武具の作成に重宝される。
ギルドでも比較的高額で取引される。
レベッカはどうやら1匹目の【大角鹿】討伐の際に角を矢で傷付けたことを気にしていたらしい。
実際には素材の表面は削り落とすことが多いため買取価格に大きな影響が出ないことがほとんどなのだがな。
俺は【大角鹿】の角を根元からへし折り、シファに渡す。
シファはそれを異空間に収納する。
【幻獣園】では【有角馬】以外にも希少であったり有用な素材を採取できる魔獣が多いらしい。
管理ダンジョンでなければ連日ハンターが押し寄せる人気ダンジョンになっていたであろう。
その利権をヴァン侯爵が握っているという事からも彼の権力の強さがうかがえるような気がするな。
「さて、ちょうどいいしこの鹿肉で昼飯にするか。」
時間はだいたいそのくらいだろう。
俺としては当然の提案だったのだが…。
「え?魔物の肉を食べるんですか??」
1人驚いてるやつがいるな。
どうやら魔物肉の味を知らないようだ。
これは反応が楽しみだな。
魔物肉を食べる派の話と食べない派の話がありますよね。
私は断然食べる派です。未知の味っていうだけで想像が膨らみます。
異世界グルメ小説にならないように気を付けなければ…。
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