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70.踏破者、研究所の依頼を受ける。

「今回調達を依頼したいのは【有角馬(ユニコーン)】の角です。」


「ほう、【有角馬(ユニコーン)】ですか。」


これはまた珍しいものを…と言うのが正直な俺の感想だった。

有角馬(ユニコーン)】はCランクに該当する魔物で、その角が良薬の薬となることが広く知られている。

そして、出現自体(・・・・)が非常に稀という事で有名な魔物だ。


「管理ダンジョンで【有角馬(ユニコーン)】が出るという情報は初耳です。ですが、存在が確認されていれば討伐自体は難しくないのでは?」


そう、【有角馬(ユニコーン)】自体は高ランクハンターでなくとも討伐可能だ。

わざわざ初見のハンターと契約を結ぶまでもない。


「はい、【有角馬(ユニコーン)】自体はそうなんですが…。実はこの依頼、何組ものハンターが失敗しているんです。どうも【有角馬(ユニコーン)】のいる区域に行く前に【竜種(ドラゴン)】が出現するらしくて…。」


「なるほど、【竜種(ドラゴン)】を倒さなければ【有角馬(ユニコーン)】の所まで行けないのですね。」


「そのようです。…我々がこの依頼をしたハンターの中には連絡が取れなくなった方々もいます。おそらくは亡くなってしまったものと思います。どうか準備だけは怠らずに、無理はしないようにお願いします。」


そう言ってジルオールは頭を下げる。

その姿勢からは確かにハンターに対する誠意が感じられた。


「善処しますよ。管理ダンジョンの事を聞いても?」


俺がそう問いかけるとジルオールは1枚の資料を取り出してテーブルに置いた。

どうやら王国周辺の地図のようだ。


「これは王都周辺の地図です。目的の管理ダンジョンはこの森のなかにあります。【幻獣園】と呼ばれるダンジョンで、ヴァン侯爵閣下の管理下にあります。」


「ヴァン侯爵閣下ですか。」


「ええ、閣下はこのアルカディア魔道具研究所のスポンサーでもあります。ですので今回の研究も許可が下りたようなものなんですよね。あ、ダンジョンへはこの記章を着用して行っていただければ守衛を通過できるようになっています。」


そう言って記章を手渡される。

双頭の蛇が1本の剣に巻き付いているような飾りが施されている。


「それはヴァン侯爵家の紋章です。」


「…趣味が良いとは言えませんね。」


私のその言い方に苦笑するジルオール。

どうやら彼も同じように思っているようだった。


そしてここからは調査の時間だ。

まずはこの依頼について探りを入れてみようか。


「もう一つお聞きしても良いですか?」


「はい。なんでしょうか。」


「この【有角馬(ユニコーン)】の角、どんな魔道具に使用されるんですか?」


その質問に場の空気がにわかに緊張する。

今の研究内容教えて下さいと言っているので当然なのだが。


「…気になりますか?」


「ええ。ぶっちゃけて言うと、世のためにならない研究とかだったら降りるまであります。」


俺がそう言うと、ジルオールは髪で隠れた顔を歪ませる。

かと思ったらそのまま声を出して笑いだしてしまった。


その様子にあっけにとられてしまった。


「いや、失礼。安心していただいて大丈夫ですよ。私も魔道具は人の為になってこそという信念を持っておりますので。【有角馬(ユニコーン)】の角が必要となっているのは回復装具作りですね。」


「回復装具ですか?」


「ええ、具体的には包帯型の魔道具で、巻きつけた部位の物理的損傷を治癒する効果の物です。治癒師のいない村なんかへの配備を目指しています。骨折位なら数日巻いていれば治るという位の効果を狙っているんですが、なかなか…。」


確かに治癒師は貴重な存在だ。

大きな町や王都であれば問題ないが、地方の農村などになると治癒師が常時駐在しているところは少ない。

そう言ったところでは小さな怪我が元で最悪亡くなってしまうようなケースすらあるそうだ。


そこに回復装具か…。


「分かりました。そう言う事でしたら喜んで協力します。」


「ありがとうございます。ご報告をお待ちしております。」


こうして俺たちは研究所を後にすることにした。

帰りも客室まで案内してくれた女性研究員の方が先導してくれる。

自分たちが居た客室までのルート位は覚えられないかと周囲を観察しながら歩く。

が、やはり建物の構造は把握出来ない。

歪な通路作りだけでなく、目印になるものも極端に少ないというのもありそうだ。


守衛まで到着し、研究員に礼を言って敷地を出る。

依頼達成報告は別に行わなければならないので、そのままギルドに向かって歩みを進める。


「シファ、どう思う?」


「話を聞いた限りはシロかな?嘘ついてるようには見えなかったかな。」


「俺も同意見だ。が、確認は必要だな。あそこに侵入できそうか?」


俺としては、ヴァン侯爵家とのつながりや後ろ暗い研究を行っているのかの情報が欲しい所だ。

ジルオールが関与していなくても特定の研究員がそう言った研究を行っている可能性もある。


「痕跡を残さずという事であれば魔道錠は無理だな。【探索(サーチ)】では屋上にも外に繋がる通路があるみたいだ。そっちから侵入はできるかもしれない。【解析(アナライズ)】では特に感知系の罠は張られていなかったから建物に入ってしまえば大丈夫だろう。」


「よし、1日置いて明日夜に屋上を確認しに行こう。」


方針は決まった。

裏取りの開始だ。

記章の剣は「権力・武力」、蛇は「執念」を表していて、ヴァン侯爵の性質を表しています。

双頭と言う所はどうなんでしょうね…。お楽しみという事で。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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